「学童保育は子どもにとって育ちの場。最低基準を撤廃しないで」
問題の経緯は?
共働き家庭やひとり親家庭など、日中保護者が家にいない小学生の多くは、放課後学童保育で過ごしている。
学童保育は現在、厚生労働省が2015年4月に施行した「放課後児童クラブ運営指針」に基づいて運営されている。
この指針では、「子どもを同時にかつ継続的に育成支援を行う必要があること、安全面での管理が必要であること等から」、子どもたち約40人あたり2人以上の指導員を配置し、うち1人は都道府県の講習を受けた有資格者とするように求めている。
指導員の基準が3年で撤廃へ
しかし政府は2018年11月、同指針を「従うべき基準」から「参酌すべき基準」に変更する方針を示した。「参酌すべき基準」とは、地域の実情に応じて基準に適合しない運営も認めるというもの。事実上の規制撤廃といえる。
深刻な指導員不足と待機児童
基準撤廃の動きの背景には、深刻な指導員不足がある。
地域によっては十分に指導員を確保できず保育施設が不足している。厚生労働省によれば、学童に入りたくても入れない待機児童数は2018年5月時点で1万7279人にのぼる。
人材不足の要因の一つとして、指導員の賃金や社会保障などの待遇が不十分であること、安定した長期雇用がなされていない現状が指摘されている。
一方で、2015年に新設された運営指針こそが学童増設のハードルになっていると、自治体からは基準撤廃を求める声も上がっている。
しかし保護者や学童関係者の間で、基準がなくなると学童保育の質が低下するのではないかと不安も広がっているのだ。
「やっとできた基準なのに、なぜ」1万4000人が署名
ある自治体では、いわゆる学童保育を、地域の独自事業として展開している。児童福祉法の枠外にあるかたちの事業のため、国の定める学童保育の運営指針は当てはまらない。
希望者全員が入れるが、保護者からは「児童数が多すぎて、一人ひとりにケアが回っていないと感じた」といった声も寄せられているという。一方、自治体の担当者は「こちらにはそういう声は上がっていない」と語る。
署名を集めた「みらい子育て全国ネットワーク」は、「たとえ子どもを預けられる枠があっても、保育の質が伴わなければ、安心して利用することができない」と主張している。