自治体が性的マイノリティのカップルをパートナーとして公的に認める「パートナーシップ制度」。
渋谷区や世田谷区を皮切りに始まったこの制度を全国へ広めようと、当事者やその支援者たちが5〜6月にかけて、全国27の自治体に制度導入の検討などを求める陳述書や請願書を提出した。
世話人の一人で、2017年12月に港区に請願書を出した林隆紀さん(46)は「ただ普通に暮らしたい、好きな人と一緒にいたい、という普通の気持ちを、日本でも普通に守られるようになったら」と訴えた。
多様な性のあり方を前提にした社会へ
2015年11月に渋谷区と世田谷区で始まったパートナーシップ制度は、これまでに三重県伊賀市、兵庫県宝塚市、那覇市、札幌市、福岡市へ広がり、中野区や大阪市、千葉市も導入を予定している。
制度に法的な拘束力はないものの、認定を受けることで、自治体によっては家族向けの公営住宅に入居できるようになったり、職場の福利厚生制度などが適用されたりする場合もある。
世話人の一人で自身も同性愛者の明治大学・鈴木賢教授は、パートナーシップ制度は「人間の性は多様であることへの理解を広げ、従来の制度への反省を促すために有効」だと指摘する。
「これまで日本では、多様な性のあり方を前提にした社会の制度化がなされてきませんでした。国や自治体の仕組みにおいて、あたかも全ての人が異性愛で、身体の性と性自認が一致していることが自明であるかのように装ってきました」
「その結果、LGBTと呼ばれる性のあり方が多数派とは異なる人々は、社会制度の枠組みから排除されてきました。その典型的な場面が、法的な家族からの排除です」
国際的には、世界25カ国で同性婚が認められている。G7の先進国で同性婚も、それに準ずる権利を同性カップルに与える法律もないのは、日本だけだという。
今回の一斉請願では、鈴木教授らの個人的なつながりやSNSでの参加呼びかけに応じた住民らが、それぞれの暮らす自治体計27か所に提出した。鈴木教授は今回を「夏の陣」と位置付け、今後も自治体数を増やしていきたいと考えている。
「今回の一斉請願が多くの自治体を目覚めさせ、国を動かす行動になることを目指しています」
わたしがパートナーシップ制度を求める理由
なぜ、各自治体にパートナーシップ制度の導入を求める請願書を提出したのか。BuzzFeed Newsは3組の請願代表者にそれぞれの理由を聞いた。
「オープンにできない人たちにも理解の輪を」
「私も子どもの頃にゲイだということでいじめられて、苦しんだ時期がありました。オープンにできていない人たちのためにも、請願を通じて、性的少数者への理解を求めていきたいです」
「日本でもわたしのパートナーと結婚したい」
「特別なものは欲しくない、みんなと同じ生活がしたいだけ」
「セクシュアル・マイノリティに法的保障を!」
「私は生まれの性別が男性、好きになる対象は男性、心はどちらかというと女性になります」
「今の日本では同性婚が認められていないので、私にパートナーができても、手術をして戸籍を変更しないと結婚できません。でも私はまだ、自分の体にメスを入れることが非常に抵抗があります」
「私は生まれ育った大阪市でパートナーシップ制度の導入が決まったというニュースを見たとき、涙が出るほど喜びました。同じように北区で生まれ育ち、自分を否定して、生きづらさを抱えている人にとって、救いになればいいなと思っています」
6月4日までにパートナーシップ制度の導入検討などを求めて請願書や陳述書が提出された自治体は、以下の通り。
- 東京都中央区
- 東京都文京区
- 東京都台東区
- 東京都江東区
- 東京都豊島区
- 東京都北区
- 東京都荒川区
- 東京都練馬区
- 東京都葛飾区
- 東京都江戸川区
- 東京都墨田区
- 東京都新宿区
- 東京都千代田区
- 東京都八王子市
- 東京都三鷹市
- 東京都町田市
- 神奈川県横浜市
- 神奈川県川崎市
- 神奈川県鎌倉市
- 埼玉県入間市
- 埼玉県坂戸市
- 埼玉県毛呂山町
- 埼玉県さいたま市
- 埼玉県飯能市
- 埼玉県加須市
- 埼玉県川越市
- 北海道網走市