クラブハウスを通じて…ストーカーが女性と夫を殺害。数カ月にわたりハラスメント行為

    アメリカ・ワシントン州で、音声SNS「Clubhouse」の配信者とその夫が、ストーカーの男に殺害された。同じ場所で、男も死亡しているのが発見された。

    アメリカ・ワシントン州で、音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」の配信者とその夫が、自宅で銃撃を受け、殺害された。ストーカーの男による犯行だと見られており、男も同じ場所で死亡していたと、3月10日に警察が発表した。

    亡くなったのは、ゾフレ・サデギさん(33)と夫のミラド・ナゼリさん(35)。シアトル郊外、レドモンドにある自宅で遺体が発見された。ソフトウェアエンジニアのサデギさんは、テック業界についてペルシャ語でクラブハウスを配信していた。

    レドモンド警察署のダレル・ロウ署長によると、男は同居しているサデギさんの母親の寝室から住居に侵入した。母親は現場から逃れ、近隣住民の家から警察に通報した。

    男は、クラブハウスを通してサデギさんと知り合ったという。

    初めは友達として接していたが、男の行動が徐々に「エスカレートしてきた」と、サデギさんは昨年12月、警察に相談していた。

    サデギさんが警察に提出した保護命令の申立書を、地元テレビ局が入手した。同書によると男は今年1月、警察から警告を受けている。

    その後、サデギさんは3月にも保護命令を申し立てたが、受理されなかった。理由は、保護命令を送達するための定住所を、男が持っていなかったからだ。

    ロウ署長によると、捜査における最大の難関は男の居場所を特定することだったという。男は住まいを転々としていたため、保護命令の発令に加え逮捕が困難だったと語る。

    「職業柄、あちこちを転々する人物だったため、場所の特定が困難だった。地元に住んでいて、監視や捜索、保護命令の送達ができるような住所があるわけではなかった」

    申立書で、サデギさんと夫は男の執着的な行動に恐怖を感じていたと書いている。男は、元妻に家庭内暴力を振るった過去があり法を犯すのも恐れないとサデギさんに言ったという。

    サデギさんは、男が「爆発的な怒りを抱えており、妄想に取り憑かれている」と表現した。

    男は何カ月にもわたって、携帯電話を介しサデギさんにハラスメント行為を繰り返した。1日に100回以上電話をかけた日もあったという。ロウ署長によると、「愛情を示す品々」を買い、サデギさんの自宅に郵送していた。

    申立書には、他にも男の行動が記載されている。サデギさんを脅迫するボイスメールを送る、自分の体に火をつけてサデギさんの自宅の周りの木を燃やすと脅す、サデギさんのInstagramのアカウントを削除するか、自分が見られるよう公開するか要求するなどのハラスメント行為を繰り返した。

    「男のボイスメッセージが、不安と不眠を引き起こした」とサデギさんは書いている。

    また、男はサデギさんの夫にも毎日20回以上連絡をしていた。夫の携帯電話にアプリをダウンロードしており、サデギさんを録音していると伝えたという。

    「男は、録音を断片的に編集したものを送ってきた。私はそれを聞く精神状態になかったが、私の同意なしに録音されていたと思うと、とても侵害されているように感じる」とサデギさんは書いた。

    男は、サデギさんの友人の電話番号や住所まで入手していたという。

    また、何度かサデギさんの自宅近くに行っては、近くのホテルに拠点を置き、自宅がある通り沿いに車を停めていた。ジャズバンドを雇ってサデギさんの自宅前で2時間の演奏をプレゼントしようとしたがキャンセルしたと、贈り物とともに連絡が来た日もあったそうだ。

    サデギさんは、過去に背中の手術を受けており、万一のことが起きた時とっさに対応できるか不安を感じていたという。

    「(男の行動)すべてが私に極度の不安と大きな苦痛を与えている。今、私は自分の安全に対する根深い恐怖に苦しんでいる。体の回復にも影響を及ぼしている」

    「彼が外から私を見ているのではという恐怖から、寝室のカーテンを閉じっぱなしにしている」

    ストーキングについて対策や啓発などを行う米団体SPARC(the Stalking Prevention, Awareness, and Resource Center)によると、アメリカでは女性の3人に1人近くが、ストーキング被害を経験するという。被害に遭った女性のうち、69%が身体的危害を加えると脅されている。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:髙橋李佳子