米オレゴン州ポートランドで7月18日、警察の暴力行為と人種差別に対し、デモが行われた。
米各地で「Black Lives Matter(黒人の命は大切だ)」を掲げる大規模なデモが頻繁に起きている。ポートランドも同様だが、しばしばデモが激化するためトランプ米大統領が連邦政府の治安部隊を派遣した。
その治安部隊に対し、30人以上の母親のグループが横一列に並んで「ママの壁」を作り、何百人ものデモ参加者と治安部隊の間に立ちはだかった。
SNSで拡散した動画では、白い服を着て自転車のヘルメットをかぶった30人ほどの母親が、連邦裁判所の外で腕を組みながら「連邦部隊は去れ!ここには母親たちがいる!」「私たちの子供に手を出すな!」と叫んでいる。
政府部隊が催涙ガスと閃光発音筒を使ってデモ隊を解散させる前、連邦裁判所の前に、母親のグループが数時間立っていた。
オレゴン州当局からの批判が上がっていたにもかかわらず、トランプ政権の指示で、連邦保安局の特殊部隊や国境警備隊など、連邦政府の複数の組織の治安部隊がポートランドに配備されたことにより、街では緊張が高まっている。
連邦政府の部隊員らは所属部隊名を示さない車両で街を走り回り、正当な理由もなく人々を拘束することで公民権を侵害している、とデモ参加者らは訴えている。
「ママの壁」を先導したべヴ・バーナムさん(35)は19日、「私たちは、平和な市民の抗議する権利を守りたいのです」とBuzzFeed Newsに語った。
数日前、武装した2人が覆面の連邦部隊の車両から出て、1人のデモ参加者を拘束して車内に引きずりこむ動画がSNSで拡散した。2人の母親でもあるバーナムさんはこの動画を見て憤り、17日の夜にFacebookのイベントページを作成して参加者を募ったという。
「多くの人がニュースで読んだり見たりしたように、デモ参加者の多くは(正当な理由も無く)傷つけられています」とバーナムさんはFacebookのイベントページに書き、18日のデモに加わるよう他の母親らに呼びかけた。
「そして最近、デモ参加者は身元のはっきりしない連邦部隊によって車で連れ去られ、公民権を剥奪されています」
「私たち母親は、しばしば過小評価されます」
「しかし私たちは、信用されればより強くなれます。そこでみなさんにお願いです。私たちと一緒に立ってくれませんか?『ママの壁』を作るのに協力してもらえませんか?」
集まった母親らには「デモと関係のない、スーパーに向かうだけの一般人のような格好」をしてもらったとバーナムさんはBuzzFeed Newsに語った。しかし、その後バーナムさんらも、催涙ガスを浴びた。
17日に発表されたオレゴン州司法省の声明によると、オレゴン州司法長官は「ポートランドのダウンタウンの路上で、連邦部隊は取り締まりの範疇を超え、平和的なデモ参加者に危害を加えたり脅したりしている」とした。
ドノバン・ラベラさん(26)も負傷したデモ参加者の1人だ。ドノバンさんは今月初め、殺傷能力のない弾丸で頭を撃たれた。顔面と頭蓋骨の骨折で入院したと、母親のデジレー・ラベラさんがオレゴン公共放送に話した。
その後デジレーさんは、警察の暴力への抗議活動に加わり、現在SNSで拡散している動画では、息子のドノバンさんの状況を警官に訴えている様子が写っている。
バーナムさんを含む一部の母親は、これまでにデモに参加したことがなかった。しかし、正当な理由も無く市民を拘束しているように見える連邦政府部隊の動画を見て、このデモに参加することを決意したと語った。
「その話を聞いた時、私たちが住んでいる場所は一体どこなんだ?という気持ちになりました」と、元教師で「ママの壁」メンバーのジュリア・ピーティーさん(63)はBuzzFeed Newsに語った。
デモの動画や写真を投稿したピーティーさんは、デモ参加者や母親らに催涙ガスが噴射される前にデモ隊から抜けたそうだ。
メキシコ系アメリカ人のバーナムさんとピーティーさんのどちらも、黒人の参加者の声から注意をそらすことはしたくなかったと話す。
バーナムさんは、自分が「白人に見える」という「特権」を利用して、警官や連邦部隊が狙う可能性の高い、他の抗議者を守りたいのだという。
「SNSを見ると、(自分たちに対して)警官が躊躇していたとわかります」と、バーナムさんは振り返る。
「警官のボディーランゲージで分かりました。私たちの前にいた2人の警官は、『できれば撃ちたくない』と言っているように見えたんです」
「ママの壁」は、連邦裁判所の外に数時間立ちはだかった。午後10時45分頃、連邦部隊は閃光発音筒、警棒、催涙ガスを使って母親らを解散させた。
参加者の一部は病院で治療を受けることになった。しかしバーナムさんによると、逮捕された人はいなかったそうだ。
「まさに、怒りが昇華した瞬間でした」。そう語るのは、「ママの壁」を目撃したCAAR(急進右翼分析センター)の博士研究員、アレクサンダー・リード・ロス氏(37)だ。
「話題になる抵抗というのは、ありそうもない場所から起こるのです」とロス氏。
「抗議心は、人間の精神の一部として根付いています。あなたが駆り立てられているからこそ、あなたの母親、隣人、友人も抗議に参加してくれるのです」
バーナムさんは、今後も「ママの壁」を作るため正式なFacebookグループを作成した。7月26日、母親らは再びデモに参加し、黄色の服を着てひまわりを配る予定だ。
「抗議に参加する人を守る必要がなくなるまで、私たちは活動を続けます」とバーナムさんは話した。
この記事は英語から翻訳・編集しました。