「黒人にトイレで襲われた」虚偽の申告で女を逮捕。性暴力の冤罪による検挙、黒人は白人の約8倍

    逮捕・起訴された女は、20代後半の黒人男性に襲われたと2度も主張していた。米国に住む黒人が性暴力の冤罪で検挙される確率は、白人に比べて約8倍も高いというデータも存在するという。

    米カリフォルニア州のスタンフォード大学で4月15日、虚偽の性暴力被害を申告したとして、同大学に勤める25歳の女が逮捕・起訴された。

    起訴されたのは、ジェニファー・アン=グリーズ被告(25)。ビジネス特化型SNS「LinkedIn」の情報によれば、被告は同大学の居住サービスセンターで勤務していた。

    被告は、大学内でレイプ被害に遭ったと虚偽の報告を行なって病院で診察を受け、被害者補償金を申請。さらにキャンパス内に注意喚起の警報を流させたなど、偽証罪などで起訴された。

    地元の地区検察局は、以下のように発表した。

    2022年8月9日、被告は同地域の病院に勤める看護師に対し、大学キャンパス内の倉庫にあるトイレで襲われたと報告。その際、犯人の特徴は、20代後半の黒人男性だと語っていた。これが最初の虚偽報告だったという。

    2カ月後の10月7日、被告はスタンフォード大学病院に勤める看護師に対し、腕を掴まれ、地下倉庫に引きずられて襲われたと証言。その際も、犯人は20代後半の黒人男性と主張し、身長180センチで痩せ型だったと詳しく話したという。これが2度目の虚偽報告になる。

    また、被告は襲われたことで妊娠し、流産したとも主張していた。

    いずれの件でも、被告の性暴力に関する法医学検査は今後の同種の犯罪を防ぐためにも最優先で行われた。被告が看護師に話した内容と検査の結果は、一致しなかった。また、被告は妊娠もしていなかったという。

    地元サンタクララ郡のジェフ・ローゼン地区検事は事件の発表文で「まれに見る、深く破壊的な犯罪」とコメントした。

    「冤罪の疑いをかけられた人たちに心が痛みます。また、学生たちは授業に向かう途中で、(虚偽報告にあったレイプを含む)何か悪いことに巻き込まれるかもしれないと、心配していたと思います。そんな学生たちにも心が痛みます」

    「性暴力の被害を申告しても信じてもらえないのではないかと感じる、実際の被害者のかたにも寄り添いたいと思います」

    虚偽報告により、キャンパス内に注意喚起の警報が出されたため、地元メディアも報道。多くの学生が不安を感じたという。

    同大学の公安課も、報告書を発表した。

    「実際に性暴力を受けたことがあるかた、警報から恐怖や警戒心を抱いた学生、教職員にとって、今回の虚偽報告はとても有害だと思います」

    「今回の虚偽報告や、結果的に職員が逮捕されたことは、極めてまれな行為であるのも強調してお伝えしたいです」

    同大学は声明文の中で、被告との雇用関係を見直すといい、被告は現在休職中であると記している。

    全米で発生した性暴力事件のデータをまとめた「National Sexual Violence Resource Center」によれば、全米の女性のうち81%が生涯になんらかの形でセクシュアル・ハラスメントや性暴力を経験しているという。

    一方、同団体によると、すべての性暴力の報告のうち2~10%を虚偽の報告が占めているという。

    米国内の免罪事件をまとめた「National Registry of Exonerations」のデータは、黒人が性暴力の冤罪で検挙される確率は、白人に比べて約8倍も高いと発表している。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:髙島海人