アメリカ・テキサス州で昨夏、ヒスパニック系の13歳の少年が警察に射殺された事件。警官の不起訴が、2月16日に決定した。
当局は2月17日、関係者からの要望を受け、少年が射殺された日に警官が身体に装着していたボディカメラの映像を公開した。
しかし、映像には警官の説明と食い違っている箇所が見られ、波紋を呼んでいる。
少年は2022年6月3日、ステファン・ラモス警官によって射殺された。
事件当日の深夜、少年は友人2人と盗難車を運転していた。その後、盗難車を追跡していた警官が、少年の運転していた車を追い詰めた。
サンアントニオ警察の発表によると、少年がパトカーに向かって車を前進させた際、ラモス警官は「運転手が車を凶器にし、パトカーの運転席側に立っていたエスピノザ警官を轢き殺すつもりに見え、銃を撃った」と供述しているという。
しかしボディカメラの映像よって、少年が撃たれた時、ドアの前に立ってたとされるエスピノザ警官が、実際はパトカーの車内にいたことが明らかになった。
盗難車に乗車していた友人も、少年が撃たれた際「警官はパトカーから出てこなかった」と証言している。
警察側は当初、「容疑者がパトカーに向かって勢いよく突進した」と説明していたが、ボディカメラとドライブレコーダーの映像に強い衝動は記録されていなかった。
当局は5カ月間に渡り、ボディカメラの公開を拒否していた。
サンアントニオ警察では、テキストメッセージを通して、誰でも匿名で情報を提供できるシステムがある。
少年が射殺される8時間前、近隣住民とみられる人物から、少年が運転していた盗難車に関する情報が、サンアントニオ警察に届いていた。
匿名の情報提供者は、「車を運転する人物は13歳で、危険人物だ」と説明し、少年が運転していた盗難車の写真を添付していた。この情報は、サンアントニオ警察の警官にも共有された。
検察は、ラモス警官が少年を撃ったのは「合理的だった」と結論付けた。検察が提出した報告書には、ラモス警官が不起訴になった理由がこう説明されている。
「ラモス警官は、エスピノザ警官がドアを開き、盗難車がパトカーに向かって前進しているのを目撃していた」
「したがって、ラモス警官が、エスピノザ警官がパトカーの外に立っていると思うのは妥当であり、エスピノザ警官が死の危険に迫られていると思うのは合理的であると判断する」
「盗難車の運転手が、当時13歳の未成年であったことも事実である。この事実は悲劇ではあるが、当時ラモス巡査は運転手の年齢を知らなかった」
しかし勤務開始時に警官に共有された情報には、盗難車を運転する人物が、13歳であるという情報が含まれていた。
ラモス警官は2021年3月にも職務中に別の人物を射殺、不起訴になっている。射殺された人は当時、精神的な病気を患っていたという。
少年の母親は彼が射殺される2週間前に、娘を同じく銃撃で亡くしている。
母親は、BuzzFeed Newsの取材に対し、少年の人柄をこう語っている。
「彼は愉快な性格で、愛情深い兄でした。9人の兄弟を学校に行かせるため、よく私の手伝いをしてくれていました」
ボディカメラの映像には、少年が撃たれた際、友人とみられる人物から、少年の安否を心配する声が収められている。
ネットでは、「少年が盗難車に乗っていたとはいえ、射殺はやりすぎだ」「この警官がこの少年以外にも、人を殺しているのには違和感を覚える」といった声があがっている。
この記事は英語から翻訳しました。翻訳:オリファント・ジャズミン