突然、知らない人からお金が送られてきたら…? 裕福ではないお父さんに起こった本当の話

    ソーシャルメディアがつないだ奇跡のような話。人間の温かさやコミュニティのつながりを気づかせてくれます。

    正直者には幸運が訪れる——。そんなイソップ童話「金の斧」のような奇跡の話が起きた。きっかけは、宛先を間違えた送金だった。

    ワシントン州タコマのゲレル・マクアリスターさん(28歳)は5歳の娘を愛情いっぱいに育てている。仕事はペットフード店でのレジ係。けっして裕福ではない。昨年12月、最愛の母親を亡くした。兄によると、兄弟でゲレルさんが一番ショックを受けた。

    そんなゲレルさんの元に5月25日、アラン・トラスラーさんという見ず知らずの人から、1200ドル(13万2千円)がペイパルで送られてきた。

    朝起きて、ペイパルからのメールに気づいたゲレルさん。「『お金が届きました!』と書いてあったんで『冗談が届きました!』だろうって思いました」と笑う。

    だが、どうもペイパルの支払いは本物らしい。「すぐに飛び起きました。誰からなのか、想像もつきませんでした」

    実はこれ、アラン・トラスラーさんから娘メリッサさんへの30歳の誕生日プレゼントだった。だが、間違ってメリッサさんの古い電話番号を使って送金してしまった。その電話番号をいま、ゲレルさんが使っていた。

    ゲレルさんは、送り主アランさんにすぐさま返金手続きをした。「お誕生日おめでとうとお伝えください」というメッセージを添えて。

    「お金をお返しするのは、こたえるが、正しいこと。娘さんにお誕生日おめでとうとお伝えください!再発しないように、問題を解決してみます。お元気で。ゲレル・マクアリスター」

    ゲレルさんはBuzzFeed Newsの取材に「お金をお返しするのは当たり前です。母が私に教えてくれた価値観です。善い人間であろうと努力しています。娘に良い手本を示そうとしています」と話す。

    実は、ゲレルさんは1ヶ月ほど前にも、宛先違いの55ドル(約6千円)の支払い通知を受け取り、返金していた。今回も同じ苗字の人からの誤送金だと気づいたという。

    すぐに返金されたことに驚いたアランさん。娘メリッサさんに対し、ゲレルさんへのお礼状を書くように頼んだ。

    するとゲレルさんからこんな返信があった。黒人への偏見を解消するためにも、この話をシェアしてほしいと。

    「どういたしまして!もしご家族やご友人に、5歳の娘がいるタコマ在住の28歳の低所得の黒人が返金してくれたんだとお伝えくだされば、人種問題を改善する助けになるかと思います。ワシントン州西部の住人たちが一生懸命に悪い文化を良くしようと取り組んできたことの確認にもなります。そのことは、翻って、家族がこのような大変な時期にあろうとも、私自身が良心を持ち続けやすくなる助けにもなるんです(笑い)。ともかく、この話をシェアしてください。愛を広めてください。ありがとうございました」

    ゲレルさんはその背景をBuzzFeed Newsにこう説明する。

    「タコマ地域は底辺で信用できないというレッテルをはられています。『タコマのゴミ』なんて呼ばれたりしています。でもそんなんじゃないんです」

    「人種的な偏見でも、若者への偏見でも、こういう偏見をひっくり返すために、こうした事例を使わなきゃと思いました。皆さんがここから学んでくれたらなって思います」

    メリッサさんは早速、Facebookにシェアした。

    Facebook: melissatrusler

    だが、話はこれで終わらなかった。Facebook投稿を見た人たちから、ゲレルさんに寄付したいという人が現れた。

    20ドル、30ドルと寄付する人たち。100ドル寄付した人もいた。

    寄付が舞い込んだゲレルさん。「最初の1件が届いた後は、次から次へと止まらなくなった」と振り返る。しかも「大半が、心の込もった、温かいメッセージが添えられていた」。仕事場で不覚にも泣いてしまったという。

    Facebookにはこんなコメントも。「脱毛のエステティシャンに言ったら、泣いちゃって...100ドル寄付してくれた」

    実は、メリッサさんは兄弟を昨年12月に亡くしていた。そう、ゲレルさんが母親を亡くしたのと同時期だ。BuzzFeed Newsは、このことをゲレルさんに伝えた。

    ゲレルさんは言葉を失った。

    「本当ですか」。しばらく黙りこくった後で、ようやく続けた。「なんて言ったらいいかわからない。感情が押し寄せて」

    ゲレルさんの兄マリオ・スモールさんはメリッサさんに感謝のメッセージを送った。「母が生きていたらゲレルどんなに誇りに思ったことでしょう」

    ゲレルさんが嬉しかったのは、お金よりも温かい言葉だった。「家族を失った後の癒しになった」。個別に全てお礼のメッセージを書くつもりという。

    メリッサさんは一連の出来事をソーシャルメディアの良い面を知る素晴らしい経験だと思った。「コミュニティはこんなにもつながれる」。一方ゲレルさんは、縁を大事にしてほしいと思っている。「相手がどんな大変な思いをしているのか、分からないのですから」

    この記事は英語から編集しました。