米軍の通訳を務めたアフガニスタン人男性はいま、タリバンの危険から現地にいる家族を必死に救おうとしている

    「悪夢です。拷問や処刑をされることなく、家族が生きのびる方法を模索しています」

    アフガニスタンで反政府勢力のタリバンが8月15日、首都カブールを制圧。20年前にアメリカの支援によって誕生し、日本を含む各国が支援してきたアフガニスタン政府が崩壊した。

    アメリカ・ダラスに住むキスマト・アミンはかつて、通訳としてアフガン駐留米軍で働いていた。今もアフガニスタンにいる家族の身を案じて、何日も眠りにつけていないと語る。

    住んでいるアパートで、真夜中に目が覚める。アミンさんはその度に、繰り返し実家に電話をかけるという。

    「誰も怪我していない?」「みんな無事?」

    大学を出た2人の姉妹をはじめ、アミンさんは家族全員のことを気にかけている。しかし特に、2011年から1年以上にわたり通訳を務めていた兄のことが心配だという。

    アミンさんも通訳の仕事を介して2017年に特別移民ビザを取得し、その後まもなく米国に移住した。

    しかし、兄はそれほど幸運ではなかった。最初のビザ申請は却下され、その後も再申請を行った。

    彼はBuzzFeed Newsに、身の危険を感じると語った。タリバンが占拠したジャララバードにいる家族、そして周辺の住民はみな、彼が米軍で働いていたことを知っているからだ。

    「悪夢です。拷問や処刑をされることなく、家族が生きのびる方法を模索しています。集中できません。食欲がわきません。仕事が手につきません」と、アミンさんは辛い胸中を明かした。

    家族はできるだけ家に身を潜め、必要最低限、食料調達のために外出しているそうだ。母親は、誰かが家を捜索しに来た場合に備え、兄に関するすべての書類を隠した。

    「これは私たちにとって大きなリスクです」と、アミンさんの兄も語る。彼は身の安全を考慮し、匿名でのインタビューに応じた。

    アメリカがアフガニスタンに介入して約20年。アメリカ政府に関わってきた何千人という他のアフガニスタン人と同様、アミンさんの家族は脅威に直面している。

    バイデン政権は、特別ビザを受け取る最終段階にある約2000人のアフガニスタン人協力者とその家族の、空路による国外脱出に手を差し伸べている。

    しかし、今年の時点で、2万人以上のアフガン人協力者とその数万人の家族が、申請の処理待ちとなっている。

    移民支援団体は、長いこと特別ビザ発給のプロセスを批判している。ビザの発給が暗黙のうちに約束されていたとしても、政治的およびお役所仕事的な障害によって承認が妨げられ、結果アフガニスタン人の命が危険にさらされる場合がある。

    これらの団体は、ビザの承認が完全に降りていない個人を含め、暴力的な報復の危険に直面しているアフガニスタン人を今すぐ避難させるよう、バイデン政権に呼びかけている。

    アミンさんは、米軍を手助けした通訳者も優先されるべきだと述べた。

    「バイデン政権には、差し迫った危険にさらされている数万人のアフガニスタン人協力者とその家族を保護するという約束を守るために、早急に行動してほしい」と、国際難民支援プロジェクト(IRAP)で政策責任者を務めるスニル・ヴァルギース氏は語る。

    「ビザを受け取るためにすべての規則に従い、すべての要件を満たし、何年も待ち続けている依頼人たちから、絶望的なメッセージが届いています。手遅れになる前に、アメリカへの避難の取り組みを大幅に拡大する必要があります」

    IRAPは18日、ビザ待ちのアフガニスタン人申請者を支援するために、国務省に一連の緊急請願書を提出した。

    同団体が発表した声明によると、アジジさんという依頼人の1人は、最近タリバンによって5人の通訳者が殺害されたことを聞いたと話した。

    「いつ私の番が来るかはわかりません。ですがタリバンは私を見つけるでしょう。自分自身だけでなく、すべての仲間が安全を保ち、アフガニスタンから生きて避難し、安全な場所に住むチャンスが見つかることを祈っています」

