「死ぬと思いテーブルの下に…」米大学の銃撃事件、生存者がトラウマを語る

    アメリカのミシガン州立大学で発生した銃撃事件。3人が死亡、5人が負傷した同事件の生存者が、動画配信SNS「TikTok」でトラウマを共有する動きが広まっている。

    アメリカのミシガン州立大学で2月13日夜、男が侵入し銃を発砲。3人が死亡、5人が負傷した。容疑者とみられる男は、大学の敷地外で自殺を図り、その後死亡した。

    事件を受け、銃撃事件の生存者である同校の生徒たちが、自身のトラウマを共有する動きがTikTokで広がっている。

    Flowers and crime scene tape outside Berkey Hall on the campus of Michigan State University

    ミシガン州立大学で心理学を専攻するアリーナ・ブテラコスさん(21歳)も、TikTokに動画を投稿した生徒のひとりだ。

    銃撃中、アリーナさんはキャンパスの向かいにあるアパートで女友達とバレンタインデーのパーティーを開催していた。大学から警戒アラートの通知が届き、大学で銃撃事件が発生していることを知ったという。

    万が一のためにソファーを玄関ドアまで移動させ、犯人の侵入を防いだ。その後は友達とバスルームに隠れ、泣きながら警察無線で情報を集めた。

    犯人が自殺したことを知り、アリーナさんは恋人のアパートへと移動した。事件後はしばらくショック状態だったと、ふり返った。

    事件後、アリーナさんは自身のTikTokに18秒におよぶ動画を投稿。

    「暗くて寒い。静かだ」と書かれたキャプションと共に投稿された動画には、銃撃事件後の大学構内の様子が収められている。

    アリーナさんは、BuzzFeed Newsの取材に対し、こう語った。

    「事件翌日は多くの人が献花を買っていました。それはバレンタインデーに愛する人に贈る花ではなく、亡くなった被害者のためだと思うと、悲しくなります」

    アリーナさんの動画は600万回以上再生され、各地からコメントが寄せられた。同じ大学に通う生徒とみられる人たちからも、メッセージが届いたという。

    「TikTokに投稿することで、悲しみと向き合っているのは自分だけではないことに気づき、孤独ではないと思えた」とアリーナさんは話す。

    「事件当時、構内のどこにいたかによって、人それぞれ違う体験をしたと思います。しかし私たち全員が、人生が変わるような経験をしたのは確かです」

    「私たちは皆、この国の現状を悲しんでいるのです」

    アリーナさんは動画を通して、高校生のころから訴えてきた「銃規制の強化」に光を当てたいと話す。

    「この動画をみて、州の議会に銃規制の強化を求める声を届けてくれる人がたった1人でも増えたら、それだけでも私にとって大きな意味があります」

    TikTokで事件についての投稿しているのは、アリーナさんだけではない。

    現在、TikTokには「#SpartanStrong」というハッシュタグが存在する。

    銃撃事件の現場に居合わせた生徒たちが、当時どこにいたのか、事件によるトラウマが自分の人生にどのような影響を及したのか、それぞれ自身の思いを共有しており、ハッシュタグが付いた動画は総再生回数5000万回にも及ぶ。

    カラ・タンスキさん(22)は、報道にはない生存者たちの生の声を聞けるTikTokは、「事件を立ち直るための助けになっている」と語った。

    寮の責任者を務めるカラさんは事件当時、多くの寮生から助けを求めるテキストメッセージを受け取った。しかし、彼らにかける言葉がみつからなかったという。

    銃撃中、写真共有アプリSnapchatで誤った情報が生徒間で拡散しており、構内はパニックに陥っていたと、カラさんはふり返る。

    「両親もミシガン州立大学の卒業生なので、Facebookに私たちのためを思った投稿を書いています」

    「それはそれで素敵な思いやりだとは思いますが、私は死ぬと思いながら、テーブルの下に隠れていたのです。同じ体験をした同級生たちと話がしたいのです」

    カラさんにとってTikTokは、事件の情報を収集するプラットフォーム以上に、同じ体験をした人たちとトラウマを乗り越える大切な場所になっているという。

    銃撃事件発生時、大学構内にいたという生徒が、動画のコメント機能を通して自身のトラウマを共有する場合もある。動画には、こんなコメントが寄せられた。

    「この学校の生徒です。今までの人生のなかで1番トラウマになって出来事だった」

    「この事件が起きなければ、私たちが学校にいるのが怖いと思うこともなかったはず」

    また別の生徒は動画内で、事件の翌日にパニック発作を起こしたことを明かし、涙ながらに自身のトラウマを訴えた。

    動画の説明文には、「これが、銃暴力が人に与える影響です。少なくとも3万9千人の生徒は、事件前の自分には戻れないのです」という言葉が添えられていた。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:オリファント・ジャズミン