窓は粉々に割れ、床には瓦礫......壊れたベッドに腰かけた老人がパイプをくゆらせ、レコードをかける。なにが起きたのか。

    「いまの生活は厳しい。でも......」

    アニスの自慢は、クラシックカーのコレクションだった。情熱は父親譲り。染色会社を経営していた父は、1950年式ポンティアックを運転していた。

    だが、激しくなるアレッポ東部の戦闘。昨年、アニスは愛車を残して、逃げざるをえなかった。

    内戦で、30台のコレクションは20台に減った。破壊されたり、盗まれたりした。「道をふさいでいる」として、警察にさらに7台を押収された。家の前にはいま13台が止まる。

    1949年式ハドソン・コモドール

    1957年式マーキュリー・モントクレア

    1958年式シボレー・アパッチ

    1947年式プリムス

    お気に入りは1947年式キャデラックのコンバーチブルだ。

    一連の写真は、ベイルート出身の写真家ジョセフ・イードが撮影した。一緒に取材したAFPのベイルート支局長は2016年初めにアニスを取材。激しい銃撃戦が収まったいま、二人はアニスを探して回った。

    「近所の人たちに尋ねると家に案内してくれました。大きな緑の鉄扉をノックしたら、アニスが開けてくれました」と写真家イードはBuzzFeed Newsに語った。

    老人アニスがパイプをくゆらせる写真は、Twitterで9千回以上リツイートされた。

    Time誌によると、老人アニスはイードに対して、タバコなしには音楽を聴けないと話したという。

    「アニスはこれまで愛し大切にしてきた持ち物や過去にとても愛着を持っていました。それをなくせば、自分自身も見失ってしまうでしょう」とイード。「だから、ここで生活をまた始めることにこだわっています」

    写真が多くの人の共感を得た理由をこう指摘する。「みんな暴力に飽き飽きしています」「この写真は人間の魂に触れます」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。(敬称略)