「息ができない」の訴えに、警官が「知るか」。昨年5月にもアフリカ系アメリカ人男性が拘束下で死亡。

    昨年5月にも、警察の拘束下でアフリカ系アメリカ人の男性が窒息死していた。「Black Lives Matter(黒人の命は大切だ)」運動を受け、拘束にあたった米オクラホマシティの警官3人のボディーカメラの映像が、公開された。

    2019年5月、「数人と口論しながら銃を振りかざしている黒人男性がいる」と、オクラホマシティ警察に通報が入った。

    2人の警官が現場に駆けつけ、アフリカ系アメリカ人のデリック・スコットさん(当時41歳)を拘束しようとしたところ、彼は逃げようとした。

    その後警官1人が合流し、スコットさんは3人の警官によって地面に押さえつけられた。

    膝で胸を抑えつけられていたスコットさんは、「息ができない」と繰り返し訴えていたが、やがて意識を失い、1時間後に病院で死亡した。

    当時職務に当たっていた警官3人のボディーカメラの映像が1年後、新たに公開された。

    映像では約13分間にわたって、警官たちが手と膝でスコットさんを地面に押さえつけている。「お願いだからやめてくれ、息ができないんだ」と、スコットさんは声を枯らして訴えていた。

    男性の警官の返答も録画されている。「そんなこと知るか」

    女性の警官が「大丈夫、息はできる」とスコットさんに話しかける。

    1時間後、スコットさんは帰らぬ人となった。

    video-player.buzzfeed.com

    このボディーカメラの映像は、BuzzFeed Newsが短く編集したものだ。2人の警官が先にスコットさんを押さえつけており、1人が駆けつけて拘束を手助けする様子が映し出されている。

    ミネアポリス警察の拘束下で死亡した ジョージ・フロイドさんの事件がきっかけで、警察の暴力行為に対する世界的な抗議活動が起きている。

    オクラホマシティ警察に対しても、スコットさんの事件で抗議の声が上がっていた。これを受け、ボディーカメラの映像を公開した。

    事件に関わった3人の警官、ジャレッド・ティプトン、アシュリー・コープランド、ジェニファー・タイタスの各氏が、犯罪行為で告発されることは一切なかった。

    事件の捜査を担当したプラ―ター地方検察官によると、警官たちの行為に関して不適切な点は何もなく、また彼らが違法行為をしたという証拠も一切なかった、とのことだった。

    「彼らはこのような状況下で、成すべきことをしただけであり、通報に対する適切な対応でした」と、プラーター地方検察官は、ウェイド・ガーリー警察署長に宛てたメールに書いていた

    オクラホマシティ警察のラリー・ウィズロウ警部は今年6月9日の記者会見で、事件の調査を再開するつもりはないと述べた。

    「現在の社会の状況により、この事件に焦点があてられただけです」

    警官が行使した2つの拘束技術 −−1人の警官が両足で容疑者の背中をはさみこみ、もう1人の警官が肩甲骨部分を膝で押さえ込む技術は、警察学校で指導される逮捕術なのだとウィズロウ警部は語った。

    この逮捕術のおかげで、警官は「理にかなった十分な制圧」をしながら、「窒息させる程ではないし、傷を負わせる可能性も最も低くなる」そうだ。

    スコットさんが呼吸ができないとを訴え、ある時点で「意識を失ったように見えた」とき、警官たちは医療支援を要請し、容疑者に「回復体位」を取らせた、とウィズロウ警部は語った。

    「容疑者(スコットさん)のために、これ以上何ができたのか。私には見当が付きません」と、ウィズロウ警部は語った。

    video-player.buzzfeed.com

    このボディーカメラの映像も、BuzzFeed Newsが短く編集したものだ。スコットさんが逮捕される最初の数分間が収められている。

    手錠を掛けた後、警官らはスコットさんのズボンの前ポケットに、弾薬入りの拳銃が入っているのを発見した。ウィズロウ警部によると、ある時期、麻薬をやっていた、と彼は言ったという。

    動かなくなったスコットさんに回復体位を取らせると、2人の女性警官のうちの1人が、「意識のない振りをしているだけ」だと言った。

    救急車で運ばれている間、警官の1人は傍で心肺蘇生を行ったが、地元の病院で、スコットさんの死亡が確認された。

    オクラホマの検視官事務所は、スコットさんの死因を「不審死」「致命的外傷なし」と記載した。

    地元紙によると、検視報告は、右側気胸(虚脱肺)が死因だとしていた。他にも、身体の拘束、最近服用したと見られる覚醒剤、喘息、肺気腫、心臓疾患といった、いくつかの「大きな影響を与える」死亡要因があった、と報告されている。

    スコット容疑者は意識のない振りをしていた、と警官の1人が示唆したことを受けて、ウィズロウ警部は6月9日、警官が容疑者を制圧するとき、容疑者が「息がができない」と言うのは「珍しいことではない」、と報道陣に語った。

    「これは、頻繁に耳にすることです」と、ウィズロウ警部は語った。

    「容疑者がまだもがいていて、応戦態勢で、その上しゃべれている。そうすると、本当に呼吸困難に陥っているのか、それとも逃げるために呼吸困難のふりをしているのか、分からなくなるものです」

    スコットさんの懇願に、「そんなこと知るか」と応じた警官に対しても、「容疑者制圧の真っ最中なら、間違いなく、警官の発言としては差支えないでしょう」と、ウィズロウ警部は擁護した。

    スコット容疑者の母親、ビッキー・スコットさんはボディーカメラの映像の1部を見た後、オクラホマン紙に語った。

    「これは、今まで目にしてきた中で、何よりも非人道的な出来事です」

    「警官たちは、息子のために何もしませんでした」

    「警官たちは息子を、まるで動物であるかのように扱いました。息子は苦しがっていました。なのに警官たちは終始、まるで息子が存在していないかのように、彼を無視しました」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。