【更新】妊婦の観光客であふれる「ジカフリー」の島、バミューダ リスクの指摘も

    (更新)妊娠中の旅行は、医療体制や保険制度の不備などに直面する危険性があります。体調が急変する可能性は、常に考慮に入れておく必要があります。

    男の左右には、大きなおなかを抱えた女性たちがいた。彼女たちはバミューダの日差しのなかでくつろぎ、妊娠がもたらしてくれる喜びに満ちた時間に浸っていた。

    「妊婦の集会でもあるんですか?」。その旅行者は、写真家マーク・テイテムと妻アリー・テイテムに尋ねた。そう尋ねる彼もまた、妊娠中の妻を連れ、テイテム夫妻に「マタニティーフォト」を撮影してもらっているのだった。「集会なんてありませんよ」とテイテム夫妻は答えた。2017年のある日のバミューダはどこでもそんな感じで、妊婦がたくさんいたのだ。

    近年流行中のジカウイルスは、妊娠中に感染すると小頭症などの深刻な出生異常を引き起こす恐れがある。そのため、妊婦や妊娠を予定している女性は感染の恐れがない安全な旅行先を探しているのだ。

    こうした女性の多くに選ばれるのが、カリブ海から遠く離れた大西洋の真ん中にある孤島、バミューダだ。バミューダでは、現地での感染例がまだ1件も報告されていない。そうしたわけで、バミューダはいまちょっとした「ベビームーン(夫婦で出かける出産前旅行)」ブームを迎えている。

    「新しいクルマを買った後に、周りのみんなも同じクルマを持っていることに気づいたような感じの状況です」とマーク・テイテムは語る。「いまバミューダの観光地では、すれ違う女性の10人中6人が大きなおなかをしているんです」

    テイテム夫妻が経営する写真館「Two & Quarter Photography」ではマタニティーフォト撮影の依頼が急増しており、2017年の最初の7カ月間の撮影回数だけで、2016年の年間依頼量の133パーセントに達している。

    昨年のオリンピック前にジカウィルスへの関心が一気に高まったブラジルでは、2016年以降、妊婦がジカウィルスに感染した例が1万1000件以上確認されてきた。汎米保健機構(PAHO)によると、メキシコとプエルトリコでもさらに何千人もの感染者が確認されているという。こうした事情から、人々は別の場所に目を向けるようになった。

    「ジカウィルスに感染するリスクのない『ジカフリー』なリゾート地はないか、必死で調べました」と語るのは、ダラス在住のヴィクトリア・デヴィデンコだ。妊娠後期に入っていた彼女は、出産直前の時間を過ごすための保養地を探していた。「どれもハワイかニュージーランドや、ビーチのない場所ばかりでした」。

    やがてバミューダが検索にひっかかった。飛行機代も安かったので、さっそく予約した。現地に着くと、ほかの人たちもまったく同じ考えであることがすぐにわかった。

    「ビーチに座っていたとき、『水のなかに何がいるのかは知らないけど、私は入りませんからね』という感じの女性がいたのを覚えています」とデヴィデンコは回想する。「そこにはたぶん4~5人の妊婦がいました。私の夫でさえ気づくほど、妊婦の数が多かったのです」

    バミューダ観光庁(BTA)の統計によれば、2016年にバミューダを訪れた人の総数は7.7パーセント増加した。つづく2017年の最初の4カ月では、訪問者数は前年比で13.9パーセント跳ね上がっている。

    ジカフリーなリゾート地としてバミューダが評判になったのは、おもに口コミのおかげであるようだ。取材依頼には応じてくれなかったが、BTAはバミューダのジカフリーぶりを積極的に売り込んではいないように見える。

    ただし、ウェブサイトには「バミューダではジカウイルスの感染例は見つかっていません。ジカウイルスを運ぶ能力がもっとも高いとされる『ネッタイシマカ』がバミューダにはいないからです。バミューダには、世界でも最高水準の包括的な蚊駆除プログラムがあります。(中略)現時点では、これまで通り安全かつ手軽にバミューダにお越しいただけます」と書かれている。

    カレン・エドワーズはロンドン在住の看護師で、人気ブログ「Travel Mad Mum」を運営している(フォロワー数はInstagramが約9万人、Facebookが約4万2000人だ)。公衆衛生関連のサイトを検索していた彼女は、1月に予定していた自身のベビームーンの行き先にバミューダを選んだ。

    このジカフリーなバケーションについてのブログ投稿をリゾートホテル「Grotto Bay Beach Resort & Spa」に売り込んだところ、同ホテルは彼女の旅行のスポンサーになってくれた。その投稿「ベビームーン inバミューダ」は、ブログのなかでも人気投稿のひとつになり、毎月およそ2000ページビューを獲得しているという。

    このエドワーズの投稿に後押しされてバミューダ行きを決めたのが、当時妊娠7カ月だったニュージャージー在住のサブリナ・キャンベルだ。「バミューダは妊婦の聖地のようでした。みんなが妊婦なんです。飛行機のなかにも妊婦がたくさんいました」と彼女は回想する。

    キャンベルはホテル「Fairmont Southampton」のベビームーンパッケージツアーを見つけたが、他のホテルは妊婦向けのツアーを用意していないことに驚いた。「島の人たちは、みんながここに集まっている理由をわかっていないんだと思います。知っていれば、ホテルもそれをうまく利用しているはずですから」

    更新

    出産すると育児に追われて時間が取れなくなるため、日本でも妊娠中に旅行に出かける「マタ旅」がブームだが、妊娠経過が順調で安定期であっても急変する可能性は常にある。

    観光地では十分対応できる医療体制が整っていない場合が多いので、産婦人科医は妊娠中の旅行を勧めていないことを強調しておきたい。海外の場合は、保険がきかず高額な医療費を請求される場合もある。


    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:阪本博希/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan