イラン軍の誤射による飛行機事故で命を落とした父親に、13歳の息子が語ったこと

    「もし僕がまだ夢を見ていて、父が起こしてくれた時、彼はきっと『大丈夫だよ』と言ってくれると思います。だから僕は大丈夫」

    1月6日、イランの首都テヘランからウクライナの首都キエフに向かって飛び立ったウクライナ国際航空の旅客機が墜落し176人の乗客全員が死亡した。

    イランとアメリカとの緊張が高まっていたため、イラン軍が旅客機を米軍機と誤認してミサイルで撃墜したのではと見られていたが、当初イラン軍はこれを否定。「技術的な故障」が墜落の原因だとしていた。

    しかし11日に一転して「人為的ミス」によるミサイル誤射を認め、謝罪した。

    15日、カナダのカールトン大学で犠牲者の追悼式が行われた。地元紙オタワ・シチズンによると犠牲者のひとり、マンスール・プールジャムさんは同大学の卒業生。オタワで歯科医としてのキャリアを歩もうとしていた。

    追悼会に集まった200人以上を前にして、マンスールさんの息子、ライアン君(13)が、亡き父親に向けて語った。

    While so many of us struggle to find the words to express our sadness over the many lives lost in last week's horrific plane crash, 13-year-old Ryan — who lost his beloved father, Mansour — shows unbelievable poise in the face of extreme tragedy. We can all learn from Ryan.

    「先週の恐ろしい飛行機事故で失われた多くの命に対する悲しみを表す言葉を見つけようと、私たちの多くが苦労している。そんな中、愛する父親・マンスールを失った13歳のライアンは、究極の悲劇に直面しても信じられないほど落ち着いている。私たちは皆、ライアンから学ぶことができる」

    ライアン君によると、マンスールさんは「信じられないほどポジティブ」な人だったという。このように辛い時期でも、愛する人たちには前向きでいて欲しいと思うだろう、と落ち着いた眼差しで語った。

    「父はいつも僕に、ポジティブでいるように言い聞かせていました。悪い時も、良い時も、渋滞にハマった時も、僕が欲しかったコーヒーをもらえなかった時も」

    「僕は悪いことについて話したくはありません。もし父が生きていて、他の誰かが事故で死んでしまって、父がスピーチをするとしたら、絶対に悪いことは話さないから。だから僕も、話しません」

    CBCによると、別の犠牲者、ファリード・アラステさんもカールトン大学博士課程の学生だった。追悼式にはファリードさんの遺族も集まっていた。

    ライアン君は集まった人々を見渡して、「マンスールとファリードの素晴らしい人生を祝いにきてくれたこと」が慰めになると話した。

    ライアン君が父親を一言で表すならば、それは「強い人」だった。

    「悲劇に次ぐ悲劇、壁に次ぐ壁、間違いに次ぐ間違いを、父は乗り越えてきました。父は素晴らしい人でした」

    「僕たちは、お互いが大好きでした」。そう言ったあと、わずかな時間、言葉を詰まらせた。聴衆から応援の声が上がると、「ありがとう」と答えた。

    何度か深呼吸をして、決して涙は流さなかった。

    「父も、みんなが来てくれて感謝していると思います。本当に。ありがとう。ありがとう」

    「あの恐ろしい悲劇から1週間が過ぎて、ここに立っていますが、まだ信じられません。まだ夢を見ているようです」

    「でももし僕がまだ夢を見ていて、父が起こしてくれた時、彼はきっと『大丈夫だよ』と言ってくれると思います。だから僕は大丈夫」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。 翻訳:髙橋李佳子