5月3日(金)に日本先行公開される、ポケモンの実写版映画『名探偵ピカチュウ』。予告トレーラーが公開されると、全世界が沸き立った。
「ピカチュウが……生きている!!」
毛並み、表情、目の動き……時には顔をしわしわにさせて落ち込んだりもする。これまでゲームやアニメで世界中の子どもたちを虜にしてきたあのピカチュウに息を吹き込むためにはどんな技術があったのだろうか――。
これまで『ガリバー旅行記』や『モンスターVSエイリアン』を制作し、同作品の監督を務めるロブ・レターマン氏に話を聞いた。
ピカチュウは「人間の表情」をしている
製作期間は2年超。ビジュアル・エフェクトを担当するクリエイターは、カナダやインドをはじめ世界中から1000人以上も集まった。
ロケ地はロンドンやスコットランド。フィルムで撮影された映像に、渋谷や新宿を思わせるビルを合成し、舞台となるライムシティを作りあげた。
「ポケモンを現実の世界に溶け込ませなくてはいけない。なので、今回はCG作品では馴染み深いグリーンバックを殆ど使わずに、フィルムで撮影しました。その場の光を全部取り入れて、それをポケモンたちに反映させました」
アナログとデジタルを折りまぜることで「ピカチュウがその場にいるんだと思わせるのがゴール」と語る。
「自然の光の中で質感はどう変わるのか、吹き抜ける風で毛並みはどう動くのか、濡れたら? 汚れたら? すべてを自然の中に馴染むように計算する必要があったのです」
何よりの見どころは、人間の言葉を話すピカチュウだ。声優を務めるのは『デットプール』を演じたライアン・レイノルズ。可愛らしい外見とおじさんの声のギャップが注目を集めた。
コーヒーを吹き出したり、顔をしわくちゃにさせたり、とにかく人間味溢れる表情を見せるが、それには理由がある。ライアンの表情を取り込んでいるのだ。
「フェイシャルキャプチャを採用して、ライアンの演技がピカチュウに取り込まれるようにしました。目の動きは、まさにライアンの目の動きです」
「もちろん人間とピカチュウは顔の形や骨格が違うので、調整しましたが、基本的にはライアンの演技がピカチュウに投影されています。ライアン=名探偵ピカチュウなんですね」
ピカチュウになりきるため、ピカチュウと同じ目線(ほふく前進)で演技をしたライアン。
「ピカチュウの役作りのため、82ポンド(約37kg)減量しようかと思ったのですが、流石に医者に止められました」と上のインタビュー動画で語る。
あのポケモンたちに息を吹き込むためには
劇中には、ゼニガメ、フシギダネ、コダックなどたくさんのポケモンたちが登場する。どのポケモンも肌、毛並み、動きがリアルで息を呑むクオリティだ。
リザードンは、とあるシーンでピカチュウとのバトルを繰り広げる
「リザードンはアニメーターたちでじっくり話し合いをして動きを決めました。スタジオに大きな鏡を置いて、それを複数のスタッフでスカイプで話しながら動きを作りました」
「リザードンは、コモドオオトカゲを参考にしました。でもリザードンは2足歩行。そのため、相撲の力士の動きも織り交ぜて迫力ある動きを作りました。カメックスの仕草も力士を参考にしています」
「リアルに描くため、この世界に存在する動物を参考にしました。それぞれ重力が動きに関係してくるからです。ポケモンたちのあのフォルムで、しっかり動けるのか。それを検討しなくてはいけなかった」
例えば慎重に作ったのはフシギダネだ。「身体は大きくても足が小さいので、重力のある現実世界でしっかり動けるのか検証しなくてはいけませんでした」
「フシギダネはブルドックや子犬の動き。コダックはアヒルやペンギンを参考に、よちよちとした動きを再現しました」
このようにリアルさを追求した背景には、ポケモン世代の幅広さがある。
「ポケモンは子どもたちはもちろん、20代、30代にも多くのファンを持つので、多くの人たちを満足させるものにしたかった。出演してくれた竹内涼真さんもポケモンのファンだったので」
「主人公のティムは、就職して社会人になった年ごろという設定です。いろんな方に感情移入してもらえるようにしたかったんです」