一番必要なのは「職場の理解」。東京医大・入試不正問題の背景にある6つのこと

    東京医科大は女子と浪人回数の多い男子受験者の合格者が少なくなるよう、入試の得点を不正に操作していた。

    1. 日本は女性医師の割合が、OECD加盟国の中で最も低い

    日本はOECD(経済協力開発機構)に加盟する先進国34カ国の中で、医療現場における女性医師の割合が最も低い。

    2015年で比べると、割合が最も高いラトビアが74.4%だった一方、日本は20.3%だった。

    日本の次に割合が低いのは、韓国で22.3%。一方、計11カ国で女性医師の割合が5割を超えている。

    2. 世界における女性医師の割合の平均は、25年間で約半数まで成長している

    OECD加盟国における女性医師の割合の平均は、1990年からの25年間で、29%から46%まで成長している

    一方、厚生労働省によると、日本の女性医師の割合は1990年で12%、2016年で21%だった。

    日本も26年間で2倍近く増えているが、依然として1990年のOECD平均よりも低い数字となっている。

    3. 女性医師の休職・離職理由で、圧倒的に多いのが「出産・育児」

    日本医師会男女共同参画委員会が昨年、女性医師約3万人を対象に実施した調査結果では、1か月以上休職した理由としてもっとも多かったのは「出産・子育て」で、83.7%を占めた。

    その他に「自分の病気、療養・休養」(15.8%)、「夫の都合」(4.6%)、「家族の介護や家事」(3.7%)などが続いている。

    だがその割合は低く、医療現場において育児と仕事の両立が困難な状況であることが、離職に繋がる最大の要因になっていることがわかる。

    4. 女性医師が子育てと仕事を両立するために、最も必要としているのは「職場の理解」

    子育てと勤務を両立するために必要なものは何かを聞いた厚労省のアンケート調査では、「職場の雰囲気・理解」と答える女性が最も多く、55.6%を占めた。

    他にも「当直や時間外勤務の免除」(43.9%)、「勤務先に託児施設がある」(36.6%)、「短時間勤務制度」(34.2%)など具体的な支援策を求める回答者も3割を超えた。

    さらに、女性医師への支援や子育て対策に限らず、「男性医師を含めた職場全体の勤務環境の改善」が必要だと答えた回答者も16.8%いた。

    5. 医療現場における子育てをしながら働きやすい職場環境づくりは、まだ道半ば

    では、出産・子育て中の医師たちが働き続けることのできる職場環境づくりは、進んでいるのか。

    日本外科学会が2014年に全国80医学部・医科大学附属病院の本院と、外科のある分院の計130施設を対象に実施したアンケート調査によると、妊娠中の当直免除の規定がある施設は、半分以下の43%のみだった。

    さらに、育休中の代替要員の準備体制があるかという設問には、41%の施設が「ある」と答えたが、国公立では72%だったのに対し、私立では17%と極端に低かった。

    6. 東京医大では女子と、浪人回数の多い男子受験生が不利に扱われていた

    8月7日に会見した東京医大内部調査委員会によると、2018年度の一般入試・二次試験の小論文(100点満点)において、女子と3浪以上の男子受験生の合格者が少なくなるよう、点数が操作されていた。

    具体的には、受験者全員の点数に0.8をかけて減点した上で、現役〜2浪男子には20点を加点、3浪男子に10点を加点。女子受験者と4浪男子には、加点していなかった。

    こうした不正をした理由について、大学関係者は「女性は年齢を重ねると医師としてのアクティビティが下がる」とし、具体的には「女性は結婚、出産をして育児をしなければならず長時間勤務ができなくなる」と説明したという。

    浪人回数の多い男子受験者については「年齢が高いとすぐに大学病院をやめて独立してしまう」「伸びがない」などの理由が挙げられていた。