就任3日目のトランプ大統領を違憲訴追 事業経営者としての利益が問題視される

    米国の市民団体が、トランプ大統領を違憲訴追すると発表した。世界的に事業を展開してきたトランプ大統領は、事業経営者としての利害と大統領の職務とが利益相反しており、憲法違反と主張している。

    米国の市民団体が1月23日(現地時間)、トランプ大統領がビジネスで外国政府から利益を享受する行為は合衆国憲法に違反するとして、連邦裁判所に提訴する。

    原告は、政治家の汚職問題などを監視する市民団体「ワシントンの責任と倫理を求める市民(Citizens for Responsibility and Ethics in Washington ) 」(以下CREW)。

    1月20日に就任したばかりのトランプ大統領は、就任3日目で、初めての違憲訴訟に直面することとなった。

    「不動産王」として、世界中でビジネスを展開してきたトランプ大統領は、選挙期間中から、事業経営者としての利害と大統領としての職務とが相反する恐れがあると指摘されてきた。

    米国憲法1章9条8項では、「合衆国から報酬または信任を受けて官職にある者は、連邦議会の同意なしに、国王、公侯または他の国から、いかなる種類の贈与、俸給、官職または称号をも受けてはならない」と定められている。

    CREWは、ビジネスへの関与を通じて、トランプ大統領が海外政府から影響を受ける恐れがあり、この米国憲法1章9条8項に抵触していると主張する。

    CREWは1月23日午前(現地時間)、ニューヨーク州南部連邦地裁に提訴する。

    CREWのノア・ブックバインダー事務局長は声明で「トランプ大統領が就任前に、違憲状態を是正する手順を進めると期待していた。だが、彼は行動しなかった。深刻な違憲状態で、法的措置をとるしかなかった」と話した。

    CREWには、米国の著名な法学者アーウィン・チェメリンスキー教授(デューク大学)や、ジョージ・W・ブッシュ政権で倫理担当法律顧問だったリチャード・ペインター氏も所属している。

    ホテルの収益が「利益相反」になる恐れ

    CREWが利益相反として指摘した、具体例の一つは、ホワイトハウス近くにあるトランプ・インターナショナル・ホテル。

    このホテルは、旧郵便局の建物を改築して開業した。建物は米連邦政府の所有だが、トランプ大統領の関連企業にリースしている。そのため、建物の「貸主」と「借主」が両方とも、トランプ大統領に関係してしまう。

    トランプ・インターナショナル・ホテルでは、海外の外交官を招いたイベントが開かれたこともある。CREWは、外国政府のパーティー開催などの収益を、トランプ大統領の関連企業が受け取れば、憲法違反になると主張する。

    また他国の外交官が、このホテルに泊まることで、トランプ大統領の懐柔を狙う可能性があるとの指摘もある。

    「利益相反」に当たるのか?

    ドナルド・トランプ米大統領は1月11日、利益相反を回避するため、多くの事業の経営権を息子たちに移譲すると発表した。

    トランプ大統領の顧問弁護士シェリ・ディロン氏は、各種事業を統括する「トランプ・オーガニゼーション」の経営権は、トランプ大統領の息子2人と最高財務責任者アレン・ワイセルバーグ氏が裁量権をもつ信託に移行すると発表。

    新体制のトランプ・オーガニゼーションには、利益相反を監視する倫理アドバイザーがつく。また外国との取引には、厳しい基準が設けられるという。

    しかし、米政府倫理局(OGE)のウォルター・シャウブ局長は1月11日、BBCに対して、トランプ大統領の計画では、利益相反が回避されないと指摘。過去40年間の歴代大統領の行動規範に見合うものではないと批判した。

    さらに、シャウブ局長は「利益相反を回避するには、資産売却しか方法はない」との見解を示している。