老後資金として2000万円が必要だとした金融庁の報告書を「受け取らない」と表明した麻生太郎財務大臣。
6月14日の国会では、野党の追及に対し、「選挙向けのパフォーマンスではない」と改めて強調。自分が年金をもらっているかどうかについては、「記憶がない」「心配したことはない」と答弁した。
麻生大臣は報告書の発表直後、「100歳まで生きる前提で退職金って計算したことあるか?普通の人はないよ。そういったことを今のうちから考えておかないといかんのですよ」と、その内容を支持するような発言をしていた。
しかし、この問題への動揺が広がると、麻生太郎財務大臣は「世間に著しい不安と誤解を与えている」ことを理由に、受け取らない方針を示した。また、自民党の森山裕国会対策委員長も「報告書はもうなくなった」と述べ、波紋が広がった。
6月14日の衆議院財政金融委員会では、麻生大臣に様々な質問がぶつけられた。
大串博志議員(無所属)は「選挙の前だからか何か知りませんけども、国民から注目が集まったので焦ったのでは」と指摘。
麻生大臣は「選挙向けのパフォーマンスというようなご指摘をなさりたいようにお見受けいたしましたけども、私どもとしては、そのつもりは全くございません」と回答した。
そのうえで、「我々としては公的年金は老後をある程度賄うものであるが、報告書では毎月5万円不足するとか足らないと述べているので、著しい誤解や不安を与える。我々の普段の政策スタンスと違う」と改めて強調。
受け取らないことについて、法令上の問題はないとした。
年金受給は「記憶がない」
また、78歳になる麻生大臣に対し、「年金を受け取っているか」「老後不安は」との質問も。大臣はこう答えた。
「受け取っていないと存じておりますが。受け取るとか受け取らないかはずいぶん前に秘書から聞いたので、任すということを言った以来、正確な記憶はございません。(この質問は)通告にはなかったんじゃないですかね」
「私自身は、年金がいくら入ってどうであろうかと、自分の生活として心配したことがあるかというと、ございません」
大串議員は「国民が思っている年金に対する不安やセンシティブな感覚に寄り添うような発言であったとは思えない」と苦言を呈した。
そもそも、報告書の内容は…?
参院決算委員会で麻生大臣が「冒頭しか読んでいない」と述べ、蓮舫氏が「5分で読める」と皮肉った報告書は56ページで、現在、金融庁のサイトで公開されている。
報告書が示した「老後2000万円」は、高齢夫婦無職世帯の毎月の赤字額とされた5万4520円を、単純に30年分にしたもの。
夫65歳以上、妻60歳以上の無職の夫婦世帯で、今後20〜30年の人生があるというシミュレーションになっている。
毎月の赤字額が約5万円になる根拠としては、厚生労働省のデータが使われている。その前提となる収入や支出は、2018年までの家計調査や全国消費実態調査などから計算されている。
金融庁の三井秀範企画市場局長は委員会で「配慮を欠いた対応」をお詫びし、反省を表明しているが、公的年金だけでは足りないという現実から目をそらすわけにはいかないようだ。