いじめを受けトイレで気絶した8歳の男の子がその2日後に自殺 学校は証拠を隠蔽か

    ガブリエル・テイ君の両親によると、オハイオ州シンシナティにある小学校が、ガブリエル君に対するいじめを隠蔽したという。学校関係者は、学校が責任を問われるべきではないとしている。

    2017年1月26日、学校から帰宅した8歳の息子のガブリエル・テイ君が自殺しているのを発見したコルネリア・レイノルズさんは、すぐに心肺蘇生を開始して通報した。

    救急隊員はガブリエル君の蘇生を試みたが、脈はすでになかった。

    レイノルズさんは連れ去られる息子を前に、涙を流しながら叫んだ。

    「どうしてゲイブ?どうしてなの?どうしてそんなことしたの?」

    その質問こそが、ガブリエル君の両親がシンシナティの公立学校やカーソン小学校(Carson Elementary School)の学校関係者を相手に起こした訴訟の核心であると、レイノルズ家の代理人を務めるジェニファー・ブランチ弁護士は12月4日に行われた法廷での尋問で語った

    レイノルズ家は、学校関係者が複数回にわたり、ガブリエル君に対する暴力やいじめを隠蔽したと非難しており、この学校の行為こそが少年を自殺に追い込んだ原因だとしている。

    「ガブリエル君の両親は、カーソン小学校で何が起こっているかをまったく知りませんでした」と、ブランチ氏は主張した。

    同氏は、両親は「3年生の息子が通う小学校がどれだけ危険かをまったく知らなかった」としている。

    ガブリエル君は、おしゃれをしネクタイをしめて学校に行くのが大好きだった。8歳だった彼は、歌ったり踊ったり、母親と釣りに行ったり、父親とゲームをしたりするのも大好きだった。賢くて成績もよかったと両親は言う。

    ガブリエル君が亡くなる2日前の監視カメラの映像から、男子トイレである生徒から暴力を受け、意識を失ったまま7分間、通りかかった生徒たちに笑いものにされたり蹴られたりしながら床に横たわっていたことが明らかになった。

    しかし、両親はこの出来事を知らされていなかった。

    起訴状によると、学校は911番通報をせず、レイノルズさんに連絡をしたのは1時間以上後だった上、ガブリエル君が「気絶」したが「身体に異常はない」とだけ伝えたという。

    学校関係者は、事件が起こった場合は適切に対応しているとし、その後ガブリエル君が自分を傷つけることになるとは知るよしもなかったと話している。

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    カーソン小学校の男子トイレで、暴行を受けて意識を失ったまま床に横たわるガブリエル君の動画。

    トイレでのできごとのあと、ガブリエル君は母親に、転んでお腹を痛めたことしか覚えていないと伝えている。レイノルズさんは、彼が嘔吐したため病院に連れて行き、翌日は学校を休ませた。

    その後、2017年1月26日にはガブリエル君を登校させた。監視の目が届かない男子トイレで起こった「暴行について知っていたら、彼女がそのような判断を下すことは絶対になかった」と訴訟で主張されている。

    その日ガブリエル君が男子トイレに行くと、2人の生徒が彼の水筒を取り上げてトイレに流そうとした。ガブリエル君はそのことを教師の1人に伝えたが、その教師は2日前の暴行事件については知らなかった。「今回のできごとの重大さを認識しなかった」と訴訟で主張されている。

    学校から帰宅したガブリエル君は、その晩自殺した。

    学校関係者は、カーソン小学校が「暴力的な学校」であり、ガブリエル君が1年生の5歳当時からいじめや「攻撃的な言動」の被害者であったことを知っていたと、ブランチ氏は裁判官らに主張した。

    今回の訴訟の申し立てによると、学校関係者はガブリエル君が3年生になってから、少なくとも6件の事件で「攻撃的な言動」の被害を受けたことを知っていたが、母親に報告したのはその内の3件についてだけだったという。

    ブランチ氏は、「学校側はいじめが自殺につながる可能性があることも知っているはずだ」と主張している。

    訴訟では、ガブリエル君や他の生徒がカーソン小学校で経験したいじめや攻撃的な言動を、学校関係者が「隠蔽」したとされている。

    今回の訴訟では、学校側がガブリエル君の両親に、彼が受けたいじめの程度や、監視カメラで録画されたトイレでの攻撃に関する情報を隠したことが明らかになっている。

    訴訟では「ゲイブ(ガブリエル)君がカーソン小学校で直面していた危険を両親が知っていたら、そのまま通わせ続けることはなかっただろう」と主張された。

    学校側は、ガブリエル君が関わったとされる申し立てのあった6件の事件では、「共通するパターン」や「同じ生徒とのもめごとの繰り返し」は見られなかったため、いじめが「日常化」していたわけではないと主張している。

