予定されていた卒業生代表のスピーチが突然中止に 彼は自身のことをゲイと表現していた

    「私がみんなの目に触れ、存在するだけで、自分たちの立場が脅かされる、と考えたのです」

    ケンタッキー州の高校で卒業生総代が告別演説を禁止された。性的に不適合として地元のカトリック教会管区が反対したため、と同氏は考えている。

    「私がみんなの目に触れ、存在するだけで、自分たちの立場が脅かされる、と考えたのです」

    クリスチャン・ベール氏(18)は、28日にBuzzFeed Newsの取材に答えた。同氏は3日前に開催された高校の卒業式で、予定していた告別演説を禁じられた。

    ベール氏は今までにも学校行事に化粧をしたり、従来は女性の服とされているものを着て出かけたりしていた。3週間前、ケンタッキー州コビントン市にあるホーリークロス高校の総代になることが分かった。

    つまり、栄誉のしるしとして、卒業式で告別演説ができるのだ。親友であり同校の生徒会長でもあるキャサリン・フランツ氏も演説することになっていた。

    ところが卒業式当日の朝、同校の校長マイク・ホルツ氏がベール氏とフランツ氏の家族に連絡をし、ふたりの演説内容は、夕方に予定されている卒業式で読むには不適切であると、同校を監督するコビントン市のカトリック教会管区が考えていることを伝えた。

    同管区はベール氏の演説内容を「私的すぎで、怒りに満ち、対立を辞さず、政治的すぎる」と断言したことを、学長から母親は告げられた、とベール氏は話す。

    ベール氏の演説は、銃乱射事件が発生したフロリダ州パークランドのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校の学生リーダーや、デービッド・ホッグ氏がよく使っているスローガンを中心に書かれていた。「若者は勝つ」というものだ。

    Google Docで発行され、TwitterとFacebookでシェアされたスピーチには、ベール氏の性的アイデンティティーや性的指向には直接的には言及されていなく、特定の政策の成立を呼びかけてもいない。例えば、「私たちの命のための行進」のリーダーらに刺激されたと書いてあるが、新しい銃規制法を呼びかけてはいない。

    管区の決定にがっかりしたふたりは、卒業式の後に会場の外でメガホンを手に取り、準備したスピーチを読むことに決めた。メガホンはLGBTの子を持つ親のFacebookグループの地元リーダーから父親が借りた、とベール氏は話す。

    地元メディアがこの出来事を録画し、友だちや親に囲まれて十代の若者がスピーチをする動画は、ネット上ですぐさま広がった。

    video-player.buzzfeed.com

    「ホーリークロスで過ごした4年間で、倫理的なひとりの個人として、自分の信念を主張するために、自分の声を活用する方法を学びました」ベール氏はスピーチの中でそう話している。

    「反対にあったことも数多くありましたが、逆境に直面すればするほど、私の主張は激しさを増していきました」と続く。「反対派に沈黙させられることなく、エンパワーメントとして活用すべきです。若者として自分たちの考えを育む限り、世界の人たちと対峙しても、同じように強い影響を与えることができます」

    ベール氏によれば、通常は、宗教学の先生や校長が、生徒が卒業式で話すスピーチの内容を承認している。22日(火)に宗教学の先生にスピーチを渡し、翌23日(水)には承認が取れ、当日を楽しみにしていると伝えられていた。

    ところが今年は、管区も学生のスピーチを確認する必要があると、管区が決定したと、ベール氏は話す。

    「通常の出来事ではありません」とベール氏は語る。管区は「無作為に(管区から学校を)選別した」と校長に言われたと同氏は話す。

    「無作為に選ばれたとは信じられません。卒業式が順調に進む方法を見つけたかったのだと思います」

    地元テレビ局WLWT5に提供された声明のなかで、管区の広報担当者ティム・フィッツジェラルド氏は、ベール氏とフランツ氏のスピーチが禁止された理由を次のように述べている。「スピーチは政治的であり、カトリック教会の教義と矛盾する内容が含まれていることが発覚したため」とのことだ。

