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「同性愛パートナーの写真を児童に見せた」と停職処分、教師と学区が10万ドルで和解

「もしあなたが学区運営側の人間で、同性愛者の教師をいじめて辞めさせられると思っているなら、私の名前を覚えておいて。そして考え直してほしい」

アメリカ、テキサス州の教師ステイシー・ベイリーさん(33)は、2018年に当時の同性の婚約者とのツーショット写真を生徒に見せたとして停職処分を受けていた。

ベイリーさんの代理人が2月25日に明かした内容によると、ベイリーさんが勤務していた学校がある学区の運営組織マンスフィールド・インディベンデント学区(MISD)と、10万ドル(約1080万円)で和解したことが分かった。

ベイリーさんは、MISDから受け取った和解金のうち1万ドル(約108万円)を、LGBTQ(性的少数派)の生徒を支援する慈善団体に寄付する意向だ。

「もしあなたが学区運営側の人間で、同性愛者の教師をいじめて辞めさせられると思っているなら、私の名前を覚えておいてほしい。そして考え直してほしい」とベイリーさんは2月25日、記者会見で語った。

ベイリーさんは、テキサス州アーリントンにあるシャーロット・アンダーソン小学校で美術教師として勤務していた。過去に2度、最優秀教師賞を受賞したこともあった。しかしベイリーさんは2018年、差別されたとしてMISDを提訴することになった。

MISDの発表文によると、同組織は2017年9月、ベイリーさんを停職処分とした。理由は、ベイリーさんが自分の性的指向について児童と話し合ったとして、保護者からMISDに苦情が寄せられたためだ。

苦情の内容は、ベイリーさんが自己紹介のスライドに、婚約者(当時)ジュリー・バスケスさんと一緒に映画『ファインディング・ニモ』のキャラクターの衣装を着た写真を掲載し、それを「将来の妻です」と言って児童たちに見せたというものだった。

保護者の1人が学区に対し、ベイリーさんが同性愛的な考えを助長したとして苦情を申し立てた。

ベイリーさんは2月25日、この保護者の苦情には根拠がないと語った。

「異性愛者の教師が、自分が受け持っている小学校のクラスで、自分と旦那さんにはもうすぐ赤ちゃんができると幸せいっぱいに発表した場合、まだ幼くて感受性が強い児童たちに、不適切な話をしていることになるのでしょうか?」

「自分の性的指向を発表していることになるのでしょうか。自分の政治理念を宣伝していると取られるような形で自分の人生を語っていることになるのでしょうか」

「もちろん、そんなことはありません。単に、自分の人生に起きた事実を共有しているだけだからです」とベイリーさんは述べた。

和解の条件としてMISD側は、ベイリーさんの記録から停職処分を永続的に削除すること、LGBTQ問題に関するスタッフ・トレーニングを義務化すること、「差別してはいけないリスト」に「性差別」を加えるか否かを決める投票を行うこと、を約束している。

MISDはまた、ベイリーさんと代理人ジェイソン・スミス弁護士に対し、総額10万ドル(約1080万円)を払う必要がある。

ベイリーさんと妻は、自分たちの取り分から1万ドル(約108万円)を、LGBTQの生徒を支援する慈善事業団体に寄付する意向だ。一方でスミス弁護士も、同額をLGBTQの人権団体「ヒューマンライツキャンペーン 」に寄付する。

連邦判事は昨年10月、差別および憲法上の権利侵害だとするベイリーさんの訴えを認めた。

「もしその地域社会の認識が、根拠のない単なる憶測や古いステレオタイプ、敵意に基づいたものでしかないのであれば、当然ながらそれは不合理であり、(略)MISDの決定への法的な根拠にはならない」とサム・リンジー判事は記している。

「地域社会の一部の人による個人的な嫌悪は、差別の正当性を立証できない」

裁判は、ダラスにあるテキサス州北部地区連邦地方裁判所で行われた。

ベイリーさんは、8ヶ月間の停職処分が解かれた後、地元の高校に転任した。

25日の電話でのインタビューでベイリーさんはBuzzFeed Newsに対し、新しい学校での勤務を始めたとき、生徒たちがどう反応するか不安だったと話した。

というのも、同性愛者であることを理由に停職処分を受けたというニュースは、全国メディアでも地元メディアでも盛んに取り上げられていたからだ。

ところが実際は、ベイリーさんの勤務初日、LGBTQの生徒たち15人ほどが飴などが入ったバスケットを持って教室に押しかけ、自己紹介した。中には、歓迎すると言いながら泣き出す生徒もいたという。

「あの子たちは、同性愛者だと公言する教師を見たことがなかったんだと思います。成功を収め、教育をきちんと受け、恐れていない、そんな大人をこれまで見たことがなかったんでしょう」とベイリーさんはBuzzFeed Newsに話した。

そしてベイリーさんは、学年の最初に新しい生徒たちと初めて顔を合わせる際に、妻との写真が載ったまったく同じ自己紹介スライドを使用した。

「自分は無視されていると感じてきたあらゆる生徒たちにとって、私のクラスが安心できる場所になる様子を目にしてきました」

ベイリーさんは、停職処分になったばかりのとき、近くにある都会の学区に移ることも考えたという。しかし、そうすればMISDにいる他の同性愛者の教師も、自分と同じように「反同性愛」からの偏見にさらされるのではないかと懸念した。

「これまでも、教育者の中に同性愛者は常にいました。あなたにとって最高だった先生の中にも、同性愛者はいたかもしれない。でも、怖くて言えなかっただけかも」

Congrats again to our 2016 Charlotte Anderson Teacher of the year, Ms. Stacy Bailey! #MISDOscarNight2017 #youmakeusproud @msbailey_cae

「ベイリーさんが勤務していた小学校の同僚教師のツイート:ステイシー・ベイリーさん、2016年シャーロット・アンダーソン最優秀教師賞の受賞、改めておめでとう!」

ベイリーさんは、ここ数年は非常にストレスや不安が募る日々だったが、MISD学区内の高校教師として今後も勤務を続けるつもりで、学区が内側から変わっていくのを見ていきたい、と話した。

「自分が小さな存在だと感じてしまう状況だとしても、自力で立ち上がることはできるし、変化を起こすこともできると思っています」とベイリーさんはBuzzFeed Newsに話した。

そして、保守的な地区で差別に直面している他の同性愛者の教師に対し、もっと進歩的な学区に移りたいという衝動を抑えるよう呼びかけた。

「自分がいる学区を変えてほしい」

「簡単ではないかもしれない。抵抗に遭うかもしれない。もし私の身に起きたことがあなたの身にも起きたとしても、それを切り抜けることはできるんだってことを知って欲しい。自分の情熱や仕事を諦める必要なんて、まったくないんです」

この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:松丸さとみ / 編集:BuzzFeed Japan