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トランス女性のチアリーダー、NFLで初めてデビュー「私たちは単なる性的マイノリティではない」

アメリカン・フットボールのプロリーグNFLで、トランスジェンダーの黒人女性がチアリーダーとしてデビュー。専門家は、トランスジェンダーの認知向上に「とても重要」だと評価します。

トランスジェンダー女性のチアリーダーがデビュー

アメリカン・フットボールのプロリーグNFLで、初めてトランスジェンダーの女性がチアリーダーとしてデビューを果たしました。

彼女の名前は、ジャスティン・リンゼイさん(29)。ノースカロライナ州シャーロットが本拠地のチーム「カロライナ・パンサーズ」の専属チアグループ「トップキャッツ(Topcats)」の新メンバーに就任しました。

リンゼイさんは、トップキャッツへの入団を発表した自身のインスタグラムの投稿で、トランスジェンダーであるとカミングアウト。

チアリーダーの仲間、そしてリンゼイさんの周囲の人々にも、初めて打ち明けたといいます。

インスタグラムの投稿には、ユニフォームを着た笑顔のリンゼイさんの写真とともに、次のように書かれていました。

「今まで秘密にしていたんですけどね…実は、カロライナ・パンサーズのチア部隊、トップキャッツに新メンバーが加入したんですよ」

「しかも、トランスジェンダーだと公表している初のNFLチアリーダーなんだそう」

「そう、この私が、新メンバーです」

「私たちは単なる性的マイノリティではない」

BuzzFeed Newsは、リンゼイさんに話を聞きました。

チームに加入して初めての投稿が、カミングアウトに関する投稿だった振り返るリンゼイさん。

最初は「とても怖かった」と語ります。

「投稿できないような内容だと思っていました」

「でも、投稿したときに感じたのは、周囲からどんな反応をもらおうと、私には関係ないということ」

「でも私の投稿は、(良い意味で)バズり始めました」

リンゼイさんは、未来のトランスジェンダーの選手にとって「新しい扉を開けて嬉しい」と話します。

「『私たちは単なる性的マイノリティではない』と伝えることができました」

「才能があったから選ばれた」

NFLのチアリーダーに関する公式記録はありませんが、トランスジェンダーと公表して活動したチアリーダーは、リンゼイさんが初めてだそう。

トップキャッツの監督、シャンデリア・ラヌエット氏によると、リンゼイさんの履歴書には、自身がトランスジェンダーだと明記されていたそうです。

しかし監督は、「初のトランス女性のチアリーダー」という歴史を作る目的で選ばれたのはなく、才能があったからリンゼイさんが選ばれたのだと話します。

「私の目標は、フィールドで絶対的な存在としてパフォーマンスを披露するチームを作ることです」

「それだけでなく、パフォーマンス以外の部分でも素晴らしい人間、良き友人、そして良き仲間として成長できる人材を育てることです」

いまだ大きく進展しないトランスジェンダーの認知

LGBTQ支援団体の調査によると、トランスジェンダーの知り合いがいる人は、アメリカに住む人々のうち3分の1以下。

同団体でLGBTQの若者の自殺防止に取り組む専門家、サム・アメス氏は、トランスジェンダーの認知は「とても重要」だと話します。

「私たちの調査では、有名人やスポーツ選手がLGBTQコミュニティーを代表することで、他のLGBTQの若者たちが自身のセクシュアリティに対し好感を持てるという結果がでています」

「特に、アメリカン・フットボールは、アメリカで絶大な人気を誇り、文化に深く根ざしているスポーツです」

「NFLでトランスジェンダーのチアリーダーが生まれたという話は、試合の勝ち負け以上の感動をもたらします」

「リンゼイさんは、多くの若者に夢と希望を与えています」

「美の基準」に対する疑問も

NFLのチアリーディングチームでは最近、男性チアリーダーの加入が可能になりました。しかし、女性チアリーダーに関しては、あまり進展がありません。

「アメリカ人らしい(色白、細身で、西欧の『美の基準』を満たしている)」 ルックスが、いまだに求め続けられているといいます。

また、NFLのチアリーダーのなかで、黒人女性は少数派。ウィッグなどを着用せず、髪をナチュラルなまま残している人はさらに少ないといいます。

リンゼイさんは、トップキャッツの採用試験を受ける前に、NFLチアリーダーのリアリティショーを視聴しました。

そこで、「(西欧の『美の基準』を持った)チアリーダーらしい容姿」をしているかが、選考結果に大きく影響すると知ったといいます。

幸い、コーチに「髪がないままで大丈夫」だと伝えられて、不安が和らいだそうです。

リンゼイさんは、「髪がないことに不安を感じる若者に勇気を与えられる」と喜んだそう。

最後にリンゼイさんは、黒人のトランス女性として、どんな困難も打ち砕くことを誇りに思っていると話しました。

「私を認めてもらいたいから、というだけじゃない。世界で起きているさまざまな問題に、光を当てるためです」

この記事は英語から翻訳・編集しました。 翻訳:髙島海人