終身刑に服する女性たちの肖像と、彼女たちの物語

    「刑務所に入れられて、今年で27年目になります。恐怖と孤独、痛み、失望にずっとさいなまれています。いまではもう誰からも忘れ去られてしまいました」

    リンダは1992年、43歳のときに「30年から無期」という判決を受け、収監された。現在は70歳になる。

    サラ・ベネットは以前、刑事被告人の弁護士を務めていた。彼女は、刑務所の中で終身刑に服する女性たちに「人間の顔」を与える手段として、写真という手段を選んだ。

    ベネットは、弁護士として活動する20年の間に、多くの女性が鉄格子の中での長い時間を経て、完全に更生する様子を目撃した。だが、こうした女性たちの大半に、仮釈放が認められることはなかった。

    それは、彼女たちの更生が不十分だからではなく、数十年前に下された不十分な決定のせいだった。

    こうした女性たちの物語に人々の注意を向けるために、ベネットは彼女たちの写真を集め、それぞれに刑務所での生活について語ってもらうようになった。

    Looking Inside: Portraits of Women Serving Life Sentences」(内側を見る:終身刑に服する女性たちの肖像)は、この取り組みの集大成だ。そこには、現代アメリカの刑事司法制度の状況が力強く浮き彫りにされている。

    Looking Inside」は、2019年9月にニューヨーク市のブルックリンブリッジパークで入場無料で開催された屋外写真フェスティバル「Photoville」で展示された。

    9月12~22日の期間中、スタッフを務めた女性たちのなかには、この写真集の中に登場し、その後出所した数人も含まれていた。

    ベネットは、自身が「Looking Inside」から選んだ写真をBuzzFeed Newsに提供してくれた。あわせて、こうした女性たちにとって終身刑という宣告とはどのようなものなのかについても語ってくれた。

    こうした女性たちが服している刑について、少し話していただけますか?

    サラ・ベネット(以下、SB):この女性たちは、ニューヨーク州にある厳重警備の刑務所で終身刑に服しています。刑が終わるころになると、受刑者らは、警備レベルが中程度の刑務所に移されます。年配の女性の何人かは、そこで撮影しました。

    終身刑に服しているからといって、必ずしも永久に刑務所から出られないわけではありません。たとえば、「25年から無期」という判決を受けた場合、25年の刑期が終わると、仮釈放申請が可能になります。ですが、過去のほとんどの例では、申請しても何度も却下されています。

    「20年から無期」の判決を受けたアンドレアは2001年、46歳のときに収監された。現在は64歳だ。

    私が写真を通して伝えたいのは、刑務所で25年、いや10年も過ごせば、人は大きく変わるということです。けれども、この変化が認識されることは決してありません。彼女たちが仮釈放を申請しても、過去に犯した罪によって25年間収監されたあげくに、その罪を理由に申請を却下されます。

    私が写真で伝えようとしているのは、こうした女性たちの生まれ変わりつつある姿、生まれ変わった姿です。

    そうした女性たちはどんな罪を犯したのでしょうか?

    SB:殺人です。彼女たちは全員、殺人犯です。

    私は過去、仕事として重罪を扱っていましたが、このプロジェクトでは、犯罪の細部に立ち入ることはありません。意識的に、そうしないことにしたのです。このプロジェクトの中心にあるのは、そのことではありません。

    彼女たちは、自分が犯した罪を変えることはできません。写真を観てくれる人に私が望むのは、重罪を犯して長期刑に服するとはどういうことなのかについて考えることなのです。

    いま、大量投獄が大きな話題になっています。これまでにあまりにも多くのアメリカ人が投獄されてきたと、大勢が思っています。けれども、長期刑に服する人々に目を向け、彼らについて語らないかぎり、刑務所が満杯という状態はこれからも変わりません。

    だから、殺人であること以外は罪の内容に触れずに、無期刑囚を写真で記録することにしたのは、意識的な選択だったのです。

    アメリカの刑事司法制度は、他国のそれと比べてどうなのでしょうか?

