スパイク・リー監督の最新映画『ブラック・クランズマン』にはパワーがある。なぜなら実話に基づいているからだ。
1970年代後半、コロラド州コロラドスプリングスに住む黒人刑事ロン・ストールワース(ジョン・デビッド・ワシントン)は、「クー・クラックス・クラン(KKK)」の支部に電話をかけ、白人になりすまして潜入捜査を試みた。
ストールワースは自分の代わりに、同僚の白人刑事(アダム・ドライバー)を支部に送り込む。さらに、KKKの最高幹部デービッド・デューク(トファー・グレイス)に電話し、関係を構築。映画は「この映画は、最低の実話に基づいています」というインタータイトル(文字だけの画面)で幕を開ける。
しかし、最も力強いシーンの一つは、この映画のためにつくり出されたものだ。ただし、インタータイトルの通り、史実に基づいている。具体的には、ジム・クロウ法(1876年から1964年にかけて存在した、人種差別的内容を含む南部諸州の州法の総称)時代の南部で起きた、吐き気を催す恐ろしい出来事の一つが描かれている。
初期の脚本には、「白人」のストールワースが加入式を行うシーンが含まれていた。共同脚本家のケビン・ウィルモットはBuzzfeed Newsの取材に対し、リー監督とウィルモットはこのシーンを「KKKの実態や、彼らが本当には何をしていたかという詳細」で補うことにしたと述べた(なお、リー監督とウィルモットは、2015年のギャング映画『Chi-Raq(シャイラク)』でもタッグを組んでいた)。
ウィルモットはすぐに、19世紀後半から20世紀前半にかけて全米に拡大したリンチ事件を思い浮かべた。そして、脚本を書き換え、KKKの加入式に別のシーンを挿入した。公民権運動の象徴であるハリー・ベラフォンテ演じる黒人活動家が、地元の黒人学生組織を訪問し、実際に起きたジェシー・ワシントンのリンチを目撃した体験を語るシーンだ。
1916年5月15日、テキサス州ウェーコで、17歳の農場労働者ワシントンが白人女性をレイプ、殺害したとして有罪判決を受けた。判決が言い渡された後、ワシントンは群衆によって裁判所から引きずり出され、首には鎖が巻かれた。ワシントンはれんがやナイフで襲撃され、市庁舎の外にある木からつり下げられ、性器を切り取られ、繰り返し火あぶりにされ、焼き殺された。約1万5000人がその様子を見ており、警察も止めに入らなかった。
「米国では多くのリンチが起きており、その写真を見ることもあります」とウィルモットは話す。
「ウェーコのリンチは、米国史上最も恐ろしい出来事の一つです。…ジェシー・ワシントンの写真は目にする機会も多いですが、背景にある物語を知る人はいません。それがこの事件を選んだ理由のひとつです。映画にぴったり合うと思いました」
白人至上主義の美辞麗句が何につながるかを正確に示すには、白人の純血性を保とうとするKKKの物語に「対抗する物語」がほしかったと、ウィルモットは説明している。ジェシー・ワシントンのリンチは、「彼らが口にする言葉の結末をリアルに物語っています。これこそが行き着く場所であり、これこそが真の姿です」
また、対比的なシーンを挿入することで、映画は広がりを見せ、白人至上主義の暴力性がKKKのみにとどまらないことを明示している。
当時、ウェーコ市民の約半数がリンチを目撃したと伝えられている。「街全体が知っていました。実際のところ、街全体が受け入れ、それが公共イベントに発展するというパターンをたどっています」
映画を見た人は、約100年前にはリンチが広く受け入れられていたという事実を知り、「どうしたらそんなことが起きるのだろう?」と思ったかもしれない。ウィルモットに言わせれば、答えは単純だ。「ごく普通のことだったからです。当時の人々にとっては」
ウィルモットはまた、リンチが常態化した背景にあった衝動は、今も生き続けていると指摘する。リー監督は映画の公開日として、バージニア州シャーロッツビルで人種差別主義者の集会が開催されたちょうど1年後を選んだ。
この集会は暴動に発展し、1人の死者が出た。映画は同集会の映像で幕を閉じるが、その中でデュークは、ドナルド・トランプへの賛辞を述べている。
「奇妙なこと、常軌を逸したことが受け入れられているという点では、今の時代に通じるものがあります」とウィルモットは話す。「数年先に、今の時代を振り返って、どうして私たちはこんな行為を普通のこととして受け入れたのだろうと思うはずです」