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「パパはいつ帰ってくるの?」 日本でバラバラにされた難民一家、妻の叫び

クルド人の夫は、入国管理局に収容された。

日本で「難民」と認められていない人たちは、何を思って日々を暮らしているのか。「人間として認めてほしい」と彼女たちが言う理由は、どこにあるのか。

入国管理局に収容されるなどしている外国人を支援する「#FREEUSHIKU」が9月1日に開いたイベント「日本の強制収容所を知っていますか」。

難民申請をしているクルド人2人が登壇し、その切実な状況を訴えた。

「難民申請をしたことは、悪いことをしたことなのでしょうか。家族はバラバラになって、なんでこんなに苦労しないといけないんですか」

マイクを持ったクルド人の女性は、会場に集まった人たちに向け、たどたどしくも力強い日本語でそう語り始めた。

トルコ東部のクルド人が多い地域で生まれ育った。「クルドの文化や言葉が迫害されている」ことを理由に、2000年代前半に家族とともに来日し、難民申請をしている。埼玉県川口市の在住だ。

クルド人はシリア、イラク、トルコ、イランなどにまたがって広がる民族で、人口約3000万人。独自の言語と文化を持つが、その居住域がいくつもの国に分割されていることから、「自らの国を持たない世界最大の民族」と言われる。

トルコでも、少数民族として差別を受けたり、独立や自治を求める運動を弾圧されたりしているが、日本で難民認定された人はいない。

イベントに登壇したジャーナリストの木村元彦さんは「日本は関係の近い国からの難民申請を認めず、政治で差別している」と指摘する。

そして夫は、施設に収容された

女性は「日本の政府は、トルコとやっていることと変わりがないようにも感じています」とも語る。

長男はトルコの生まれだが、下の2人は日本生まれで無国籍だ。家族は住民票も持っていない。働くことも許されず、保険も適用されないため、「普通の暮らしもできない」という。

さらに夫は、入国管理局に収容されてしまった。

「家族でバラバラの生活は大変で、かなり厳しい。はやく帰って来て欲しいです。旦那は日本で真面目に頑張っている。悪いことはしていないのに……」

あまり知られていないが、入管施設は全国各地にあり、2018年7月末現在で1444人が収容されている。刑事的な手続きをとる必要はないうえ、移動の自由などは一切、認められていない。

なかには半年以上の長期にわたって収容される人もおり、自殺者なども相次いでいる。その現状を問題視する声は少なくない。

「パパは、いつ帰ってくるの?」

施設での面会は1日1回、30分しか許されていない。しかも、アクリル板越しだ。

子どもたちは、面会に連れて行くと泣いてしまうという。「パパはいつ帰ってくるの、なんで?」と。もう、数ヶ月になる。女性は言う。

「夫はずっとここから出られないと考えていて、すごくストレスが多い様子です。すごく心配している」

毎週、日本語教室に子供と通っている。「夫代わりに言葉を理解できること」が大切だと思っているからだ。学校の宿題などで頼りになるのは、ボランティアの日本人だという。

「日本の難民はいつまでも治らない、薬のない病気みたいな状況です。自分の国でも迫害されているけれど、日本でも、人間として認めてほしい」

そのうえで女性は、こうも言葉に力を込めた。

「外国人とか難民とか言うと怖がる人もいます。でも、怖がるよりも理解してほしい。私たちは、選んで難民になったわけじゃないんです」

懲罰房、手錠、制圧……

一方、女性同様にクルド地区に生まれ育ち、2000年代になって日本で難民申請をした男性もその実情を語った。

男性は日本人の女性と結婚。埼玉県川口市に暮らしているが、ついこの間まで入国管理局に数ヶ月にわたって品川にある東京入管に収容されていた。

流暢な日本語で「朝から晩までずっと部屋の中に閉じ込められているような感じ」だったと振り返る。

「一番辛いことは、ストレスが多いこと。病院に行きたいと言っていても、1~2ヶ月かかることもある。死んでいても、どうでも良いという扱いです」

職員が「懲罰房」と呼ぶこともある部屋には、5日ほど入ったこともあるという。

「日本語ができない人を、いじめるみたいなところがある。トラブルがあると、職員に制圧されることもある。手錠をかけられたり、部屋に閉じ込められたりする」

せめて、知ってもらいたい

難民申請中に収容され、4月に自殺をしたインド人男性とは、知り合いだった。

「隣の部屋にいて。すごい優しい方でした。日本に住みたいと、一生懸命日本語の勉強をずっとしていた」

いまは「仮放免」の手続きを取り施設の外に出ることができたが、自由があるわけではない。

先出の女性と同じく、一切働くことはできない。住民票も、保険もない。埼玉県内から許可なく出てもいけない。男性はこう、声を絞り出すように言った。

「私たちはこうして日本にいるのに、まるでいないというように扱われている。せめて、私たちの存在を知ってもらいたい、目を向けてもらいたいんです」


BuzzFeed Newsでは、入国管理局の収容実態について【「ここは刑務所よりもひどい」彼女たちは、なぜ希望を奪われたのか。入管収容者の叫び】という記事を掲載しています。