    「仲間に関する悪いニュースは聞きたくありません...彼らは、アメリカ政府とアフガニスタン政府の双方に、何年にもわたって奉仕してきました」とアジジさんは声明で語った。

    バイデン政権は、アメリカを支援した人々の救出に専念しており、アメリカへのビザ申請プロセス中にあるアフガニスタン人を受け入れることに前向きな国との交渉を進めていると伝えられている。

    バイデン政権はまた、アメリカの関連団体で働いたことがあるアフガニスタン人向けに、難民申請の窓口を開いた。

    国務省の報道官はBuzzFeed Newsに対し、「米政府は、往々にして自身や家族に対する大きなリスクを冒してまでも、米軍や外交官の職務遂行を手助けしてきた人々の支援を約束すると長いこと明言してきた」と語った。

    「米政府は、手助けをしてくれた人々を確実に助けられるよう、あらゆる不測の事態に積極的に対処している」

    18日、統合参謀本部のマーク・ミリー議長は、カブールから人々を避難させる取り組みを支持し、この取り組みは米軍史上2番目に大掛かりなものになると話した。

    当局はまた、タリバンがアフガニスタンを掌握するスピードを誰も予測できなかったと述べた。

    しかし、アミンさんにとって唯一重要なのは、家族を皆無事に脱出させる方法だ。最近、アミンさんは兄に、自分が米軍のために働いたことを口外しないよう伝えた。

    アミンさんは家族に対し、今後数週間のうちに他国に避難する準備をするよう促したという。

    8月初旬、兄のビザ申請の再提出を手伝った。兄が米軍と働いたのは18カ月で、「米軍との2年間の協力」という要件が承認に支障をきたす可能性がある。

    兄の最初の申請は、言語試験に落ち、仕事を失ったために却下されたとアミンさんは明かした。

    BuzzFeed Newsが入手した申請書には、アミンさんの兄と仕事をしていた一等曹長からの、称賛に満ちた推薦文が書かれていた。

    「私個人の見解では、(アミンさんの兄の)米国政府、米国陸軍、そして私のチームへの支援は、揺るぎないものであった」

    「クナルでの彼の仕事は、彼自身のリスクなしでは出来なかった。何百人という人々が、彼が多国籍軍と一緒に毎日働いている様子を目撃しており、その中には間違いなく地元住民にまぎれた反対勢力のメンバーがいた」

    「(アミンさんの兄は)この事実に気づいていたが、彼のパフォーマンスが落ちることは決してなかった」

    「彼の健全な暮らしに対する潜在的なリスクがあるにもかかわらず、強い義務感とアフガニスタンの繁栄を見たいという願望から、彼は懸命に働き続けている」

    アフガニスタンでアミンさんと仕事をし、後に彼がアメリカに渡る手助けをした、米陸軍少佐でレンジャーのマシュー・ボール氏は、アメリカにはアミンさんの兄のような人々を助ける責任があると述べた。

    「アミンさんの兄の状況について私がとても腹を立てているのは、これは完全に防ぐことができたと思うからです」

    「現在、すべての特別ビザ申請者を避難させる必要性について多くの議論がなされており、それは真実ですが、根本的な問題は、発給プロセスがもう何年も機能していない点にあります」と、ボール氏はBuzzFeed Newsに語った。

    「アミンさんの兄は、10年近く前に米軍のために働くことで命の危険を冒し、2014年に初めて特別ビザを申請しました。2021年になってもビザを待っていることが間違いです」

    家族のために次の手を計画するなか、アミンさんは、身の回りが危険だらけだと気づく。彼は一人になって泣くために、ダラス地域の湖に行くようになったと語る。

    何が起こっても、面倒を見る。そう約束した家族のために、自身のエネルギーを蓄えている。

    「私がいつもそばにいる。みんなに希望を与える。みんなを助ける」と、彼は深夜、電話で家族に伝えた。

    「手を尽くしている。みんなを助け出す。絶対に悪いことは何も起こさせない。なんとか解決策を見つけるから」

    この記事は英語から翻訳・編集しました。