許可なく自身の写真をドキュメンタリー番組で使用されたとして、米ケンタッキー州に住む27歳の男性が、動画配信会社Netflixを相手取り、100万ドル(約1億3380万円)の損害賠償を求めて提訴した。
問題となったのは、Netflixのオリジナル映画『ヒッチハイカーKAI:手斧のヒーロー、その光と影』。一躍時の人となったヒッチハイカー、ケイレブ・マギルバリー受刑者が、殺人罪で実刑判決を受けるまでのてんまつを追ったドキュメンタリー映画だ。
今回、Netflixを提訴したテイラー・ヘイゼルウッドさんは、ドキュメンタリー内で勝手に自分の写真が使われ、あたかも殺人鬼本人のような描き方をされたと主張している。
作品内では、「この人物は守護天使か?はたまた冷酷な殺人鬼か?」というナレーションとともに、ヘイゼルウッドさんが手斧を持った写真が使われている。さらに、「誰も彼を信じられない」という字幕も映し出された。
訴状によると、Netflixは殺人罪で実刑判決を受けたマギルバリー受刑者と無関係のヘイゼルウッドさんの写真を無断で使用したとされる。
問題になった写真は、ヘイゼルウッドさんが自身のInstagramに投稿したものだった。
映画の配信後、ヘイゼルウッドさんは作品内で自身の写真が使用されていることを、人づてに聞いて知った。その後、20人以上の知人から連絡があったという。
ヘイゼルウッドさんは、「風評被害、ストレス、不安、怒りを感じた」として、Netflixに対し、100万ドル(約1億3380万円)の損害賠償を請求した。
弁護人を務めるアンジェラ・ブチャナン氏は、BuzzFeedの取材に対し、以下のようにコメントした。
「ヘイゼルウッドさんは、普段は物静かな人物です。今回、第一級殺人犯を題材にしたドキュメンタリー映画で、自身の写真が利用されたことに、大きなショックを受けています」
「彼は映画の中の人物および出来事に全く関係ありません。Netflixおよび関連する制作会社は、無断で写真を用い、風評被害を引き起こしていることについて、責任を問われるべきです」
映画の題材となったマギルバリー受刑者は2013年、ヒッチハイクをしていた。その道中、女性を強姦しようとした男性を手斧で殴り、女性を助けたとして、カリフォルニア州の地元ニュース番組でインタビューを受けた。
しかし、そのわずか3ヶ月後の2013年5月、マギルバリー受刑者は73歳の男性を鈍器で殴って死亡させたとして、殺人の疑いで逮捕された。
裁判所は、殺された男性が自身を強姦しようとしたため、殺人は正当防衛だったというマギルバリー受刑者の主張を認めず、57年の実刑判決を言い渡した。
今年の初め、マギルバリー受刑者は英ニュースサイト『the Tab』の取材に対し、Netflixが自身を搾取していると語っていた。
「Netflixは、自分が逮捕される前の話を映画にしている。でも、それに対して対価を支払ってくれない。自分は殺されそうだった女性を助けたし、レイプしてくる男を殺した。Netflixから搾取されている。ふざけんな」
この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:筒井華子