    また学校側は、職員はガブリエル君に「注意を払い対応もしていた」とし、いじめの加害者とされる生徒を処罰したと語った。

    2017年、ガブリエル君の両親が学区を相手取って起こした不法死亡訴訟の棄却を第一審裁判所が拒否した。第6巡回裁判所の合議体は今後、この判決を維持するかどうか決定する。

    学校側の代理人を務めるアロン・ハージグ弁護士は4日、学校関係者は軽率な行動は取っておらず、ガブリエル君の死に対する責任を負わされるべきではないと主張した。

    カーソン小学校のルテニア・ジャクソン校長とジェフリー・マッケンジー教頭は「学校側は取るべき行動をとった」とハージグ氏は述べた。

    生徒の自殺の責任を学校に負わせれば、「オハイオ州の学校や巡回裁判所全体は、まったく新たな方面の責任」を負わなくてはいけなくなるとハージグ氏は言う。

    「8歳児が時々、学校で喧嘩をしたり素行が悪かったりするのは、当然ながら理解できることです」

    オハイオ州法は、「生徒対生徒の暴力は、学校関係者が規制することで根絶できるようなことではないとしています」と同氏は言う。

    ハージグ氏は、提訴の申し立ては、ガブリエル君が「自殺する危険性はかなりあった」ことをジャクソン校長とマッケンジー教頭が把握しているべきだったとは主張していない。

    「2人の生徒の間の暴力行為が必ず自殺につながるわけではないので、自殺の危険性を知っていて意図的に無視したとは言えません」

    同氏は、ガブリエル君には自殺念慮の兆候もうつ状態にあることを示したことも一切ないため、ガブリエル君が自殺するであろうことをジャクソン校長とマッケンジー教頭が予測するのは不可能だったとしている。

    しかし少年の家族の弁護士を務めるブランチ氏は、学校関係者は「両親に嘘をついたのであれば」訴えられるべきだと言う。

    「なぜなら、両親は学校を信頼して子供の養育を任せているからです」と

    ガブリエル君が亡くなる2日前に起きたトイレでの事件をとらえた監視カメラの映像は、ある生徒がトイレにいた他の男子生徒たちを攻撃する様子を映している。

    ガブリエル君は、トイレに入ると加害者の方に手を伸ばしているように見える。今回の訴訟では、生徒はガブリエル君の手をつかむと、彼を壁に向かってグイッと引っ張っているとされている。

    ガブリエル君は何かに頭を打ちつけ、床に倒れ込んだ。訴訟では、動画を見ると加害者の生徒がガブリエル君を「倒した」のを見た別の生徒がそれを喜んでいるようだと主張された。

    また訴訟は、床で気絶しているガブリエル君の横を十数人の生徒が通り過ぎ、彼を笑いものにしたり蹴ったりしているように見え、「カーソン小学校の、いじめや攻撃を容認する環境」がうかがえるとしている。

    その後、ガブリエル君を見下ろすマッケンジー教頭が動画にとらえられている。

    少年の呼吸を確認したり助けたりするのではなく、マッケンジー教頭は「ただそこに立って他の人が来るのを待っていた」と、ブランチ氏は法廷で主張した。

    ガブリエル君は、学校看護師が到着してから意識を取り戻した。ブランチ氏は、マッケンジー教頭と看護師は、生徒が1分以上意識を失った場合は911番通報をするという学校の方針に従わなかったとしている。

    訴訟によると、看護師は1時間以上してからレイノルズさんに連絡し、ガブリエル君が「気絶」したが、「しっかりとしていて」「身体に異常はない」と伝えたという。

    レイノルズさんが息子を病院に連れて行った方が良いかと聞くと、さらなる医療手当は不要だと言われたそうだ。

    学区側は、ガブリエル君が身動きせずにいた時間の長さ、また大人の監督下になかったことについて「懸念をいだいている」としたが、その後、学校経営陣は「すぐさま決められた手順に従い」学校看護師を呼んだと付け加えた。

    シンシナティ警察当局や検察は、ガブリエル君の死に関する刑事訴訟は起こしていない。WCPOの報道によると、学校が動画を公開したのを受けてガブリエル君の死に関する捜査を再開したハミルトン郡の検視官は、もともとの自殺の原因に何も追加することなく捜査を終了させている。

    「コルネリア・レイノルズさんは、ゲイブ君を出産するまで、自分がこんなにも人に愛情を注げるとは知りませんでした」と訴状は述べている。

    「彼女のたった1人の子供、彼女の親友だった彼がいなくなってしまった今、彼女の人生は空っぽです」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。