Facebookライブ動画の深い闇 殺人、レイプ、自殺の生中継は防げるのか。

    人間とともにある暴力。それは文明が発達してもなくらない。

    Facebookライブ動画で殺人など暴力シーンを中継するケースが後を絶たない。2015年12月にライブ機能が導入されてから、世界で少なくとも45件発生したことをBuzzFeed Newsは確認した。

    これまでテレビ局が独占してきた生放送。たしかにスマホとSNSの発達によって個人もマスに向けて簡単に中継できるようになった。だが、新たな社会問題も引き起こす諸刃の剣となっている。

    「生で心に響くコンテンツをシェアする素晴らしい媒体」。ライブ中継機能を導入した際、マーク・ザッカーバーグCEOはこう誇った。

    たしかに、スイカに何本の輪ゴムを巻いたら割れるのかという実験に80万人が熱狂し、チューバッカのマスクをかぶって笑う母親は一躍有名人になった。

    一方で、銃撃やレイプ事件、児童虐待といった暴力シーンを含む映像も流れた。BuzzFeed Newsは世界で少なくとも45件発生したことを確認した。

    当初、Facebookに件数を尋ねたが、回答を拒否されたため、報道を元に49件を確認。これをFacebookに示したところ、うち4件がライブではないとの回答があったため、45件と結論付けた。1ヶ月に少なくとも平均2件のペースで発生している。

    目立つのが銃が絡むライブ。45件のうち過半数27件に上った。自殺や自殺未遂が絡むライブも14件、集団レイプ事件は2件だった。少なくとも32人がライブ中またはその直後に命を落とした。

    • 確認されたFacebookライブで流れた暴力シーンが含まれる映像の一覧はこちら。

    犯罪に利用されるライブ

    犯罪者たちは、放送を拒んできたテレビ局の壁を飛び越え、悪名を広げるためにFacebookライブ動画をプラットフォームとして活用する——。こんな問題を犯罪学者たちは指摘する。

    シアトル大のジャクリーン・ヘルフゴット教授は「ゲートキーパーなしに、悪名を即座に得る助けとなる。模倣させる効果が間違いなくあると思う」とBuzzFeed Newsに話す。

    「行為を拡散させ、不朽のものとするモデルが生まれようとしている。これが最も大きいインパクトだろう」。セントラル・フロリダ大のレイ・スレット教授も同意見だ。

    ライブ動画がFacebook上で見られる状態が長く続くほど、問題も大きくなる。犯罪者たちが、これを犯罪行為を世に広める効果的な手段だと考えるようになるからだ。

    いかに素早く削除するかが鍵となる。「見る人が少ないほど、これをモデルとしてとらえる人も減る」とスレット教授。

    だが、Facebookの対応は、5月に対策を発表するまで、著しく遅かった。例えば、2017年4月にタイで20歳の父親が11ヶ月の娘を殺害するライブ動画は24時間近く見られる状態になっていた。

    Facebookの対応は

    相次ぐ暴力シーンのライブをFacebookはどう考えているのか。BuzzFeed Newsの取材にFacebookはコメントを拒否し、代わりにザッカーバーグCEOの5月の投稿を示した。

    暴力を含むコンテンツにより迅速に対応するため、これまでの4500人より3000人多い7500人が監視に当たるという内容だ。

    だが、機能の性質上、暴力シーンが流れる前に防ぐことは不可能だ。事後対応しかできない。ザッカーバーグCEOも完全な阻止ではなく、迅速な削除や警察との協力を打ち出している。

    突然の銃撃

    対応を難しくしている理由の一つに、暴力シーンが突然始まることがある。

    シカゴで20歳の妊婦は2月、カーラジオに合わせて歌っているところをライブ中継していた。そこに突如、銃弾が数発飛んできた。

    同乗していた26歳の男性と2歳の男児が死亡。生き延びた女性はライブ中継でこう話した。「彼は殺された。私のお腹にも弾が当たった」

    公園のイベントで、パーティーで、で、ライブ中継しているところ突然、惨劇が襲う。現場に居合わせた人が市街地の銃撃戦を中継し、警察の逮捕劇を伝える。

    自殺を防げるか

    自殺も難題を突きつける。Facebookは、自傷の意図を示す人を別のユーザーからの報告や人工知能で見つけ、支援機関につなげることで、自殺を防ごうとしている。だが、自殺を図る様子がライブ中継されてしまうことは防げない。

    ただ、3千人が監視に加わることで、介入スピードは上がるかもしれない。Facebookは5月、ジョージア州の10代の少女が自殺を図ろうとしていることに気づき、地元当局に通報した。実際にはその直前に、すでにライブを見た友人らが通報していて、少女は助かったが、地元警察のリンダ・ハワード氏は「(Facebookの)通報を感謝している」と話す。

    数分の違いが生死を分ける。Facebookはこうしたケースで命を救える努力を続ける。

    人間のさが

    ライブ機能がスタートして間もない2016年1月、Facebookライブでの銃撃事件を取材したCBSのハンク・テスター記者は「本当に奇妙な事件だ。こんなものはこれまで見たことない」と感想をもらした。だが、これは新時代の幕開けに過ぎなかった。

    2017年1月、シカゴで18歳の少年を暴行する様子が30分間ライブされた。4月、通りすがりの高齢男性を射殺する様子を男がライブ中継した。「Facebookライブ・キラー」として全米ニュースを賑わせた。

    ザッカーバーグCEOは今後1年かけて、監視チームを強化すると述べている。たしかに、4月に9件あった暴力シーンを含むライブ中継は5月に3件に減った。

    だが、人間社会から暴力が消えないのと同様に、ライブ中継から暴力がなくなることはないだろう。高度な機器を手にしても変わらない、愚かな人間のさがかもしれない。


    BuzzFeed Newsはライブ動画の胎動を「マーク・ザッカーバーグ独占インタビュー Facebookライブ動画が創る未来」で伝えています。

    この記事は英語から編集しました。