    また、同氏は、スピーチは「審査の締め切りに間に合うように提出されなかった」と主張している。ふたりとも締め切りのことなど知らなかった、とベール氏は話している。

    「ずっと目をつけられていたのだと思います」とベール氏はBuzzFeed Newsの取材に答えている。同氏はカトリック教徒ではないが、学校が信仰している宗教には敬意を示そうとしてきたと語る。「私はとても性的に合致していない人です。自分の信念についてかなり遠慮なく発言します。社会的な改革を要求することも多いです。その結果、管区にとって、要注意人物になったのです」

    同氏は自身のことを説明する総称として「ゲイ」「ホモ」を使い、「ボーイ」「ガール」のような二者択一の分類を避けている、と話す。花柄のジャンプスーツに身を包み、ピンク色のアイシャドーに赤の口紅を塗って高校卒業記念のプロムパーティへ行き、生徒も先生も装いを褒めてくれたと語る。

    「ベールも私も、4年間、努力して、総代として生徒会長として卒業式でスピーチをする権利を勝ち取ったのです。卒業式の朝に、その栄誉が私たちの手から奪い取られ、私はショックを受けるとともに、動転しました。私のスピーチは、神に対する信頼、希望、未来に向けた自信についてです。それが、ホーリークロス高校のスタッフ、先生方が私に授けてくれた教えです」生徒会長のフランツ氏は、River City News紙にそう書いている。同紙にはフランツ氏のスピーチ全文が掲載された。スピーチは、政治的ではなく、卒業生を賞賛することに重点を置いている。

    「書き直しの機会を与えることもなく、管区が何故、私のスピーチを拒否し、私や私の家族、クラスメイトからこのスピーチを奪うということに対して、何故思いやりも示してくれなかったのか、私には未だに分かりません」とフランツ氏はつけ加えた。

    BuzzFeed Newsはホーリークロス高校にも連絡をしてみたが、5月28日の時点ではすぐには連絡をもらえなかった。

    「学校と揉めたことは今まで殆どありませんでした」とベール氏は話す。

    2年次に、髪をヘアピンで留め、化粧をして学校に通っていいかと先生とよく議論したが、男子生徒にヘアピンと化粧を明確に禁じる服装規則はない、と主張した。

    昨年の10月、卒業アルバムの個人写真用に、黒いタートルネックセーターを着て、首には真珠のネックレスを身につけていたのだが、学校側がスタッフに依頼して、真珠のネックレスは加工処理で削除されてしまった。

    最近撮影した卒業写真では、ベール氏はジャンプスーツ姿で、布を纏っていた。校長のホルツ氏は、ベール氏ともうひとりの生徒を呼び寄せた。もうひとりは、トランスセクシュアルで、ボータイを身につけていて、校長はふたりに服装がふさわしくないと告げた。写真は撮り直しになり、ベール氏はシャツにネクタイを身につけた。

    21日、学校はベール氏の母親に電話をし、卒業式には男性用のフォーマルなドレスコードに準拠するよう念を押した。髪飾り、化粧、ヒールは禁止。ベール氏の言葉で言うと、「司教が列席するので、男性らしく」するよう釘を刺された。

    ホルツ校長が自分の性的アイデンティティーを支持して、もっと戦ってくれなかったことに苛立ちを感じたが、校長の立場も理解できる、とベール氏はつけ加えた。「私を直接的に脅かそうとしているわけではなく、管区に対してある一定のイメージを守りたいだけで、昔ながらの男と女という分類に合わせたいだけです」とベール氏は言った。

    卒業式の日、卒業スピーチは読めないと言われた後にもかかわらず、ベール氏は規則に従った。「シャツとネクタイは着用。靴はフラットシューズ。眉毛は描いて、マスカラも塗った。でもこれは私にとってはホントに最低限のこと」とベール氏は話した。

    管区がスピーチを禁止したおかげで、想像よりもはるかに多くの人が、自分のスピーチ、社会の独善的なやり方を変えることができる、という進歩的な若者のメッセージを読むこととなった、と卒業後は同州にあるルイビル大学で生物学と生態学を学ぶ予定であるベール氏は話す。

    「管区はこれで間違いなく大やけどをしました」とベール氏は結んだ。

    この記事は英語から翻訳されました。翻訳:五十川勇気 / 編集:BuzzFeed Japan

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