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はじめての育休入門。9カ月取得した父親が考える3つのメリット

自民党の有志議員たちが、男性の育児休業取得を義務化しようと本格的に動いている。

自民党の有志議員たちが6月初旬に議員連盟を設立し、男性の育児休業取得を義務化しようと本格的に動いている。

本人から申請がなくても、企業側が育休を取得させる環境を作り、女性活躍や少子化対策につなげたいとの考えだ。17日には、安倍晋三首相に提言を提出した。

ただ、義務化に対しては賛成意見もあれば、反対意見もある。実際に育休取得経験がある男性はどう思うのか。話を聞いた。

育休とは。どんな支援があるのか

育児休業は、育児・介護休業法で定められる。

従業員は、原則として子どもが1歳になるまで取得でき、父母がともに育児休業を取得する場合には子どもが1歳2カ月になるまでが期間となる(パパ・ママ育休プラス)。

さらに、保育所に入れないなどの場合に、最長で2歳まで延長できるとしている。

ただ、その期間中は、会社から基本的に給与の支払いはない。その代わりに育休を取得した父親と母親ともに得られるお金がある。

雇用保険から支払われる「育児休業給付」だ。

支給額は、上限と下限があるが、休業開始から180日間は賃金の67%、181日目以降は賃金の50%が受け取れる。

得られるのは最大で賃金の67%だが、他にも支援がある。

給付は非課税のため、所得税や復興特別所得税が差し引かれない。次年度の住民税は、その年度の収入が関係するが、その収入にも算定されず安くなる。

また、期間中、社会保険料である健康保険と厚生年金の納付が免除となり、勤務先から給与が支払われない限りは雇用保険料も発生しない。

そんな制度の育休だが、男性の育休取得義務化をめぐっては、ネット上で慎重な意見も多い。

男性がただの休みと捉えて家にいるだけになってしまわないか、家事能力が身についておらず、養育能力についても身につけようとの意識がなければ無意味ではないか、夫婦で同時に育休を取った場合、妻が結局子どもにかかりっきりになるのではないか...。

そういったことから、心身ともに妻の負担が増えるかもしれないとの不安が一部にある。

育休経験者の父親の考え

それに対して、「男性の多くは家事のレベルが高いとは言い難く、育休前にそれを支援する何らかの具体的な方策が必要だと感じます」と話すのは、育休取得経験のある男性だ。

フリーランスとして働く高橋俊晃さん(36)は、会社員だった2015年に第一子の長男が誕生し、約9カ月の育休を取得した。

自身のブログ「育休男子.jp」で情報発信をし、男性の育休取得を応援している。

育休を勧める3つのメリット

上述のように、義務化によって全ての父親が育休を取得するのに対しては、慎重な意見がある。それに対して、高橋さんはどう思うのか。

「育児のスキルも当事者意識も、本気で取り組むのであれば、男性でも必ず身につきます。特に第一子の時の育児スキルに男女差はないですよね」

「誰だってやらなければ身につかない。裏を返せば、やれば誰でも身につきます。スポーツや仕事と同じだと思います」

そのうえで、男性に育休を勧める理由を主に3つ挙げる。

「我が子の成長にじっくり向き合える」「産後の妻の支えになれる」「夫婦間でリスク分散できる」ことだ。

3点目のリスク分散とは何か。高橋さんは話す。

「妻が風邪を引いたり入院したりした時、ワンオペできるスキルがあることは大変重要です。非常時のみならず、妻も友だちと旅行に行くなどしますし」

政府目標とは程遠い男性の育休取得率

「育休は、すごく大きなメリットがあるので、選択肢として広まっていないのはもったいないな、という思いがあります。 パパ良し、ママ良し、子ども良し、会社良し、社会良しと、三方のみならず良いことがあるので、オススメしない理由がないです」

「現状では、特に『会社よし』の部分は、『戦力が減る』というデメリットとして捉えられることが多いと思います。確かに、一時的にはその通りかもしれませんが、属人化していた業務の見直しやチームとしての働き方の発見、採用へのポジティブな影響など、良いこともたくさんあります」

政府は2020年の男性の育休取得率を13%にすることを目指している。

ただし、取得率は上昇傾向にあるが、目標達成には遠い。

厚生労働省が6月4日に発表した最新の「雇用均等基本調査」によれば、2018年度の取得率はわずか6.16%(前年度比で1.02ポイント上昇)にとどまる。

女性の82.2%と比べれば、差は明らかだ。

たとえ1週間の育休でも...

さらに、2015年度の調査で発表された育休の取得日数を見ると、男性の取得期間が明らかに短いのがわかる。

調査結果によると、女性は「10カ月~12カ月未満」が31.1%で最多。次いで「12カ月~18カ月未満」27.6%、「8カ月~10カ月未満」12.7%だった。

一方の男性は、「5日未満」が56.9%で最も高く、1カ月未満で8割を超えた。

そうした現状のなか、高橋さんは言う。

「1週間取得することすら、会社によってはすごく勇気と調整が必要かもしれませんが、何とか1週間の育休をもぎ取ったとしたら、全力で授乳以外の家事育児全てを担うことをオススメします」

「それこそ妻には授乳以外、何もさせないくらいの覚悟で、濃い1週間にすると良いと思います。そして、育休明けもぜひ積極的に子育てに関われるよう頑張ってほしいです」

「よく『育休はいらないから、子どもが小さいうちは定時で帰ってきてほしい』という妻側の意見を目にしますが、育休も取り、その後の勤務も調整できるのがベストだと思います」

自民党の有志の提言

内閣府が参照している三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査では、男性が育休を取得しない理由の上位は、以下だったという。

(1位)業務が繁忙で職場の人手が不足していた

(2位)会社で育児休業制度が整備されていなかった

(3位)職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった

そのうえで、内閣府は男性による育児促進の必要性をこう述べている。

「育児をしたい」という男性の希望の実現だけでなく、配偶者である女性の継続就業や第2子以降の出産意欲にも良い影響があるという点で、大変重要です。

こうした現状を受けた、議員連盟による動きは、社会を大きく変える可能性がある。

安倍首相に提出した提言には、育児・介護休業法の改正だけでなく、育休取得時の給付金拡充、負担が大きい中小・零細企業向けの支援の必要性などを盛り込んだ。

また、育休取得時を含む子育て中の男性社員への社内の嫌がらせ「パタハラ(パタニティ・ハラスメント)」の対策も求めた。

毎日新聞によれば、申入書を受け取った安倍首相は前向きに検討する姿勢を示し、こう応じたという。

「少子化対策や女性・男性の活躍において、男性の家事育児の参加は大変重要だ。提言を受け止める」

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