差別発言やナチス式敬礼……フランス極右活動家たちのパーティーに潜入した

    BuzzFeed Newsは、リヨンにあるナショナリスト(国粋主義者)が集まるバーで開かれた「愛国者の夜」に参加した。

    フランス、リヨン発――土曜の夜11時、極右思想を持つ若者たちのたまり場として知られているリヨンのバー『ラ・トラブール』に、フランスの若いナショナリストたち200人ほどが集まった。

    かつては泡沫政党だった国民戦線の党大会がこの近くで開催されていた。夜が更けるにつれて、党の大物たちもやって来ると思われた。

    バーに続く階段には、30人ほどの若者が立ち、煙草を吸ったり雑談したりしている。若手右翼運動『Generation Identitaire』(アイデンティティの世代)の活動家が3人、一目でそれとわかる黄色いジャケットを着て、ドアのところで作業をしている。

    パーティーはいつ始まったのかわからない。バーの中は人で溢れていた。このバーは、移民より「先住民」の権利保護を主張するフランスのネイティビスト(移民排斥主義者)たちが2011年4月にオープンした。店の裏では、活動家たちが露店を出してグッズ販売をしている。その中心にあるのは、米国のオルタナ右翼に人気のキャラクター「カエルのぺぺ」だ。

    若者の集団に混じって、60代の人が3人いた。国民戦線の党大会に参加するため、パリからリヨンにやって来たのだ。党大会会場への入場証を自慢げに首からぶら下げている。そのうちの2人は若いころ、極右の学生グループ『GUD』に参加していたという。中道・右派の共和党の一部議員たちもかつて所属していたグループだ。

    年配の3人のうちの1人は、GUDの元メンバーではなかった。彼は、「その頃私は、アフリカのネズミを退治しに行っていたんだ!」と言った。アルジェリアの独立運動を阻止しようとしたフランスの試みのことだ。3人組は笑い合い、早めに帰途についた。党大会2日目に予定されていたマリーヌ・ル・ペン党首のスピーチを聞き逃してはいけないからだ。

    BuzzFeed Newsが数えたところ、パーティーに参加していたのは約200人。そのうち女性は20名ほどだった。平均年齢は25歳くらいで、参加者の最年少は18歳未満。われわれは「T」や「F」と話をした。Tはリヨン地区の税務署員で、国民戦線のメンバーだ。Fはローヌに住むアイルランド人で、専門職の学位課程で学んでいる。2人はたちまち意気投合した。

    Tは税務署員としての仕事について語り、「そういうのは毎日見ている」と語った。「もちろんフランス人の中にも、ほんのわずかしか税金を払っていない人はいる。でも、大多数はアラブ系の名前だ」

    「われわれに彼らを排斥させているのは、エマニュエル・『マクルウィル』(Macrouille)ではない」とも彼は発言した。仏大統領選における左派からの独立候補であるエマニュエル・マクロンのことだ。同氏の名前と、フランスに住む北アフリカ出身者を指す蔑称を合成させた人種差別的な言葉なのだ。

    Fもこれに同意し、状況はアイルランドでも「同じだ」と言った。Fは「アイルランドにやって来る1万人のイスラム教徒」について文句を言った。

    「みんな、アラブ人が嫌いだ」とFは続けた。

    「このごろは、根絶という言葉は使わず、再移住と言っている」Tは「スターリンのやり方もあながち悪くはなかったとわかってきた」と言うと、ナチス流の敬礼を素早くして見せた。その動作はほんの一瞬だったので誰も気づいていないようだったが、Tの腕と手は間違いなく上へと伸ばされていた。

    1時間後、税務署員のTは、同僚3人と煙草を吸いながら、ある秘密を暴露した。「6世代前まで遡れば、(うちの家族に)ユダヤ人がいるんだ!」

    「そうなんだ?」

    「なんてこった!」

    「こいつ、5セントを恵んでくれって言うぞ!」と同胞のひとりが叫んだ。「今じゃヨーロッパのユダヤ人さ」とTはたしなめた。

    「へえ、でも母方だろう?」(訳注:ユダヤ法では、ユダヤ人の母親から生まれた者、あるいは正式な手続きを経てユダヤ教に入信した者がユダヤ人であると規定されている)

    「まぁ、そう、母方」とTは認めた。

    「だけど、いつだって母方なんだろ?」

    「いつもね」

    「お前ってサイテー!」

    「オーブンへ入れてしまえ!」

    一団は笑った。その時、Tはビールを少しこぼした。これに対して、Tの友人の1人が気の利いた反応をした。「気をつけろよ、こいつ、金をくれというぞ!」

    この夜のパーティーにいたのは右翼思想の若者だけではなかった。ル・ペン党首に極めて近い国民戦線の幹部たちも会場に顔を出していた。真夜中ごろ、フレデリック・シャティヨンと、パリ地区議会議員を務めるアクセル・ロストーがやってきた。シャティヨンはル・ペン党首の親友の1人で、彼女の大統領選への立候補に向けて密かに準備を進める手助けをしてきた。彼はまた、フランスで最も有名な反ユダヤ主義者たちと密接な関係にもある人物だ。2人とも、2012年の選挙キャンペーンにおける党の資金調達に不正があったとして、捜査対象になっている。

