日本人2人を含む158人が亡くなった韓国・梨泰院(イテウォン)の転倒事故から約1カ月。事故で友人2人を亡くし、自身も重傷を負った女性が、Tiktokにアップした動画で心境を語りました。
2022年10月29日(土)、韓国系オーストラリア人のミリ・ドエさんは、ハロウィンを祝うため、ソウルの繁華街・梨泰院に向かっていました。
梨泰院には当時、群衆が殺到。悲劇的な転倒事故が起こり、ドエさんも巻き込まれました。
ドエさんは病院の一室から、事件当時の状況を語ります。
「最初の転倒があったとき、足を踏み外して地面に倒れました。このときコンクリートに頭をぶつけてしまいました」
「すると、周りの人も倒れ始めました。(誰かに)頭と胸を踏みつけられ、そのときの痛みは耐えられないほどでした」
「『私を踏まないで』と何度も叫びました。でも誰にも私の叫びは聞こえてなかったと思います」
「再び転倒が起こったとき、目の前が真っ暗になって、こう感じました」
「『最期の食事になるなら、友だちの家でチーズクラッカーとマスカットなんか食べるんじゃなかった。もっとおいしいご飯を食べておくべきだった』と」
「頭の大きな擦り傷は、群衆のいちばん下にいた私を(救護者によって)引き摺り出されたときに、コンクリートの地面に擦れてできたものだと思います」
「多分死んだと思いました。だって息をしていなかったし、胸がとても痛かったから」
韓国でラッパーになることを目指して、韓国にやってきたというドエさん。事故当日の夜は、「街はお祭り状態」で「制御不能だった」といいます。
この事故で、ドエさんは腎臓と肝臓に重傷を負い、肋骨も骨折。強い痛みを経験したといいます。
ドエさんは一緒に来ていた友人ら2人と現場ではぐれ、その2人は事故で命を落としました。それについても動画内で語っています。
「なんで今、自分が生きているのかがわからないです」
「あの夜、友だちは助からなかった。なのに、どうして自分だけ生き延びたのか本当にわかりません」
「友だちを助けられなかった、守れなかったことに、ひどく動揺し、怒っています」
ドエさんはなんとか事故を生き延び、意識を取り戻しました。
「自分の夢をまだ成し遂げていない」と思ったからこそ、生き延びられているのではないかと考えているそう。
「この世界でやるべきことを十分に達成をしていなかった。だから生き延びているんだと思います」
「私が仕事ばかりしていたので、夢だったラップの曲をリリースもせず、夢を追いかけもせず、旅行もせず、そのまま死ぬという事実を、心が受け付けなかったんでしょう」
ドエさんは自身のInstagramで、約1カ月の治療を終えて退院した旨を報告をしています。
「12月1日に退院しました」
「入院して気づいたことがある。外に出て自然に触れることって大切」
事故原因はまだ解明されていません。
だがBBCニュースによると、事件発生の数時間前から地元警察署に10件の通報が寄せられていたにもかかわらず、事件当時の警察の対応が不十分だったといいます。
韓国の警察トップは対応は「不適切だった」と認めています。
またCNNによると、12月5日、事件の内部報告書を破棄するよう証拠隠滅を図ったとして、事件の対応にあたっていた警察幹部2人が逮捕されています。
梨泰院の転倒事故は、韓国では2014年4月16日に発生して死者299人、行方不明者5人を出したセウォル号沈没事故に次ぐ惨事になっています。
一部読みやすさのために編集してあります。
この記事は英語から翻訳・編集しました。 翻訳:髙島海人