連日、真夏日が続き、心配になるのが熱中症。総務省消防庁によると、7月3日から9日までの熱中症による救急搬送者数は4241人に上った。
特にお年寄りは、暑さや体調不良を感じる感覚が鈍り、いつのまにか意識が遠のくこともあるので注意が必要だ。
救急救命医で、老年病の専門医でもある藤田保健衛生大学の救急総合内科学教授、岩田充永さんにこの季節、注意すべきことを教えてもらった。
熱中症とは?
気温や湿度が高い環境では、体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温の調節機能が下がります。その結果、体に熱がこもって体調が悪くなることを言います。
気温30度、湿度60%という環境基準のどちらかが上回ると、急激に熱中症が増えることがわかっています。天気予報で、お住まいの地域の最高気温が30度を超えるようでしたら、特に警戒しなくてはいけません。
どのような症状が出るの?
軽症の時は、めまいや立ちくらみ、足がつる、頭痛や吐き気などの症状が出ることが多いです。徐々に症状が進むと、体温が38度を超えて上がり始め、40度以上の重症になることもあります。
重症になると、意識を失い、けいれんなどを起こして、肝臓や腎臓など内臓障害が起きることもあります。発見や治療が遅れると死に至る可能性もあるので、油断してはなりません。
救急車を呼んだ方がいいのはどんな時?
自分では動けない状態になったら、すぐに救急車を呼んだ方が良いでしょう。立ち上がれなくなったり、足腰が動かせなくなったりしたら危険な状態にあります。意識がない場合は、もちろんすぐに呼ばなければいけません。
応急処置として、涼しいところに運び、太い血管のあるわきの下などを氷で冷やすなど、体温を下げるようにしてください。
どんな治療をするの?
何よりもまず、体温を下げることが優先されます。38度以下にするため、体に霧吹きで水をかけて、あおいで体の表面の温度を下げることをします。
42度以上にもなると、人工透析をしたり、冷やした点滴を入れたりして、体温を下げるようにします。内臓障害などを起こしている場合は、集中治療を行う場合もあります。
予防するには? 屋内にいても安心できません
もっとも大事なことは、涼しい環境にいることです。暑い日には、不要不急の外出はなるべく避けてください。炎天下では、日傘や帽子を使って日差しを直接浴びないようにしましょう。私は「クールシェア」と呼んでいますが、日中はショッピングモールなどの冷房がよく効いた施設で過ごすのも良いかもしれません。
屋内にいる場合は冷房をつけて、28度以下になるようにしてください。
屋内であっても、換気が悪いと湿気がこもりやすく、サウナや岩盤浴のような状態になることがあります。こういう状況で扇風機をつけても、熱い空気がかき回されるだけで温度は下がりません。クーラーでしっかり冷やしましょう。
また、こまめに水分補給をしましょう。部活動や肉体労働など、激しい運動をしている人は大量に汗をかきますから、なおさらです。
さらに、塩分もしっかり補給してください。汗をかくと塩分も失われ、汗をたくさんかくタイプの人は汗1リットルで塩分が3〜4グラム失われるとされています。梅干しや味噌汁などを意識してとるほか、塩分や糖分がバランスよく含まれ、体に吸収されやすい経口補水液を利用してもいいでしょう。
お年寄りはなぜ気づきにくい?
老化としか言いようがないのですが、歳を重ねると体温調節機能が落ちますし、暑さや喉の乾きなどの感覚が鈍り、環境や体調の変化に気づきにくくなるのです。また、診断はされていなくても、認知症がある場合はさらに気づきにくくなることが考えられます。
独居や二人暮らしだと、体調不良に気づかずに意識を失い、発見が遅れる場合があります。この季節、離れて住む家族や周囲の人がこまめに連絡をとり、無事を確認したり、冷房や水分補給の注意をしたりすることも大事です。
一方、「自称熱中症」と呼んでいますが、「フラフラして気分も悪いから熱中症だ」と思い込んでいたら、肺炎やその他の感染症、脳卒中など、もっと怖い病気を見逃す場合があります。涼しい環境にいてそういう状態になったなら、ほかの病気を疑ってかかりつけ医に相談するなどしてください。
普段から栄養、休養を取りましょう
もともと体調が悪く、疲労が溜まっていると熱中症になりやすいことがわかっています。栄養と休養をしっかりとり、疲れや睡眠不足を残さないようにしてください。