    2人のそばにはニコラス・クロシェがいた。クロシェはシャティヨンと親しく、国民戦線に選挙用機材を提供した企業Riwalとのつながりを通じて、「パナマ文書」スキャンダルで名前が上がっていた(クロシェは、リークしたパナマ文書で示唆されているように、オフショア口座を実際に持っていたかについて、否定も肯定もしていない)。彼らは握手をし、お喋りをして笑い合い、酒を飲んだ。

    「彼らが来たぞ!」 ビールをもった若い活動家が叫んだ。Generation Identitaireの元リーダー、ダミアン・リューが3人に加わる。リューは現在、マリーヌ・ル・ペンの姪で国民戦線の国会議員であるマリオン・マレシャル=ル・ペンの元で働いている。互いに握手を交わした様子から判断して、彼らはこのバーによく来るようだった。

    バーの片隅では、Generation Identitaireの現在の代表であるアルノー・デルリューが周囲の人に、自分の裁判日程が近いうちに決まりそうだと興奮した様子で話していた。デルリューとGeneration Identitaireのメンバーは2012年、「フランスのイスラム化」と彼らが呼んでいるものへの抗議の一環として、ポワチエにあるモスクの屋根を占拠し、「窃盗、名誉毀損ならびに人種的憎悪の扇動における共犯」で起訴されているのだ。

    「市民政党とは、仏イスラム組織連盟(UOIF)や、マルワンにあるイスラム差別に反対する団体(CCIF)のことだ。上等だ、イスラムに対抗するフランスの息子たち! これはわれわれにとって素晴らしい舞台になる!」と、彼は聴衆に向かって説明した。

    スピーカーからはフランスの音楽が流れ、政治活動に積極的なことで知られる歌手、ルノー(Renaud)の声が石の壁に反響していた。税務署員Tは徹底した「アンチ左派」だが、ルノーの曲に嬉しそうに耳を傾けていた。

    「ルノーは、(歌手の)ジャン・フェラのようなものだ」とTは友人たちに言う。「政治思想としては許しがたいが、音楽的には素晴らしい。世の中にはルイ=フェルディナン・セリーヌ(有名なフランスの作家で、反ユダヤ主義思想の持ち主だった)が嫌いな人もいるだろう。セリーヌに関しては、それ以外に許せるところは何もない」

    TもTの友人たちも、「左翼が多文化主義に取り憑かれること」が理解できなかった。

    「クスクスを食べる500万人のアラブ人なんて必要ない!」と、Tの友人の1人が、自明の事実をアナウンスするかのように言った。「鶏肉とセモリナ粉を買って、帰れよ! 500万人の日本人にフランスで寿司を食べさせる必要がないのと同じだ」

    「どうしても選ばなきゃならないとしたら、数百万人の日本人のほうがいい」とこの若者は言う。「少なくとも彼らは偉大な民族だ」

    パーティー会場で耳にしたさまざまな問題発言について、BuzzFeed Newsがダミアン・リューにコメントを求めたところ、自分はもはやGeneration Identitaireに対して何らかの責任を負う立場にはない、と答えたにとどまった。Generation Identitaireに近い情報筋が、匿名を条件にBuzzFeed Franceに話したことによると、通常ならばGeneration Identitaireはそうした行為を許さないという。BuzzFeed Newsはアクセル・ロストーとGeneration Identitaireにもコメントを求めたが、どちらからも回答はなかった。

    パーティー翌日の日曜夜、会場だったラ・トラブールの経営者はBuzzFeed Newsの取材に電子メールで応じ、「ネイティビストの組織やネイティビスト運動の文化の一部ではない、挑発的と取れる行動があったとすれば、そうした行動をわれわれは非難する」と書いてきた。

    「貴社が潜入させた偽参加者が目撃した2つの不適切な行為が、当店のリーダーチームの監視の目に止まらなかった可能性はある。それは、ジョージ・オーウェル式の会話監視システムが不運にも店に備え付けられていないことに原因がある。そうした事実が確認された場合、断固として追い出すことが店のシステムになっている。また、今週末に外部から3人の訪問者があったことも不運だった。彼らは少数派の中でもごく一部であり、パーティーの参加者全体やパーティーの主催者を代表するものでは断じてない」

    (注)2人の人名は編集部がアルファベットにした。動画の音声は、目立たないマイクを使って録音された。

    BuzzFeed France記者が会場で録音した、オリジナルのフランス語音声を以下の動画で聞いてみてほしい。

    BuzzFeed Franceが会場で聞いた音声(フランス語)はこちら。

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    この記事は英語からフランス語に翻訳され、日本語訳されました。翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:中野満美子/BuzzFeed Japan