Facebookで性的指向ターゲティング広告が禁止に、必要な情報がLGBTに届かなくなる懸念

    LGBTコミュニティ向けサービスを提供する団体が、対象者に情報を直接届けられなくなってしまった。

    Facebookは2018年2月、広告プラットフォームの仕様を見直し、性的指向にもとづくターゲティング広告の配信機能をひそかに削除した。この影響で、LGBTコミュニティ向けサービスを提供する団体が、対象者に情報を直接届けられなくなってしまった。

    仕様変更の一方でFacebookは、出会い系アプリにはこのターゲティング用オプションの継続使用を例外的に許可した。このオプションは、Facebookユーザーがプロフィールで公開している性別情報と「恋愛対象」情報をベースに、Facebookが広告主へ提供しているものだ。

    The Trevor Projectは、自死する恐れのあるLGBTの若者に対する支援活動を全米展開する組織であり、電話で24時間365日相談を受け付けるほか、チャットとSMSでも対応している。

    同組織によると、今回の仕様変更で活動が阻害されてしまったため、性的な好みにもとづく広告のターゲティング配信手段を復活するようFacebookに求めているそうだ。

    ところが、同組織で最高成長責任者という役職に就いているカルビン・ストウェル氏はBuzzFeed Newsに対し、Facebookとの交渉は今のところ「成果がない」と話した。

    「あのようなターゲティング広告が使えることの重要性は、極めて高い。我々は自分たちのサービスを宣伝を広告を通じて行なっているが、その結果として人の命を救っていることは誰の目からも明らかだ」(ストウェル氏)

    Facebookが「恋愛対象」によるターゲティング機能の提供を打ち切ったのは、ユーザーと米国議会による厳しい調査の目にさらされたことを受けての、広告プラットフォーム大幅刷新の一環である。

    数年前からFacebookは、悪者たちに容赦なく食い物にされてきた。2016年の大統領選挙期間中には、ロシア政府と関係のある活動家がFacebook広告のターゲティング機能を悪用し、米国を分断しようと数百万人もの米国市民に働きかけた。また、Propublicaが先ごろ実施した調査から、何十社という企業がターゲティング機能を「求人広告を年配ユーザーに見せない」ために使っていたと判明した。

    Facebookプロダクト管理ディレクターのメアリー・クー氏は、メールでBuzzFeed Newsに対して「Facebookコミュニティと外部の専門家から受け取ったフィードバックを参考にして、ユーザープロフィール内の『恋愛対象』情報にもとづくターゲティングを、企業や団体に使わせないことにした」と回答した。

    性的指向にもとづくターゲティング機能の提供をやめることは、Facebook上である種の差別を未然に防ぐ可能性がある。例えば、恋愛対象が同性なのか異性なのかに応じて、条件や内容の異なる2種類の広告を表示し分ける、といった広告主の行為を阻止できる。

    LGBTコミュニティ支援団体のなかには、Facebookの対応に反対していないところもある。Gay & Lesbian Alliance Against Defamation(GLAAD)の広報担当者はBuzzFeed Newsに対し、アイデンティティによるターゲティングをやめて、関心によるターゲティングを維持するというFacebookの決定は、広告プラットフォーム悪用阻止が期待できる「理にかなった妥協」である、と述べた。ロビー団体であるGLAADは、アイデンティティ・ベースのターゲティングを行っておらず、The Trevor Projectの使っている機能を必要としていない。

    ただし、出会い系アプリを特別扱いするにもかかわらず、The Trevor Projectに融通を利かせることを渋るFacebookの姿勢は、全米メンタルヘルス調査のプロモーションにターゲティング機能を使っていたThe Trevor Projectをいら立たせた。「予算が極めて厳しいのに、情報を伝えたい人たちに届くよう祈りながら、今は闇雲に金をつぎ込まなければならない」(ストウェル氏)

    「恋愛対象」ターゲティング機能がない状態でもThe Trevor Projectは、興味を示す事柄からLGBTコミュニティの一員であると考えられるユーザーに対して、現在も広告を配信できる。しかし、ストウェル氏はこうしたターゲティングを「信じられないほど危険なゲーム」と呼び、意図せず人々を除外してしまう恐れがある、と語った。

    Facebookのある広報担当者は、出会い系アプリが性的な好みによるターゲティングを今も実行できる理由について、過去のしがらみが原因であるとBuzzFeed Newsに解説してくれた。かつてFacebookは出会い系アプリの広告配信に対し、「恋愛対象」を条件に設定するよう強制していたのだという。

    この広報担当者は、今や出会い系アプリがこの条件を満たす必要はないのだが、切り替えに必要な猶予期間を与えている、と説明した。

    BuzzFeed NewsがFacebookに問い合わせたところ、4月末には出会い系アプリも性的指向にもとづくターゲティング機能を例外なく使えなくなる、との回答を得ている。

    この記事は英語から翻訳されました。翻訳:佐藤信彦 / 編集:BuzzFeed Japan

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