制服ににじんだ経血を女性教師から「汚い」と言われたその日、14歳の少女は命を絶った

    ケニアでは生理用品の不足や、女性の性と生殖に関する意識啓発が課題になっている。

    ケニアの女子生徒が、生理の経血が制服ににじんでいることを教師から叱責されたあと、みずから命を絶った。疑問や責任を問う声が保護者や政治家、そして市民からあがっている。

    ケニアの地元紙デイリー・ネーション紙の報道によると、9月6日、ボメット郡(首都ナイロビの北東約250キロ)の学校に通う14歳の女子生徒に初潮が訪れた。

    女子生徒は突然のことで生理用品を持ち合わせておらず、やがて制服に経血がにじんでしまったという。

    ケニアでは2017年の教育基本法により、公立学校に通う女子生徒に無料で生理用品を配布することを義務づけているが、一部の学校では十分な数が用意できていない

    このため、生理用品を買う余裕のない家庭の少女の多くが学校を休まざるをえない。

    地元紙の取材に答えた母親のビアトリス・コエチさんによると、その日、授業に集中できなくなった女子生徒に対し、女性教師が経血で制服を汚したことを非難する言葉を浴びせた。

    教師は女子生徒を「汚い」とさげすみ、教室から出て行くよう命じたという。

    「娘は生理用ナプキンとして使えるものを何も持っていませんでした。制服に血液がにじんでしまったところ、教師から教室の外で立っているように言われたのです」と、母親は同紙に語っている。

    女子生徒は歩いて帰宅し、母親に一部始終を報告した。そして、その日のうちに命を絶った。

    コノイン・サブカウンティ警察のアレックス・シコンディ氏はデイリー・ネーション紙に対し、女子生徒の遺体は警察が近くの病院へ移送したとしている。BuzzFeed Newsでは地元警察にコメントを求めている。

    女性が必要な生理用品を手に入れられないのは、学生に限った話ではない。

    今年初めには、一部のタンポンでコットン素材が体内に残留する事例があったとして、メーカーが自主回収を行った結果、ナイロビ市内でタンポンの品薄が発生している。

    女子生徒の死がソーシャルメディアで拡散されると、生理を辱めたことで起きてしまった重大な件として、ケニアの人々の間で議論が巻き起こっている。

    Terrible news! A teacher did this?😢 Time for implementation of the Basic Education Amendment Act, 2017. Say no to #PeriodofShame @KanzeDena @LuluHassan @Lesuuda @Mawathe @SenMutula @equalitynow @OfficialJMbugua @EvelynWambui @UN_Women @HonGraceKiptui https://t.co/gNzVRuXzgE

    「ひどい!先生がやったの?教育基本法の施行を徹底するべき」

    We need to teach our girls that #menstruationmatters is part of growing up. We need to instill this knowledge at a young age. Parents,teachers have a role they cannot run away from. The future of the girls depend on the now. Let's all #endperiodstigma @winitah @OfficialJMbugua

    「女の子たちに生理は大事な成長過程だと教えなくては。若いうちにその知識をしっかり根付かせないと。親と教師には逃げてはいけない大切な役割がある。女の子の未来は今の行動にかかっている」

    Twitterでは、アイコンの写真を赤く染め、女子生徒の命に敬意を表すユーザーも現れた。

    We continue to treat #menstruation as a crime, stigmatizing young girls, putting them to shame, reducing their self-esteem & then questioning why they don’t want to compete in this life or be a part of it. Shame. SHAME! Arrest that teacher! #endperiodstigma #normalizeperiods https://t.co/QgKe0SP098

    「いまだに生理を罪みたいに扱う、若い女の子に負の烙印をおす、恥の意識を植え付ける、自尊心を傷つける。それでいて、どうして競争心がないのかなどと言う。あきれる」

    As menstrual hygiene champion am joining @OfficialJMbugua in going red for Jackline who committed suicide because her female teacher ashamed her after soiling her cloths with menses @MHDay28May @wingitup_cbo @endperiodshame #endperiodpoverty #Talkperiods

    「経血で服を汚したことを女性教師から辱められて自殺した少女のために、私も赤で抗議の意思を示します」

    彼女の死から4日後、女子生徒と同じ学校に子どもを通わせている保護者の一部が抗議行動を行った。警察が数日経っても調査に着手しないのを受け、当該教師への事情聴取を求めるためだ。

    地元紙の報道によると、警察は催涙ガスで応酬し、抗議デモを行っていたグループのうち5人を逮捕したという。その後、学校は閉鎖され、生徒たちは帰宅させられた。

    翌日には、教育省の前に数名の女性国会議員が集まり、この件の調査を求めた。

    Together with fellow Women MPs, we've laid siege at the Ministry of Education in protest of the 14 year old girl who committed suicide after a female teacher publicly ridiculed her for soiling her clothes with her periods. #EndPeriodShame

    「経血で服を汚したことを女性教師にあざけられて命を絶った14歳の件で、女性議員の仲間とともに教育省に抗議しています」

    その翌日、警察は女子生徒の死について正式な調査を開始。調査の一環として、教育関係者が生徒や教師らに聞き取りを始めている。

    女子生徒が死を選んだ背景には、生理用品の不足や、生理中であることを辱められた現実がある。月経をめぐる若い女性の健康推進を目指す団体にとっては、いずれも以前から指摘していた問題だ。

    NPO団体One Dollar for Lifeでは、再利用可能な生理用ナプキンをケニアの若い女性に配布する活動をしており、今回の件を受けて活動規模の拡大を決めている。

    メール取材に答えたプログラムマネジャーのブレンダ・ビレルによると、今後2ケ月の間に、再利用ナプキン1000キットの配布を予定しているという。キットには女性の身体のしくみや自己防衛、女性衛生に関する情報も含まれている。

    同じく非営利団体のZanaAfrica Foundationは、生理用品の配布とリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)に関する啓発活動を通じ、ケニアの少女の自立と健康を後押ししている。

    創設者のメガン・ホワイト・ムクリアはBuzzFeed Newsの電話取材にナイロビで答え、リプロダクティブ・ヘルスは隔離された場所で話し合うべきテーマではないと指摘する。少女たちの人生のいろいろな面に影響する問題だからだ。

    「月経衛生は幅広い分野に関係してくる問題なんだ、という意識を高めることが非常に大事だと思います。心の健康にも関わってきます」

    ムクリアはそう述べ、世界保健機関(WHO)が発表した2016年の統計を例に挙げた。世界の15~19歳の少女の死因は2位が自殺、1位が妊娠・出産に関わる死だ。

    また、今回の件については、女性教師が批判されるのは理解できるとしながらも、教師自身もこれまで同じように女性を辱める言動に接し、影響を受けてきた可能性も考慮する必要がある、と指摘する。

    「女性教師が女子生徒に対して今回のような反応をしてしまった背景には、これまでのどんな体験があったのか。多くの女性がかなり厳しい現実にさらされています。彼女自身も十分理解する機会に恵まれなかったのかもしれないし、権利を教えられてこなかったのかもしれません」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:石垣賀子 / 編集:BuzzFeed Japan