サッカー女子W杯フランス大会で、2大会連続・4度目となる優勝を果たしたアメリカ代表チームが7月10日、ニューヨークで開かれた祝賀パレードと式典に参加した。
特に注目を集めたのは、今大会計6ゴールで得点王とMVPに輝いたミーガン・ラピノー選手のスピーチ。
自身もレズビアンのラピノー選手は、多様なチームメイトたちを称えると、「私たち一人ひとりには世界をより良くする責任があり、このチームはその責任を肩に乗せて、よく頑張ってきました。だから、皆さんもそうであってください」と訴えた。
ピンクの髪も、タトゥーも、ゲイガールも
壇上に上がったラピノー選手は、両手を高く掲げるお決まりのゴールパフォーマンスを披露すると、こう語った。
まず何よりも、私のチームメイトたちへ。彼女たちに盛大な歓声と拍手を送ってください。
このチームは絶対に折れないし、めちゃくちゃタフで、ユーモアのセンスいっぱいで、みんな最高のワル。
何があってもビクビクしないし、チルだし、まったり茶をすすることもあれば、お祭り騒ぎもできる。
ピンクの髪も、紫の髪もいれば、タトゥーも、ドレッドヘアもいる。白人も、黒人も、その他のあらゆる人がいる。ストレートの女の子も、ゲイガールもいる。
カーリー(・ロイド選手)とアレックス(・モーガン選手)と一緒にキャプテンを務められたことは、私にとって何よりの誇りです。このチームをピッチで率いることができたことは、最大の名誉でした。
そして、集まった観衆には、こう訴えた。
私たちはもっと頑張らないといけません。もっと愛を持って、ヘイトを減らさないといけない。もっとしっかり相手の声に耳を傾けて、喋るのを減らさないといけない。
ここにいる人も、いない人も、ここにいたくない人も、賛成の人も、反対の人も、全員がこの世界をより良くするための責任を負っていることを、私たちは知っておかなければいけません。
このチームはその責任を肩に乗せ、私たちの立場や影響力を理解して、よく頑張ってきたと思います。
私たちはスポーツ選手です。サッカー選手です。女性アスリートです。
でも私たちは、もっともっとそれ以上の存在です。
そして、あなたも、もっとそれ以上の存在です。
皆さんは、ただのファンではありません。ただスポーツをサポートするだけの人たちではない。4年に1度、応援してくれるだけの人ではありません。
皆さんは毎日この道を歩き、毎日このコミュニティと触れ合っている人たちです。
(中略)これが私から皆さんへのお願いです。自分にできることをやってください。やらなければいけないことをやってください。挑戦してください。より多く、より良く、今までの自分よりも大きくなってください。
私たちは今日この場で皆さんとお祝いをするために、たくさんのものを背負ってきました。それも、笑顔で。
だから私たちのために、皆さんもそうであってください。どうかお願いです。
男女平等を求め提訴、トランプ政権を批判
同性パートナーとの交際を公言し、男女の賃金格差などにも声を上げてきたラピノー選手は、今大会でもピッチ内外での言動が大きな注目を集めた。
今年1月には、大会前のインタビューで「優勝してホワイトハウスに行くのが楽しみですか?」と聞かれ、「あのくそホワイトハウスになんか、行くわけない」と答えたことが話題に。
トランプ大統領は自身のTwitterで「スポーツリーグやチームは、ホワイトハウスに来るのが大好きだ」「ミーガンは口を動かす前に勝て!仕事をしろ!」「ミーガンはこの国、ホワイトハウス、または国旗を侮辱するべきではない」などと不満をあらわにした。
トランプ大統領はチームを招待すると表明した一方、ラピノー選手は優勝後も「私は行かないし、話をしたチームメートも全員行かないと言っている」「みんなトランプ政権に認められたいとも、汚されたいとも思っていないはずだから」と明言した。
また、今年3月には、「実質的に同じ働きをしているのに、男子代表選手よりも女子代表選手の方が賃金が少ないのは差別にあたる」として、2015年W杯で共に優勝を果たしたチームメイト27人と共に、アメリカサッカー連盟を提訴。
男女平等を求める選手たちの訴えは多くの共感を得て、決勝後のスタジアムや祝賀パレードでは、「EQUAL PAY(男女に平等な賃金を)」と声を上げるサポーターたちの姿が多く見られた。
賃金格差の問題が大きな注目を集めたことを受け、FIFAのインファンティーノ会長は7月5日、2023年に開催される次の女子W杯では、賞金を倍に引き上げると発表。
だが、それでも男女平等にはほど遠いと指摘されている。