9億人が参加する世界最大の「お祭り」が開かれていることをご存じですか

インドで、5年に1回の総選挙（下院選）が行われている。

インドの人口は約13億人。うち有権者は約9億人。「世界最大の民主主義国」インドの総選挙は「世界最大の選挙」だ。

小選挙区制で、公選543議席に約8000人が立候補。うち女性は約720人だ。

膨大な投票を円滑に行うため、4月11日から5月19日まで、国土を7つに分割して順次、投票が行われた。

開票は5月23日、一斉に行われる。

電子投票は2004年の総選挙から導入された。候補者名と、そのシンボルマークが書かれており、有権者は投票したい候補のボタンを押す。

インドの識字率は73％（2011年国勢調査）で、3割は読み書きができない。このため、シンボルマークが使われている。

選挙運動でも、政党や候補者の名にシンボルマークを添えて有権者に売り込む。

与党・インド人民党のシンボルマークは蓮の花。最大野党・国民会議派のシンボルは手のひらだ。

ターバンのシーク教徒が投票。

ゆっくり動く選挙カーの回りを人の波が。

ある政党の集会で、党のイメージカラーを全身に塗った支持者。

お面をかぶった人々も。

インドでは選挙が近づくと、異なる宗教やカースト間で暴動が起きることが珍しくない。

2014年の前回総選挙の前には、北部の農村ムザファルナガルでヒンドゥー教徒の農民カーストがイスラム教徒を襲う暴動が起き、約50人が死亡した（写真はけがをしたイスラム教徒ら）。

インドには、特定の宗教やカーストを支持基盤とする政党がいくつもある。それぞれが、自派の結束を固めるために対立を煽るのだ。

ヘイトスピーチが飛び交うことも、SNS上で特定の集団を狙ったフェイクニュースが出回ることも珍しくなく、大きな社会問題となっている。

2019年総選挙では、大規模な暴動は起きていない。ただ、党派や宗派間などの対立が目立つ地域では、軍や警察が重点的にパトロールに入った。

いまの与党は、ナレンドラ・モディ首相率いるインド人民党（BJP）だ。

2014年の前回総選挙で地滑り的な勝利を収め、連立政権の続いてきたインドでは30年ぶりの単独過半数を獲得。国民会議派から政権を奪った。

モディ首相は「モディノミクス」と呼ばれる経済活性化政策を進めた。日本との関係は良好で、日本の新幹線や原発技術を導入することも決めた。

ただし、モディ政権で「暮らしが良くなった」と感じる市民は多くないため2019年総選挙では議席を減らす可能性がある。

また、BJPヒンドゥー教の伝統に基づいた社会作りを求める政党のため、インドでは少数派のイスラム教徒やキリスト教徒、仏教徒のBJPに対する警戒心は強い。

BJPに対抗し、政権の奪還を狙うのは、国民会議派。2014年の前回総選挙で惨敗し、下野した。

国民会議派はインド独立運動を率いた初代首相ネルーの子や孫が率いてきた。

「ネルー・ガンディー王朝」とも呼ばれる。

今のリーダーは、ネルーのひ孫、ラフル・ガンディー氏だ。幼い頃から、将来の「プリンス」として育てられた。

ラフル氏の父ラジブは1984−89年までインド首相だったが、その後暗殺された。

なお、ネルーの娘インディラ（のちのインド首相）が結婚で姓が「ガンディー」に変わったため、子孫はいずれも「ガンディー」姓だが、インド独立の父マハトマ・ガンディーとの血縁関係はない。