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こんな人は熱中症になりやすい 特に警戒すべき特徴は?

精神疾患、肥満、高血圧やアレルギーの薬を飲んでいる、子供やお年寄り、貧困状態もリスクに・・・

また酷暑が戻ってきた。8月1日も全国的に高気圧に覆われ、鳥取市と兵庫県豊岡市、京都市、それに福島市で日中の最高気温が38度と予想される。熱中症で倒れる人が続出することが心配される。

誰もが熱中症を警戒しなければならない気温なのは間違いない。しかし、中には一般よりも熱中症になりやすい特徴を持つ人もいる。

BuzzFeed Japan Medicalは、国際医療福祉大学三田病院救急部長の志賀隆さんに、特に気をつけたらいいのはどういう人なのか注意すべきポイントを伺った。

お年寄りと子供

まず、気をつけた方がいいのは、お年寄りと子供だという。

以前の記事でも書いたが、お年寄りは老化のために暑さや喉の乾き、体調不良を感じる感覚が鈍り、急に意識がなくなることもある。

「加齢のために、体温調節機能も落ちます。認知症があると、環境の変化に気づかず、周囲に適切に具合が悪いことを伝えたり、冷房で冷やすなどの適切な対処ができなかったりすることもあるでしょう」

「逆に、子供は発達途上のため、体温調節機能が未熟で、気温の上昇に対し、汗をかいて体温を下げる機能が追いつかないことがあります。さらに、身長が低いため地面からの照り返しの影響を強く受けるとされています」

また、自分の体調の悪さを言葉で大人に伝えることが難しい場合もある。

愛知県豊田市では、小学校1年生の男児が校外学習の後に教室で倒れ、救急搬送されたが熱中症で死亡した。途中で「疲れた」と訴えていたという。

「特に小さなお子さんの場合、自分の身に起きていることがどういうことなのか言語化しにくいことがあります。周りの大人が注意深く観察してあげることが必要です」

特定の薬の服用者

志賀さんはまた、「服用している薬によっても、熱中症になりやすい人がいます」と、米国家庭医学会の「熱中症と熱疲労の管理」を参照しながら話す。

これによると、熱中症の原因となり得る薬や物質として、日本で使用されているものを考えると、主に以下のものが挙げられている。

  • アルコール
  • 抗コリン薬・・・消化器症状に使われる
  • 抗ヒスタミン剤・・・アレルギーなどに使われる
  • ベンゾジアゼピン薬・・・睡眠薬や抗不安薬として使われる
  • βブロッカー・・・心不全や高血圧に使われる
  • カルシウム拮抗薬・・・高血圧や狭心症に使われる
  • 利尿薬
  • 下剤
  • 抗精神病薬
  • フェノチアジン類・・・抗精神病薬
  • 甲状腺アゴニスト・・・甲状腺機能低下症
  • 三環系抗うつ薬


「例えば、βブロッカーや血管収縮薬は、熱くなった血液を心臓から皮膚に向かって送り出す身体機能を低下させ、体温調節に深刻な影響を及ぼす可能性があると説明されています。服薬している薬が熱中症のリスクを高めるかもしれないことを知り、より気をつけていただきたいと思います」

薬と言えば、以前、BuzzFeed Japan Medicalの外部執筆者の一人、薬剤師の高橋秀和さんが、熱中症の時に頭痛薬を使うのは危険だと注意喚起していたが、どうなのだろう。

「ロキソニンは腎機能に影響しますし、アセトアミノフェン系は肝機能に問題を起こす可能性があります。熱中症の疑いがあったら、頭痛があっても飲むのを気をつけてほしいですね」

特定の病気や体の状態 精神疾患や貧困も

さらに、患っている病気や体の状態などでも、熱中症のなりやすさは変わってくる。日本救急医学会の「熱中症診療ガイドライン2015」によれば、熱中症や熱波による死亡のリスク要因として、以下の病気や状態が挙げられている。

  • 寝たきり
  • 外出しない
  • 精神疾患
  • 心疾患
  • 呼吸器疾患
  • 80歳以上の高齢者
  • 施設入所者も含め介護度が高い人
  • がん
  • 高血圧


また、オーストラリアのアデレードで2009年に13日続いた熱波で入院した人を分析した報告によると、独居や地域社会からの援助がないこと、低所得、無保険などの社会経済因子も入院まで症状が悪化するリスクとなっていた。

これに加えて、BMI(体格指数)が30以上の高度肥満の人もリスクが高いと志賀さんは言う。

「どういう仕組みで熱中症になりやすいかは全てはっきりしているわけではありませんが、肥満では脱水を起こしやすいのかもしれませんし、精神疾患では飲んでいる薬の影響や自分の体に起きている異常をきちんと把握できていない可能性があります」

予防はどうする?

さて、リスクが高いとわかったとして、当てはまる人はどのように気をつけたらいいのだろうか。

気温だけではなく、環境省の熱中症予防情報サイトのトップページで今日の値がを見ることができる、暑さ指数(WBGT)を参考にして欲しい。気温に湿度や照り返しなどの影響も加味して、体の影響を考えた指標だ。

度数で表記されるが、これが31度を超えたら危険、28〜31度は厳重警戒となる。ちなみに、今日1日の東京のWBGTは31.5度で危険領域に入っている。

「まずは、だいたい12時、午後3時に気温のピークがあることがわかっていますので、暑さ指数が厳重警戒レベルを超えたら、その時間の外出や運動を避けてほしいです。建設業の方や保険外交員など外回りが多い営業職の人はできるだけ朝や夕方に外出や作業をするようにしてください」

「必要な時は10分炎天下で動いたら10分日陰で休むことが必要です。学校での部活動や校外学習も同様です。今、男性でも日傘が流行し始めているようですが、日傘や帽子を活用するのもいいでしょう」

水分と塩分もこまめに取ることが必要だ。

「塩分と糖分が体に吸収されやすいバランスで入っている経口補水液が理想的ですが、買えば高価ですし、作るのは面倒、しかも美味しくないことで、結果的に続かないという問題点もあります。スポーツドリンクが現実的な選択肢ですし、小さなお子さんでしたらりんごジュースを薄めたものでも飲まないよりはずっとましです」

屋内にいる時は冷房は絶対付けっ放しにしよう。

「寝る前にクーラーを消して熱中症で運ばれてきたお年寄りを何人も診ています。付けっ放しか、もしタイマーで切るとしても寝苦しくて目覚めたらそこで必ずつけてほしい。また、消して寝たとして、朝倒れるパターンも多いので、起きたらすぐにつけて冷やしてください」

意識がなかったらすぐ救急車 無理せず早めに病院へ

そのように気をつけていても、やはり倒れてしまうことはある。

「環境庁のサイトで紹介されている応急処置のチャートがよくできているので参考にしてほしい」と志賀さん。

理想は倒れる前に防ぐ行動を取ることだが、サラリーマンや学生では、上司や教師の指示や組織のルールが優先され、個人の判断で動けないことがある。

「やはり個人での対応は無理で、これは企業や学校など組織で考えてほしい。猛暑ではリスクの高い人に限らず全員が警戒しなければなりません。企業や学校の責任者は、気温や暑さ指数に敏感になり、率先してリスクを回避するよう指示を出さなければなりません」

「リスクの高い人が休憩や屋内での作業を申し出た時も、きちんと耳を傾けて対応してください。熱中症で人の命が奪われるのは愚かです。心配だと思う時点で遅い。手遅れにならないためにも、早めの対処を心がけてください」