トランプ大統領の切断した頭部を摸した人形と有名女優がポーズをとった写真が物議を醸している。カメラマンは芸術だと主張。この女優は「やり過ぎた」と謝罪した。
写真はTMZが5月30日、公式発表前に報じ、話題になった。女優でコメディアンのキャシー・グリフィン氏が、トランプ大統領を摸した血まみれの頭部の人形を右手でつかんで、立っている。
「トランプ大統領の発言は暴力を誘発するとして批判されてきた。キャシーも同じことをしたのか?」と問題提起した。
撮影したのはカメラマンのタイラー・シールズ氏。有名人を性的に表現した写真で知られる。
シールズ氏はBuzzFeed Newsの取材に、写真は正当なアート表現だと主張した。
「トランプはソーシャルメディアの大統領。これほどまでに世論を引き裂く大統領はかつていなかった。このようなタイプの人物なので、アートも創作される」
人形は撮影用に特別に作られたもので、先週撮影したという。二人は撮影現場で議論を重ねた。「(グリフィン氏に)『どのぐらい大胆になりたいか?』と聞くと、『どんな境界も超える心構えはできている。政治的なことも構わない。裸でも何でも』という感じだった」と話す。
シールズ氏は自身の芸術論をこう語った。
「観る人に自らの意見を固めてもらうような創作が好きだ。これを賞賛する人も、完全に嫌だと思う人もいることは理解している」
「この写真を撮影できる事実が素晴らしい。幸運なことに、好きなことを言える権利がある世界にまだ生きている。その権利のために戦っている人たちも多くいる」
米軍がアフガニスタンやイラクで適正な手続きをせずに拘束した容疑者を集めて国際的な批判を浴びたグアンタナモ収容所を引き合いに出して、皮肉った。
「それはそれとして、キャシー(・グリフィン氏)のことは大好きだし、グアンタナモの彼女に会わせてくれることを望むよ」
「嘲り大王を嘲っているだけ」
被写体となったキャシー・グリフィン氏も当初は写真の正当性を主張していた。
「『目から血が出ている。彼のあそこから血が出ている...』とキャプションを付けしましょう」「もちろん、どんな暴力も許しません! 嘲り大王を嘲っているだけです」などとツイートした(現在は削除)。
この「血」のツイートはトランプ大統領の女性蔑視発言を受けたものだ。共和党候補の座を争っていた昨年8月、テレビ司会者メギン・ケリー氏に向けて「目から血が出ている。彼女のあそこから血が出ている...」と暴言を吐いた。
Twitterでは、民主・共和両陣営から写真を非難する声が相次いだ。
クリントン元大統領の長女チェルシー・クリントン氏「下劣で、間違っている。大統領殺害のジョークは全然面白くない」
共和党の元大統領候補ミット・ロムニー氏「アメリカの政治はさもしく、下品で、卑猥になったが、キャシー・グリフィンの写真はさらに不快で下劣な領域に落ちぶれた」
トランプ大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏「ひどいが驚きはしない。これが今日の左派だ。これが受け入れられると思っている。オバマが大統領だったとき、これを保守の人間がやったらどうだったか」
一転、謝罪
グリフィン氏は5月30日夜、一転して謝罪動画をツイートした。「やり過ぎました。写真は物騒過ぎました。不愉快に思われたのはわかります。面白くはありませんでした...写真を削除します。カメラマンに削除するように要請します。間違いを犯しました。私は誤っていました」
グリフィン氏がCM出演していたトイレ用品スクオティ・ポティ社は宣伝を取りやめると声明を出した。「政治的な見解を表す個人の権利は尊重しますが、暴力的にこれを表現した彼女の選択は悪趣味でしたし、我が社の文化やブランドのアイデンティティを表しているものではありません」
テレビ司会者も非難の声をあげた。
CNN司会者のアンダーソン・クーパー氏「明らかに気持ちが悪いし、完全に不適切だ」
ツイートした司会者のクーパー氏はグリフィン氏と大晦日のCNN番組を司会している。CNNは5月31日、グリフィン氏との出演契約を打ち切ると発表した。
BuzzFeed Newsはグリフィン氏の謝罪を受けて、カメラマンのシールズ氏にコメントを求めている。
この記事は英語から編集しました。