あなたも「1日の食事紹介(What I Eat In A Day)」と題されたユーチューブ動画を観たことがあるのではないでしょうか?
ライフスタイル系の動画を配信するインフルエンサーたちにとって、定番の企画ネタにもなっています。
自分の食事を撮影するだけなので、撮影は比較的簡単。自分の憧れているインフルエンサーやユーチューバーたちの生活を覗けて、ファンにとっても嬉しいですよね。
撮り方もインフルエンサーによって様々な工夫がなされており、癒されるBGMと綺麗に盛り付けられた食事は見応えがあります。
私自身、同じような内容の特集が組まれた女性誌を読んで育ったので、食事紹介のコンテンツには何度も触れてきました。
今はそのプラットフォームが動画になっているだけ。このようなコンテンツが視聴者に受け入れられて、高い人気を集めるのも理解できます。
しかし、私たちが何気なく目にする「1日の食事紹介」のコンテンツには、実は意外な危険性も…。
視聴者のメンタルヘルスに悪影響を及ぼしたり、摂食障害を引き起こすきっかけになる可能性もあるのです。
その食事、本当にヘルシー?
「1日の食事紹介」が危険だとされる理由は、多くの動画でインフルエンサーたちの生活こそが「健康的な食事」として映し出されていることです。
多くの人気動画には細身の白人女性が出演し、ヘルシーなライフスタイルを発信しています。
もちろん、彼女たちは「ヘルシーなライフスタイル」を提供することで自分たちのブランドイメージを確立しているので、スーパーフードなどの栄養の高い食材を手に入れられる余裕があります。
しかし、彼女たちの生活や体型は、現代人の食生活を代表するものではありません。多くの視聴者は、規律正しい完璧な食生活を送れる余裕も時間もないのです。
視聴回数が高い動画では、サラダのみ…と低カロリーな食事だけが「健康」と紹介されていることがほとんど。
間食やカロリーの高い食事を摂るときは「チートデイ」など、罪悪感を感じさせる言葉で説明されています。
これでは、彼女たちのような「理想的な体」を手に入れたければ、これを食べろ、というメッセージを送っているようなものです。
また「1日の食事紹介」の動画は、食生活をインフルエンサーが “正直に” 撮影している前提が必要不可欠です。
もしかすると、動画ではアボカドトーストやサラダだけを食べていても、カメラが止まると、ポテトチップスやハンバーガーを食べているかもしれません。
しかし、視聴者にとっては動画の内容が全てです。彼女たちの体型を手に入れるため、インフルエンサー本人も実践していない食生活を送る可能性だってあるのです。
食に関する情報を発信するときは慎重に
ここで念押しして伝えておきたいのは、インフルエンサーたちの食生活やライフスタイルが間違っていると言いたい訳ではないということ。
ただ、彼女たちの言う「ヘルシーな食生活」が、食に対する偏った知識やイメージを広めてしまう場合もあるということを考えなくてはいけません。
私自身、動画を見終わった後は毎回、自分の食生活に罪悪感を覚えています。
影響力のあるインフルエンサーが、食生活を“エンタメ”として発信することで、視聴者は、憧れている人物と自身の食生活を比較してしまい、場合によっては悪影響を与える事もあるのです。
自分の生活をファンと共有する方法は他にもたくさんあります。
例えば、同じような企画ネタの「カバンの中身紹介」もファンにとっては見応えがありますよね?
これだと、極端に栄養不足な食事や誤ったボディ・イメージを発信する事もありません。
インフルエンサーの考えを鵜呑みにしないで!
先月、223万人の登録者数を抱える女性インフルエンサーが、「私の摂食障害&健康的な食生活の送り方について」と題した動画を投稿し、話題を呼びました。
動画内で彼女は、過食を克服した方法について独自の見解を述べています。
摂食障害を専門に扱う心理学者、アレクシス・コナソンは「動画内で、彼女が視聴者に提供したアドバイスは、摂食障害を発症する引き金、または摂食障害を悪化させる可能性がある」と話します。
確かに動画内で女性は、食事制限は良くないと言いながら、週に1回の「チートデー」を設けていることを告白。さらに、セルライトを除去した自分を褒め称える場面もありました。
コナソンは、インフルエンサー自身が摂食障害の回復途中の可能性があるため、彼女を責めるべきではないと前置きした上で、視聴者には彼女のアドバイスを鵜呑みにしない方がいい、と警告します。
「摂食障害の回復で大事なのは、食べ物の制限や患者が自分で作り上げたルールをなくすこと。今の体を愛し、食事制限や体重計の数字から焦点を移すことが大事」
自分の憧れている人が減量すれば、多くのファンはその秘密を知りたいと思うでしょう。
しかし、ここで覚えておかなければいけないことは、彼らは減量やダイエットのプロではないということ。
視聴者にアドバイスできる資格を持っていないことが多いのです。
もしあなたが、SNS上で食生活を紹介したいと考えているなら、あなたと食べ物との関係について、ぜひ正直に話してみてください。
インフルエンサーたちが率先してこの課題に取り組めば、さらに面白いものが生まれるかもしれません。
それでは…また次の機会まで。
タニヤ
この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:オリファント・ジャズミン