「女人禁制」を掲げる相撲協会に、公益性はあるのか。主婦は問いかける

    日本相撲協会はBuzzFeed Newsの取材に対し「本場所中は他業務を優先する」として回答しなかった。

    今年4月の春巡業の際に、土俵上で救命措置をしようとした女性に対して行司が「土俵から降りてください」と場内アナウンスをしたことで、批判を浴びた日本相撲協会。

    大相撲が伝統と掲げる「女人禁制」は女性差別ではないのか。そう考えたある主婦が、署名サイト「Change.org」で署名運動を始めた。

    「時代錯誤の伝統は変えてほしい」

    呼びかけたのは、都内に暮らす主婦の轟木洋子さん(59)。女性看護師が土俵から降りるよう指示された問題を見て、何か行動を起こしたいと考えたことがきっかけだった。

    女人禁制をめぐっては、女性知事や市長が土俵に上がることを拒否された例があるほか、4月に静岡市で開催された「ちびっこ相撲」でも、前年まで参加可能だった女子の参加が禁じられた。

    7月に両国国技館で予定されている「わんぱく相撲」の全国大会でも、地方予選で女子が優勝した場合は、「男子最上位の者が全国大会へ出場となる」と競技規定に定められている。

    署名では、こうした女人禁制の伝統は女性差別であり、憲法に反しているとして、公益財団法人である日本相撲協会の「公益認定」を取り消すよう求めている。

    「守るべき伝統や文化はあると思います。でも時代が変わるにつれて時代錯誤になってしまったものについては、やはり変えていかないといけない」

    「相撲に励む子どもたちの夢を守ってほしい。そして小さい頃から親しんできた相撲だからこそ、世界に誇れるものであってほしいと思います」と轟木さんは言う。

    約1カ月半で集まった署名は、1万7千筆ほど。5月23日に内閣府の公益認定委員会事務局に提出した。

    事務局はBuzzFeed Newsの取材に対し、「内容を見て対応を判断する」と話した。

    日本相撲協会に「公益性」はあるのか

    日本相撲協会は2014年に「公益財団法人」に認定され、以来、税制などで優遇措置を受けてきた。2016年度の決算資料などによると、年間の事業収益は100億円を超えている一方、支払った法人税などは15万円程度だったという。

    認定を受けるためには、事業の「公益性」を行政庁によって認定される必要があるが、日本相撲協会は力士による暴行事件が起きた際にも、その「公益性」について国会で議論された経歴がある。

    今回の署名では「本来、日本に住む私たちのために使われるべき税金が、女性を差別する団体の利益のために使われている」と強く批判している。

    これに対して日本相撲協会は、4月29日に発表した八角信芳理事長の談話で、女人禁制の伝統を守る理由について、次のように説明している。

    「あいさつや表彰などのセレモニーでも、女性を土俵に上げない伝統の例外にしないのはなぜなのか。協会が公益財団法人となった今、私どもには、その理由を改めて説明する責任があると考えます」

    「第一に相撲はもともと神事を起源としていること、第二に大相撲の伝統文化を守りたいこと、第三に大相撲の土俵は力士らにとっては男が上がる神聖な戦いの場、鍛錬の場であること、の3つです」

    「3つの理由は、私どもの胸中に混ざり合っています。ただし多くの親方たちの胸の中心にあったのは、第三の『神聖な戦い、鍛錬の場』という思いではなかったかと思います」

    「土俵は男が必死に戦う場であるという約束ごとは力士たちにとっては当たり前のことになっており、その結果として、土俵は男だけの世界であり、女性が土俵に上がることはないという慣わしが受け継がれてきたように思います」

    相撲協会「本場所中は他業務を優先」

    一方、公益認定委員会事務局はBuzzFeed Newsの取材に対し、「現状では(日本相撲協会は)認定法に明確に違反しているとは考えていない」とコメント。「事業内容については、協会として自主的に判断するよう求めている」と話した。

    また、2008年に現行の認定制度が始まってから、公益認定が取り消された法人は8件で、7件は自主的に取り消し、1件は破産が理由だったという。

    公的認定は更新制度ではないが、毎年度ごとに各法人が事業報告書を提出し、その際に監督しているとした。

    日本相撲協会は「署名が提出されたことを把握しているか」「公益性に疑問が投げかけられていることについてどう受け止めているか」と言う質問に「本場所期間中なので、他業務が優先されるため答えることができない」と回答を控えた。