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福岡の高齢者逆走「またプリウス」の誤情報、拡散したトレンドブログ 川崎殺傷では「犯人は在日」のデマも

福岡市早良区で6月4日夜、高齢男性の運転するワゴン車が猛スピードで逆走し起こした多重事故。「またプリウス」などという指摘がネット上に広がっていた。

福岡市早良区で6月4日夜、高齢男性の運転するワゴン車が猛スピードで逆走し起こした多重事故。

ワゴン車に乗っていた夫婦が死亡したが、この事故直後から「逆走したのはプリウスだった」という情報がネット上を駆け巡った。

結論から言えば、これは誤情報だ。交差点で逆走するワゴン車に衝突され、横転した車がプリウスのように見えることから、誤解が広がったとみられる。

しかし、事故直後に「またプリウス」などという記事がネット上に相次いで掲載された。

近年、社会の注目を集めた事故の車がプリウスだった例が続いたことから、「事故が多い」という印象を持たれている部分がある。

ここ最近でも、東京・池袋で女児と母親の2人が死亡した暴走事故や、大阪市の歩道に車が乗り上げ4人がけがをした事故の車はともにプリウスだった。

また、2016年には、福岡市の博多病院で個人タクシーが突っ込む事故が起きているほか、17年にも東京・吉祥寺で高齢ドライバーの暴走で7人がけがをした事故も、プリウスだった。

こうした大きな事故が報道されるイメージから、「プリウスミサイル」などと揶揄する声もあがっている。「シフトレバーの使いづらさ」がたびたび指摘されているが、因果関係が示されているわけではない。

そして、プリウスは人気の高い車種だ。2018年度登録車種別ランキングで3位(11万5123台)と、走っている台数そのものが多い。であればその分、事故も目につくということもできる。

「トレンドブログ」が拡散

今回の事故では、横転している車がプリウスのように見えることから、報道直後から「またプリウス」「プリウスもう回収して」などという声が拡散していた。

しかし、逆走し、事故を起こした車はワゴン車だ。横転している車がプリウスだったとしても、被害者であることから、誤情報であることがわかる。

そうした言説をさらに広げているのが、「トレンドブログ」だ。

検索エンジン対策(SEO)に長けており、ユーザーが検索しそうなキーワードを先回りして記事化し、検索からユーザーを流入させてページビューを得ることで、広告収入を稼いでいるとみられるブログ群だ。

先日川崎市登戸で起きた、児童ら19人の殺傷事件では、「犯人は在日」などというデマを、根拠なしに拡散していた。たとえばこんな記事だ。

《川崎市登戸事件の犯人は韓国人(在日)だった?顔や名前はまだ?画像や動画は?住所は多摩区登戸新町?》

《顔画像やFacebookは?国籍は在日韓国人が川崎登戸の通り魔事件の犯人か》

いずれも断片的な情報を切り貼りし「確かに、韓国料理店などが多いですが、今回の犯人が韓国人であるとか在日であるとかの証拠はありませんでした」などと結んでいる。

見出しは思わせぶりだが、記事内にきちんとしたファクト(事実)はなく、「在日」であることへの断定も避けている。

間違えても「追記」で対応?

その内容は、ほかのサイトの記事の引き写しや、単なる憶測に留まっていることが多い。

社会の注目が集まる事件・事故が発生するたびに、容疑者のプロフィールや顔写真、目撃情報などを切り貼りし、長文の記事をつくっていることが特徴のひとつだ。

川崎の事故と同じように、今回の事故でも、直後からブログが大量につくられていた。いずれも、断定を避けていることがほとんどだが、タイトルやサムネイルで誤解する人は少なくないだろう。

のちに「プリウスではないのでは」という指摘がネット上で広がったが、タイトルはそのままに、「追記」という形で処理しているブログも少なくない。これは川崎のケースでも同様だった。

これは、読者に伝えられる情報の質よりも、できる限りアクセスを稼ぐことに重点を置いているため、とみられる。

先述の通り、検索サイトで上位に現れることも少なくないため、情報を受け取る側も、注意が必要だ。