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強制わいせつ報道「山口達也メンバー」にネットでは「暗黙のルール」と指摘。実際は…

そもそも書類送検とは…?

女子高生に自宅マンションで無理やりキスをするなどの行為をしたとして、「TOKIO」のメンバー・山口達也さんが強制わいせつ容疑で書類送検された、とNHKが報じた。

他のメディアも次々とこの事件を報じているが、山口さんの呼称について、その多くが「山口達也メンバー」と報じている。

Twitter上には、「ジャニーズのタレントには容疑者と付けられない暗黙のルールがある」などの噂も広がっている。

そもそも「書類送検」とは、警察などの捜査当局が事件の被疑者の身柄を拘束しないまま、書類をもって検察官に刑事事件を送ることを意味している言葉だ。

書類を受けた検察側が、被疑者に対する処罰の審理を裁判所に求める、「起訴」という手続きを行うかどうかを判断することになる。

ただ、書類送検された事件では、刑事罰を科するほどではないなどと判断され、起訴されない(=不起訴となる)ことも多い。

多くのメディアは、身柄が拘束される「逮捕」の場合は被疑者を「容疑者」の呼称をつけて報じる。一方で、書類送検の場合は「さん」「氏」などの呼称や、職業上の肩書きなどをつけて報じるケースが多い。

実際、過去に元ジャニーズの稲垣吾郎さんや草なぎ剛さんが逮捕された際には、全国紙(朝日、読売、毎日、産経)は「容疑者」と報じている。

各社のルールは…?

各社はどのような規定を定めているのだろうか。

共同通信社が発行している「記者ハンドブック」は、被疑者の呼称について、以下のように記している。

実名を出す場合の任意調べ、書類送検、略式起訴、起訴猶予、不起訴処分の場合は『肩書』または『敬称』(さん・氏)を原則とする。

また、朝日新聞出版が発行している「事件の取材と報道 2012」 でも同様だ。

書類送検されても起訴されないケースは多く、書類送検の時点では原則、実名・肩書き呼称とするのが望ましい。

ただ、朝日新聞の場合は「警察が証拠や供述に基づいて起訴を求め」た場合などについて、こう言及している。

社会的影響が大きな事件などでは、特にこうした見通しを十分に取材したうえで、実名・容疑者呼称を検討する。

過去には被疑者の呼び捨ても

かつて、刑事事件の被疑者は呼び捨てのかたちで報じられていた。

しかし、「無罪推定の原則」などを踏まえて、人権上の配慮から、現在では多くの新聞社、テレビ局は呼び捨てを避け、まだ「捜査当局に疑いを掛けられた段階の人」であることを示す「容疑者」などの呼称を使っている。

「犯人」という表現も、有罪の判決が確定するまでは避けるのが一般的だ。

今回のケースでは、各社が適当だと判断した肩書きが「メンバー」だったと思われる。

BuzzFeed Newsでは、こうした原則にのっとっている。また、今回の件については警視庁広報課が「担当者が不在で対応できない」としているため、捜査情報を直接確認できていないこともあり、「さん」という敬称を用いている。

読売新聞社は今回、全国紙の中で唯一「山口達也容疑者」と報じている(デジタル版の比較)。各社の報じ方については、4月26日に検証する。


BuzzFeed Newsでは【TOKIO山口達也さん強制わいせつ報道 「Rの法則」放送中止、サイトはエラーに】という記事も掲載しています。

UPDATE

一部、お名前に誤りがありましたので、表記を修正いたしました。