「よくない状況になっている」ジョコビッチ選手の強制送還、テニス界からもコメント集まる

    全豪オープン連覇を狙う大坂なおみ選手も「彼のような偉大な選手が、このような形で記憶に残るのは、少し悲しい」とコメントしています。

    男子テニスのノバク・ジョコビッチ選手が、新型コロナウイルスワクチンの未接種を理由に、オーストラリアから強制送還となった。予定していた全豪オープンへの出場は叶わなかった。

    全豪オープンは、現地時間1月17日から開幕。ジョコビッチ選手は、昨年12月に新型コロナウイルスに罹患したため、免疫獲得を理由に、ワクチン接種の免除を認めるビザで豪州に入国していた。

    しかし、ジョコビッチ選手の特別な対応に、厳しい渡航制限とロックダウンを強制してきた豪州国内からは、非難の声が上がっていた。

    その影響を受け、豪州政府は、1月6日、ジョコビッチ選手のビザを取り消した

    渡航の再開は、厳しい制限のおかげ

    ジョコビッチ選手からの異議申し立てで、一度はビザの申請が認められた。しかし、再び判決が覆され、ジョコビッチ選手は、開幕前日の1月16日に強制送還となった。

    豪州連邦裁判所も、「公共の利益」に基づき、豪州政府の決定を支持すると発表。

    豪政府のアレックス・ホーク移民相は、公文書とともに、SNSで次のように発言した。

    「オーストラリアの厳格な国境制限が、私たちの安全を守っている。結果として、コロナウイルスによる死亡率の低さ、経済の急速な回復、そしてワクチン接種率の高さにつながっている」

    ホーク移民相は、16歳以上の豪国民の91.6%が、2度のワクチン接種を済ませているおかげで、厳しい渡航制限の解除につながったと付け加えた。

    豪州は、長い間、厳しい渡航制限を実施していたが、11月からワクチン接種が完了した人と、特定の免除措置に当てはまる人を対象に、渡航の再開を許可していた。

    ホーク移民相は、「オーストラリア国民は、多大な犠牲を払って、渡航制限の解除に至った。モリソン政権は、オーストラリア国民の期待通り、これからも断固として努力していく」と発表した。

    テニス界、政界からもコメント集まる

    これに対しジョコビッチ選手は豪州政府の決定に「非常に失望」しているとする声明を出した。

    この事態に、全豪オープンで連覇を目指す大坂なおみ選手は、記者会見で「彼のような偉大な選手が、このような形で記憶に残るのは、少し悲しい」とコメントした。

    過去3度のグランドスラム優勝を誇るアンディ・マレー選手は、BBCの取材に対し、「(テニス界にとって)よくない状況になっている」と述べた。

    ジョコビッチ選手の母国、セルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領は、ロイター通信の取材に対し、ビザ取り消しは政治的な決定であり、魔女狩りをされているような状況だと答えた。

    ジョコビッチ選手は、グランドスラムで歴代1位タイの優勝記録(20回)を誇る。今回の全豪オープンで、史上最多となる21個目のタイトル獲得を目指していた。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。 翻訳:髙島海人