難民を送り返すEUの計画は「状況を悪化させる」 NGOが連名で批判

    「国境の封鎖をやめる必要があります。封鎖しても、絶望的な人々の窮状がさらに悪化するだけです」

    ギリシャ国内の難民をトルコに送還する欧州連合(EU)の計画案に、批判の声が出ている。19の非政府組織(NGO)が、計画は危機を悪化させるとして、人道的な解決策を取るよう書簡で求めた。

    EUとトルコの首脳陣は先週、 難民危機への解決策を話し合うため、会合を開いた。その中に、ギリシャ国内の全ての移民と難民を、トルコに送還する案が含まれていた。両首脳陣は、17・18日の2日間、会議を再招集し、最終提案に合意する予定だ。

    提案には重要なポイントが含まれている。エーゲ海を渡ってギリシャに辿り着いた全ての「不法移民」をトルコに送還し、トルコは送還された難民を受け入れた数だけ、トルコ国内のシリア難民をEUに再定住させるという点だ。

    しかし、国際救済委員会(IRC)が率いる19のNGOは、提案された計画が「人々の監禁と差別的行為を長期化させる」と主張し、書簡に署名をしている。

    BuzzFeed Newsの取材では、この書簡は、17日にある2度目の難民サミットの前に、EU首脳陣に送られる。書簡の中で、一団は「合法的なルートが全く存在しない中で国境を閉鎖することは、ヨーロッパに到着する難民や移民の問題を解決するための打開策にはならない」と述べている。

    書簡に署名したNGOには、セーブ・ザ・チルドレン、オックスファム、世界の医療団、ワールド・ビジョンが含まれる。これに加え、ヨーロッパを拠点にするいくつかの組織が名を連ねている。

    彼らは、国境を封鎖したEU諸国についても批判している。それにより、何千人もの移民や難民がギリシャ国内に足止めされることになったからだ。

    一方的で勝手な国境の封鎖は、人道的危機を悪化させる。そのような封鎖がここ数週間続き、何万もの人々が、避難所、食糧、医療、水という、絶対的で基本的なニーズに手が届かない状況にある地域に押し込まれた。

    国境の管理は重要だが、移民をゼロにするという、得策でも達成可能でもない目標とは、切り離さなければならない。

    緊急な保護を必要としているのは人々であって、国境ではないのだ。

    IRCのメラニー・ワードはBuzzFeed Newsに対し、 NGOはEUに対し「『One-in、One-out』計画(ギリシャに1人難民が入ったら、トルコはその難民を受け入れ、トルコからシリア人を1人、EUは難民として受け入れる)」を取り下げ、ヨーロッパ外の立ち場の弱い難民たちが、より迅速に、安全な国へ再定住できるような計画の実施を望んでいる、と語った。

    「『One-in、One-out』計画は、国際法の下では違法である上に、状況をさらに悪化させることになるでしょう。 なぜなら、密入出国請負業者が、ギリシャへの危険な航海に人々を連れ出すのを、トルコが阻止するような動機を生まないからです」と、ワード氏は言った。

    「私たちは、安全なルートを整備する必要があります。そうすれば、何千もの人々が海で命を落とすのを阻止できます。EUはそれに取り組めたはずですが、そうしていません」

    「EU諸国も、国境の封鎖をやめる必要があります。封鎖しても、絶望的な人々の窮状がさらに悪化するだけです」

    書簡では、EU首脳陣に対し、戦争を逃れてヨーロッパへやってくる難民たちのために「安全で合法的なルート」を作ることを求めている。

    「EU諸国は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が特定した、10%の最も立場の弱い難民を再定住させるための、緊急措置を取らなければなりません」と書かれている。

    NGO団体は、EU首脳陣に対し、人々が基本的ニーズにアクセスできるような指定避難所の提供を含め、ヨーロッパ内の難民や移民が直面している状況の改善も要請した。

    また、彼らは「全ての政策や新しい提案には、具体的な保護活動を組み込み」、女性や子供たちを性的暴力、強盗、嫌がらせ、暴行、及び性的搾取から守るよう求めた。

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