間違って違う家のベルを鳴らし…16歳の少年が住人に頭を撃たれる。抗議活動が拡大

    米ミズーリ州で4月13日、親に頼まれて弟たちを迎えに行った16歳の少年が、誤って訪ねた家の住人に頭と腕を撃たれる事件が起きた。検察官は事件に「人種的な要素」があると指摘している。

    米ミズーリ州で4月13日、少年が誤って訪ねた家の住人に頭を撃たれる事件が起きた。

    ラルフ・ヤールさん(16)は、親に頼まれ、カンザスシティーの住宅に双子の弟たちを迎えに行った。

    ところが住所を間違えてしまい、1ブロック離れた別の住宅の呼び鈴を鳴らした。住人のアンドリュー・レスター被告(84)は、ヤールさんの頭と腕を撃ったとされている。

    ヤールさんのおばが立ち上げた支援ページによると、ヤールさんは撃たれた後、近隣住宅に逃げ込んだ。3軒目でようやく中に入れたものの、手を挙げて地面に伏せるよう言われたという。

    ザカリー・トンプソン検察官は4月17日、アンドリュー・レスター被告を第1級暴行罪と武装犯罪で訴追したと発表。保釈金は20万ドル(約2700万円)だ。被告は事件後、24時間拘束されたのち釈放されており、19日の罪状認否では無罪を主張した。

    また検察官は、事件には「人種的な要素」があると指摘した。カンザスシティー警察のステイシー・グレーブス署長は、被告の人種や性別を明かさなかったが、ヤールさん一家の弁護人らは、被告は白人男性だと述べている。

    4月16日、事件の内容、そして被告の釈放に抗議する何百もの人々がカンザスシティーに集まった。

    A massive crowd has amassed in front of the white man's home who attempted to murder 16 year old Black boy Ralph Yarl in Kansas City Missouri

    Twitter: @KCDefender

    被告の家の前で「立ち上がれ、戦え」と唱える人々

    4月18日には、ヤールさんが通う学校の生徒たちも集い、保護者や近隣住民と一緒に行進した。抗議の様子はテレビなど主要メディアでも広く報じられた。

    Hundreds of Staley High School students and staff walked out today in support of their classmate Ralph Yarl https://t.co/102IkC9x2G

    Twitter: @Phil_Lewis_

    「ラルフ、愛してる」と唱える生徒たち

    事件はSNSでも拡散され、俳優のハル・ベリーヴィオラ・デイヴィスなども、ヤールさんの写真を添えて被告に対する懲罰を求める投稿をしている。

    おばによると、ヤールさんは「体は元気」だが精神的に傷を負っているという。「彼が耐え、生き延びなければならないトラウマは、想像を絶するものだ」と支援ページに書いた。

    銃規制に関して、ミズーリ州はアメリカで最も寛容な姿勢をとっている。無免許での銃の販売元に対する身元調査なども義務付けられていない。権利擁護団体Everytownによると、同州では銃暴力に関連する死亡数が年間平均1351件にのぼる。

    2016年に「スタンド・ユア・グラウンド法(正当防衛法)」が制定されて以来、同州では銃による死亡が平均で8%増加したと、医学雑誌「Journal of the American Medical Association」が掲載した。

    弁護人らが共同で出した声明によると、ヤールさんの家族にジョー・バイデン米大統領から「ヤールさんの回復と正義を願う」電話があったという。弁護人らは声明に、次のように書いた。

    「武装していない黒人に対する銃の暴力を、止めなければならない。我々の子どもたちには、安全だと感じていてほしい。『追われている』と感じるのではなく。これは正義への1歩であることは確かだが、ラルフ(ヤールさん)が完全な回復へと向かう間、我々は戦い続ける」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:髙橋李佳子