「俺の国にコロナはいらない」アジア人学生、ロンドンで集団暴行被害

    ロンドン警視庁は、「人種差別によって激化した暴行事件」として捜査している。

    23歳のアジア人学生が、ロンドンで複数の男女から暴行を受けた。加害者の1人は「俺の国にお前のコロナウイルスはいらない」と叫んでいた。

    被害にあった中国系シンガポール人のジョナサン・モックさんは3月2日、自身のフェイスブックアカウントに、あざができ腫れあがっている顔写真を投稿した。彼の身に起きたことを説明し、ロンドンのような世界的な都市であっても人種差別やヘイトに用心するべきだと警告した。

    ロンドン警視庁は、「人種差別によって激化した暴行事件」として捜査している。

    ロンドンに2年住んでいるモックさんは、新型コロナウイルスが人種差別の理由として都合よく使われていると語る。過去に人種差別の対象になることは何度かあったが、まさか身体的に傷つけられるとは思っていなかったという。

    「人種差別的な話を聞いても、映像を見ても、自分には決して起きないことのように思える。結局のところ、人々は人種差別主義かもしれないし、そういうことを口にはするかもしれない。でもまさか、実際に攻撃するなんて。しかも、人通りの多いロンドンの道で」とモックさんは投稿した。

    「ロンドンで人種差別は起きないよ、と僕に言った人たちへ。考え直してください」

    「俺の国にお前のコロナウイルスはいらない」複数回にわたって顔を殴る

    2月24日の夜9時15分ごろ、モックさんはロンドン中心部の大通りオックスフォード・ストリートを歩いていた。男女の集団とすれ違うとき、ひとりの男がモックさんを見て新型コロナウイルスに関することを何か呟いたそうだ。

    「僕は驚いて振り返りました」

    「そうしたら彼が、『こっちを見るんじゃねえ、この〇〇〇(最後の言葉は聞き取れませんでした)』と言いました。3秒もたたずに、彼は僕の顔に殴りかかってきました。3〜4人の若い男と、1人の若い女も一緒に」

    モックさんの投稿によると、男はモックさんの顔を複数回にわたって殴った。別の男はモックさんを蹴ろうとしたそうだ。そして「俺の国にお前のコロナウイルスはいらない」と言いながら顔を殴りつけた。

    複数の通行人がモックさんを助け、警察に通報した。警官が到着する前に、男女らはその場を立ち去った。

    新型コロナウイルスは、人種差別の「最新の理由」に過ぎない

    ロンドン警視庁は、容疑者を特定するため監視カメラの映像を調べている。逮捕者はまだ出ていない。

    モックさんは顔面を数カ所骨折しており、彼を診察した医師によると矯正手術が必要な可能性があるという。

    COVID-19と名付けられた新型コロナウイルス感染症は、77の国と地域で9万3000人以上の感染者、3000人以上の死者を出している(3月5日時点)。

    モックさんは投稿に、新型コロナウイルスは人種差別主義者が他国・他人種の人々への憎悪感情に基づいて行動する「最新の理由」に過ぎないと書いた。

    自分の経験を投稿することで、少しでも変化に加担できればと願っている。

    「人種差別は何年にもわたって形態を変えてきたけれど、COVID-19の拡大を受けて、再びその醜い頭をもたげています」

    各地で起きるアジア人への暴行

    同じロンドンで3月2日、オランダに住む韓国人通訳者の女性が見知らぬ男2人から「この中国人」と言われ、殴られる事件も起きている。

    また、パレスチナ自治区のラマラで3月1日、日本人女性2人がパレスチナ人の親子から「コロナ」と呼ばれ、そのうち1人の女から髪をつかまれるなどの暴行を受けた。パレスチナの警察は女を逮捕した。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。 翻訳:髙橋李佳子