オウム事件の麻原彰晃死刑囚に刑執行 森達也が「歴史に残る過ち」と語る理由

    「平成のうちに処刑しておきたかったのでは」

    オウム真理教の元代表、麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚ら7人に死刑が執行された

    BuzzFeed Newsは、オウム事件と日本社会の変容を追いかけ、ドキュメンタリー映画『A』『A2』を監督した森達也さんに受け止めを聞いた。

    「歴史に残る過ち」

    麻原死刑囚以外に刑が執行されたのは、井上嘉浩、早川紀代秀、中川智正、遠藤誠一、土谷正実、新実智光の各死刑囚。

    ニュースで麻原死刑囚の執行を知った森さんは、「言葉がない」と絶句。数十秒間の沈黙の後、こう続けた。

    「テロというのは政治的な目的があって暴力行為に及ぶことだが、オウム事件の目的はよくわかっていない。麻原が動機を語っていない状況での執行は歴史に残る過ちです」

    「受刑能力」を疑問視

    刑事訴訟法は《死刑の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは、法務大臣の命令によつて執行を停止する》と定めている。

    麻原死刑囚には執行時点で「受刑能力」があったのか。森さんはこの点について疑問を投げかけた。

    「麻原は意識が昏迷しているような状況で、受刑能力は失われていたのでは。死刑の執行は刑事訴訟法的にもありえない」

    意識が昏迷状態にあったとすれば、生きていたとしても動機や真相を語ることは困難だったのではないか?

    「重度の拘禁反応だった場合、『環境を変えれば回復する可能性がある』と指摘している精神科医もいます」

    「平成が終わる前に」

    死刑廃止論者でもある森さんは、このタイミングでの死刑執行に「平成の終わり」が関係しているのではないかと分析する。

    「来年は天皇の退位や新天皇の即位などで式典も予定されている。2020年には東京五輪もあり、海外の注目も集まりやすい。平成のうちに処刑しておきたかったのでは」

    森さんは著書『A3』の取材過程で、死刑囚の信者たちと面会や手紙のやり取りを重ねた。

    取材を踏まえ、オウムが暴走した背景には、麻原死刑囚と側近信者との間の「相互忖度」があったのではないかと考えている。

    「麻原はカリスマ的な独裁者というより小心者。側近たちは麻原が喜ぶような情報ばかりを伝え、麻原もまたどのようにして側近たちの支持を得るかを考えていた」

    「麻原と側近が互いに忖度し合い、エスカレートする。そこに『生と死』を転換する、宗教の原理主義的で過激な部分が結びついた末の暴走だったのではないか」

    BuzzFeed JapanNews