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「ずっと縁がないと思ってた」 同性カップルが中野区に婚姻届を提出

「そこに平等はないんだなということをわかってはいながらも、実際に現場で突きつけられた感じはありました」

同性同士の結婚を認めないのは、憲法が定める「法の下の平等」に反しているなどとして、全国10組の同性カップルが2月、集団訴訟を始める。

その原告に加わる中野区在住のレズビアンカップルが1月17日、中野区役所に婚姻届を提出した。

日本で同性婚が認められていない中、「ずっと婚姻届には縁がないと思っていた。提出することでどのような変化が訪れるのか、一つのきっかけにしたい」と語る。

「そこに平等はないんだな、と」

婚姻届を出したのは、大江千束さん(59)と小川葉子さん(54)。

レズビアン・バイセクシュアル女性を支援するコミュニティ「LOUD」を運営し、昨年9月に始まった「中野区パートナーシップ宣誓」制度で第1号カップルとなった

30代の頃に交流会で出会い、一緒に暮らして25年。

お互いを「戦友みたい」と語る二人だが、「よもや自分が婚姻届を書くとは思っていなかった」と大江さんは話す。

「これまで(知人の婚姻届の)証人には何度も何度もなったことがあるんですが、自分が書くのは初めての経験で。長いこと生きていると、こういうこともあるんだなあって」

だが、戸籍課の窓口では「お二人は戸籍上、女性のため受理できない」と説明された。

数日以内に「不受理」の通知が郵送され、後日、証明書を区役所に受け取りに行くことになるという。

不受理になることは想定していたものの、二人と同じように婚姻届を提出しに来た男女カップルの姿には、突きつけられるものがあった。

「私たちの横で男女のカップルが婚姻届を出しているんですね」

「当然、当たり前のように受理されて、夫婦としての新しい戸籍が発生していくわけなんですけども。これ一つとっても、まだまだ『違う』んだなあと」

「そこに平等はないんだな、ということをわかってはいながらも、実際に現場で突きつけられた感じはありました」と大江さんは語る。

パートナーシップ制度の先へ

中野区をはじめ、全国約10の自治体で、同性カップルを公的に認めるパートナーシップ制度が導入されている。

だが、多くは条例に基づく制度ではなく、婚姻制度のような法的効力はない。

大江さんと小川さんの場合は、9月の宣誓後に大江さんが入院した際、「中野区パートナーシップ宣誓制度の宣誓書を持っている家族です」と説明することで、病院での手続きがスムーズになるなどの変化は感じたという。

「でも、結婚していたらそんな説明も必要ないんですよね。不測の事態で不安な時に、私たちはレズビアンで、同性カップルで、こういう制度を利用していて、と説明するのは結構大変」と、小川さんはいう。

2月に始まる集団訴訟では、10組のカップルが全国4ヶ所で提訴する。弁護団はこの訴訟を通じて「結婚の自由をすべての人に」と訴えている。

大江さんは「国が、司法が、どのような判断を下していくのかということをわたしは知りたい、見たい、と言うことで原告に立ちました」と語る。

小川さんも「結婚を選択できる自由」の大切さを強調する。

「異性愛の人たちだったら結婚する・しないを選択できるのに、同性愛の人たちには選択する余地もないことを、すごく不思議に思っていました」

「同性愛者の方で結婚したい方もいるだろうし、結婚しないという選択をする人もいる。今は、その選択肢を持つスタートラインにも立てない。訴訟を通じて、国がどう動くのかが大きな課題だと思います」