足の爪が剥がれたのはドクターフィッシュのせい? 皮膚科医の間で議論に

    学術誌「JAMAダーマトロジー」では、爪の脱落の原因はドクターフィッシュにあるとされているが、ある専門医は、足に合わない靴を履いていたせいだろうと指摘している。

    ドクターフィッシュの群れに角質を食べさせるフィッシュ・ペディキュアは、普通なら単なるバケーション中の斬新な体験にすぎない。だが、それが原因で女性の爪がはがれ落ちた可能性があると指摘されている。

    フィッシュ・ペディキュアでは、ガラ・ルファ(ドクターフィッシュ)という魚たちが群れるぬるま湯の入った水槽に足を浸す。この小さな魚たちは、普段なら天然の生息環境にいるプランクトンを食べているが、周りにプランクトンがいない場合は、かわりに足の角質をついばんで満足する。彼らにはおいしいのだ。

    この小魚たちが実際に角質を取り除いているのかについては、それを裏づけるたしかな証拠が存在する。地中海沿岸地域で旅行者向けアクティビティとして人気を博している。だが、フィッシュ・ペディキュアに関しては、今回の爪の脱落のほかにも、すでに安全性をめぐる多くの疑問が噴出してきた。

    学術誌「JAMAダーマトロジー」で報告された症例では、ある女性が半年にわたって経験している足の爪の問題が、ドクターフィッシュと関連づけられている。この症例を報告したシャリ・リプナー医師によれば、患者は爪甲脱落症と診断されたという。これは、爪の成長が一時的に止まった結果、爪と皮膚のあいだに隙間ができ、爪がはがれ落ちる症状を指す医学用語だ。

    リプナーによれば、この女性患者には、そうした症状の原因となりうる外傷の経験はなかったという。普段とは異なる唯一の出来事が、フィッシュ・ペディキュアだった。そのふたつがどうつながるのか、正確な因果関係は特定できていないものの、リプナーはこう結論づけている。

    「爪の構成部位を多数、魚に噛まれた直接的な外傷により、爪甲の成長が停止した可能性が高い」

    「私の知るかぎり、爪甲脱落症のうち、フィッシュ・ペディキュアに関連づけられる症例はこれが最初だ」とリプナーは書いている。

    だが、別の皮膚科医は、リプナーの結論に異を唱えている。ノースカロライナ州の皮膚科医の資格を持ち、爪を専門とするクリス・アディグン医師は、BuzzFeed Newsの取材に対し、その女性患者の症状は「後方陥入爪」と呼ばれる別のものではないかと話している。

    後方陥入爪が起きるのは、長時間にわたって爪に過度の圧力がかかり、爪の成長が妨げられたときだ。これにより、爪が多層状になり、見た目は厚くなる。その層が脱落することがある。

    「きつい靴を履く女性で、きわめて頻繁に目にする症状です」とアディグンは述べる。

    さらにアディグンは、実際に患者を診てみなければたしかなことは言えないとしながらも、フィッシュ・ペディキュアが爪甲脱落症を引き起こした可能性は低いと述べている。爪甲脱落症は通常、基礎疾患や化学療法が原因となる。

    「たいていの場合、フィッシュ・ペディキュアはおそらく無害ではないかと思います」とアディグンは話している。「爪産生組織は爪の下にあるので、(魚が)そこに届くことはあり得ません」

    「これは警戒のしすぎだと思います」とアディグンは続けた。「その女性は、足に合わない靴を履いていたのではないでしょうか」

    爪脱落の原因であるかはともかくとして、フィッシュ・ペディキュアにリスクが伴うことは明らかだ。フィッシュペディキュアは、米国では少なくとも10州で禁止されているほか、欧州の一部でも禁止されている。

    使用前に消毒されたり、使用後に廃棄されたりする普通のペディキュア用具とは違い、魚が病気や細菌を人から人へ運ぶのを防ぐ手段はない。

    リプナーの症例報告によれば、フィッシュ・ペディキュアにより細菌感染した症例は、これまでに複数あるという。また、スパで飼育されている魚が細菌を保有している場合もあることが、複数の研究で明らかになっている。

    とはいえアディグンによれば、平均的なスパでおこなわれているペディキュアのほうが、おそらく害が大きいだろうという。というのも、表皮を切りとることにより、不要なダメージが生じるからだ。

    「爪のまわりにそうした小さな傷ができると、感染のリスクがきわめて高くなります」とアディグンは話している。

    「魚に足の角質を食べさせるよりも、そのほうが、はるかにリスクが大きいでしょう」

    この記事は英語から翻訳されました。翻訳:梅田智世/ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan