人種差別撤廃を訴えるデモ隊に、夫婦が銃を向ける。動画がSNSで拡散

    米ミズーリ州セントルイスで、私有地に侵入したデモ隊に対し、白人夫婦が銃を向ける動画が拡散された。「私たちは殺され、家も燃やされ、なすすべはない、と本気で思いました」と夫婦は語っている。警察調書によると、デモ隊の一部は無理やり扉を破壊して侵入したという。

    6月28日、米ミズーリ州セントルイスで、ある出来事をカメラが捉えた。中高年の白人夫婦が家から出て、デモ参加者たちに銃を向けたのだ。

    その日、デモ隊はライダ・クルーソン市長の自宅に向かって行進していた。

    アフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイド氏が警察官に押さえられて死亡した事件を受け、セントルイスでも、住人たちによる警察改革が訴えられていた

    市長は6月26日にフェイスブックのライブ配信で、警察改革を求める人たちの名前と住所を読み上げた。当日の午後に市長はこの行為を謝罪したが、デモ参加者たちは市長の辞職を要求していた。

    動画では、夫婦がデモ参加者に向かって叫び、銃を向けている。この投稿は瞬く間に拡散され、7月3日時点で約1600万回も再生されている。

    A couple has come out of their house and is pointing guns at protesters in their neighborhood #StLouis #lydakrewson

    ツイート:「ある夫婦が自宅から出てきて、デモ行進者に銃を向けています」

    地元の報道機関は、この夫婦をマーク・マクロスキー氏(63)と、パトリシア・マクロスキー氏(61)だと特定した。

    夫妻が中庭で夕食の席についたとき、デモ参加者たちが私有地に入り込み、近づいて来るのが聞こえたという。地元ニュース局のインタビューで、マーク氏はこのように語った。

    「誰かが門を力ずくでこじ開けたのがわかりました。私は立ち上がって、『ここは私有地だ、帰りなさい』と伝えました」

    デモ行進が起きた通りは私有地だったと、地元テレビ局も確認している。

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    youtube.com

    マーク氏のインタビュー(英語)。

    マーク氏は銃を手に家を出て、「ここは私有地だ。戻りなさい。私有地なんだ。さあ、立ち去ってくれ」とデモ参加者に告げた。動画にもその様子がおさめられている。

    「その時点で、誰もが激怒していました」と、マーク氏は語る。デモ参加者たちは防弾チョッキを着込んでいて、銃弾の入ったピストルを取り出した者もいたそうだ。

    マーク氏は当時の様子を、このように振り返る。

    「命の危機を感じました。家や事務所、飼っている犬の命まで脅かされました」

    「まるでバスティーユ襲撃のようでした。私たちは殺され、家も燃やされ、なすすべはない、と本気で思いました」

    当時の集団は「たくさんいて、恐ろしかった」と、マーク氏は話す。デモ参加者は、夫妻の方に向かってきていたという。

    BuzzFeed Newsが入手した警察調書によると、セントルイス都市圏警察は、この夫婦を犠牲者だと認識していた。

    調書によると、夫婦は通りから大きな騒音を耳にして、警察に通報した。また『立ち入り禁止』『私有地』と表示されている鉄製の門扉を、大人数が無理やり破壊する姿を見たという。

    夫婦は、デモ参加者たちから卑猥な言葉や脅しの言葉を投げかけられたと主張している。複数のデモ参加者が武装しているのを見て、銃を手に取ったそうだ。

    ミズーリ州の銃規制法は、州によって規制が異なる米国内でも寛大だ。素性調査や許可証なしで、銃を所持できる。

    銃暴力防止団体で広報を担当するニコ・ボクール氏は、今回の出来事についてBuzzFeed Newsに語った。

    「法に従って行動するデモ参加者に対して、個人が脅迫したり暴力をふるったりするといった出来事と、今回の出来事は違います」

    「武装する権利が認められているにしても、意見の相違があるという理由で、嫌がらせや脅迫、銃を向けるなどの行為は許されません」

    「このように無責任な銃の所有は、この国でとても多くの人々の死を引き起こします」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。