飼い主に取り残された犬、爆撃を生き延びた鳥…。ウクライナで動物保護に尽力する獣医夫妻「これは私たちの使命」

    ロシア軍のウクライナ侵攻が始まってから約2カ月。ウクライナで獣医をしているストヤノフ夫妻は、街に取り残された動物を助けるための活動を続けている。

    バレンティナ・ストヤノフさん(28)とレオニード・ストヤノフさん(34)夫妻は、ウクライナで動物病院を営んでいる。

    共に獣医の二人は、インスタグラムで動物たちとの生活についても発信している。しかし、ロシア軍のウクライナ侵攻により、2人の生活は大きく変わった。

    バレンティナさんは、トラックの荷台に何百匹分もの動物たちの食料を積んでいた。いつ銃弾が飛んでくるかわからないため、防弾チョッキを着て作業をしていた。

    「毎日が本当に大変です」。レオニードさんと共同のインスタグラムアカウントに投稿した動画で、バレンティナさんはそう語っている。

    ロシア軍のウクライナ侵攻が始まってから、ストヤノフ夫妻は何百もの動物たちの命を救ってきた。

    飼い主が最前線に動員された、盲目のハスキー犬。飼育されていた市場の爆撃を生き延びた鳥たち。他にも、カメやヘビ、ヤモリ、ねずみ、チンチラ、うさぎ、ハリネズミなどだ。

    また夫妻は、鍵のかかったアパートメントに警察と出向いては、部屋にとり残されたペットを救出していた。近隣国へ避難する際に必要な書類の準備が間に合わず、飼い主たちがその場に置いていってしまった動物たちだ。

    他には、街中でうろついてる動物たちも保護しているという。何匹かは「自分たちの営む動物病院のドアの下に放り出されていた」と、バレンティナさんは語った。

    ロシア軍によるウクライナ侵攻は、すべてを破壊している。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によると、ロシア軍が侵攻を開始した2月24日から4月17日までの間に、述べ2000人以上のウクライナ市民が殺害され、2800人以上が怪我を負った。

    また、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、4月17日までに490万人以上が国外避難を迫られた。

    それだけにとどまらず、人々の愛するペットや動物たちにも大きな打撃を与えている。

    なぜ夜でも空が明るく光り、爆撃音や建物の崩壊音が鳴り響き、人々が街から去っていくのか、動物たちは知らない。

    夫妻はボランティアと協力し、街に残された動物たちを救出するネットワークの一翼を担っている。戦火の動物保護シェルターに食料を届け、動物たちを国内外に移送させるための複雑な手続きを受け持つのが、主な仕事だ。

    ウクライナのボランティアグループは定期的に連絡を取り合い、SNSを駆使して支援を求めたり提供したりしている。多くの場合、遠く離れた地から連絡があるという。スペインの人から申し出がきたこともあった。

    しかし、この活動は大きな代償を伴う。保護シェルターに食料を届けようとした3人のボランティアは、最も早い戦争の犠牲者となった。

    ハリコフ北部に位置する動物園「フェルドマン・エコパーク」では、3人の従業員が被害にあった。1人は怪我を負い、2人は行方不明だ。

    夫妻にとって、2022年がこのような年になるとは想像もしていなかった。動物園やサーカス団から保護した動物たちを、できるだけ野生に近い環境で飼育するという新たなプロジェクトを立ち上げる途中だった。

    BuzzFeedはメッセージアプリを通してバレンティナさんに現状を聞いた。現在、夫妻は250匹以上の動物に餌をあげ、数十個のケージを掃除し、20箇所以上の犬猫の保護施設を支援する日々を送っているという。

    数週間前、バレンティナさんは、赤ちゃんサルのトスヤと共に食事をする動画をインスタグラムに投稿した。トスヤはネット上の人気者になった。

    しかし、トスヤはひどい下痢に苦しんでいる。彼は持病で胃炎、膵炎、肝臓の問題を抱えていたが、近くで聞こえる爆発音のストレスで持病がさらに悪化していると、バレンティナさんは言う。

    トスヤの食欲は落ち、爆発音が鳴っていない時は寝てばかりいるようになった。

    「トスヤは、というよりトスヤの体は、このような状況にとても疲れています。私たちと同じように」。バレンティナさんはインスタグラムでそう呟いた。

    夫妻はインスタグラムのストーリーをほぼ毎晩更新し、2人を心配するフォロワーに安否を伝えている。

    「大丈夫」と言ってはいるものの、その表情からは疲れが滲み出ている。

    「このような戦争が1カ月以上も続くなか、24時間毎日、休まずに自分の仕事をし続けなければならないのは大変です」と、バレンティナさんは語った。

    夫妻は動物たちの保護に力を注いでいるものの、地域によっては砲撃に行く手を阻まれ、動物たちのもとに辿り着くのが間に合わない。

    ウクライナの動物保護団体「UAnimals」によると、先日、キーウ郊外のボロディヤンカ避難所では300匹以上の犬の死骸が発見されたという。

    それでも、夫妻は動物の命を助けるために、力を尽くしている。

    4月14日にインスタグラムに投稿した約2分の動画で、ウクライナの現状を伝えつつ、夫妻は最後にこう語った。

    「私たちの使命は、今でも変わっていません。動物の世界を救うために、命を捧げます」


    この記事は英語から編集・翻訳しました。翻訳:吉谷麟