    SB:西側のほとんどの国では、20年が刑期の上限になっています。ところがアメリカの場合、通常は20年が下限です。ニューヨーク州では、殺人を犯した場合の最短の刑期は15年です。大半の国々の「最長」が、アメリカでは「最短」の起点なのです。

    私の経験では、受刑者はしばらく刑期をつとめれば、自分が犯した罪と向き合うようになるものです。ほとんどの人は、数年も経てば落ち着きます。

    人は、刑務所に入れられると、怒り狂います。とても手がつけられません。彼らは混沌とした環境で生まれ育っています。中には、自身がトラウマを受けている人もいるでしょう。

    けれども刑務所では、規則正しい生活を余儀なくされます。そして数年経てば、落ち着き始め、自分を振り返るようになります。セラピーを受け、教育を受けます。仕事を持ちます。もしも、よき指導者がいたら、きちんとした教育を受けていたら、なっていたであろう人物になります。

    刑務所の中で8~10年も過ごせば、受刑者の多くは社会復帰できる準備が整います。おそらく、ほかの国々はそのことをわかっているのでしょう。

    ベネットさんは、こうした女性たちがアメリカの刑事司法制度に裏切られているように感じていますか?

    SB:ええ、それはもう。

    観る人に、「Looking Inside」から何を感じ取ってほしいですか?

    SB:刑務所の中にいる人々の人間性を理解してもらいたいです。ほとんどの人にとって、目に入るものは受刑者ではありません。人々の関心を引くのは、犯罪です。

    私たちはマグショット(犯罪者の顔写真)を目にします。恐ろしい事件の詳細を耳にします。でも、犯人のことを、リアルな人間としては考えません。だから私は、人が罪を犯したときに意味するものについての固定概念を壊したいのです。

    彼らは誰なのか? それを理解し、その人物とのつながりを持てれば、私たちの方針の正当性に疑いを抱かざるをえなくなります。それが私の願いです。

    1970年代や80年代に人を殺してしまったせいで、仮釈放を申請しては10回も却下されている受刑者の記事について、誰かが次に読んだとき、その人は自分に問いかけ始めるはずです。これが本当に社会が望んでいることなのかと。

    その問いかけに対する人々の答えが何なのかは、私にはわかりません。これは非常に哲学的な問題だと思います。けれども少なくとも、殺人罪で有罪となった人々に「人間の顔」を与えることによって、私たちは正しい方向への第一歩を踏み出せると私は確信しています。


    アッシアは「18年から無期」の判決を受け、2003年に19歳で収監された。現在は35歳だ。

    「この前の晩、生後9週目になる女の子の赤ちゃんを世話しました。その子のママが保育室にいられなくなってしまったので、私が代わりに。3時間おきにミルクをあげ、それが終わるとおむつを取り替えました」

    「保育助手としての私は、大切な命の世話をし、新米ママとベテランママの両方のサポートを任せられる、数少ない女性のひとりです。選択を誤ったせいで、刑務所に入れられ、自分の子どもたちから引き離されることになってしまいました。あの子たちは、私がいない状態で大きくなることを余儀なくされています。でもそれでも、状況を変えることはできるんです」

    シャイアンは「19年から無期」の判決を受け、2016年に29歳で収監された。現在は32歳だ。

    「私はモンスターじゃない。私は娘。姉。おばさん。友人。戦士。強い黒人女性。神の子。信仰する者です」

    「私は、自分の行動に全ての責任を負います。私は神を信じています。私には、長期と短期の目標があります。私のことを信じてくれている人たちがいます。私は自分を信じています」

    「トンネルの出口には光が見えます。積極性を失うことなく、この塀の中から出るために必要なことをやっていきます。私は絶対にあきらめません」

    デボラは「25年から無期」の判決を受け、1997年に27歳で収監された。現在は49歳だ。

    「寝室にいると、目を閉じれば自由になれます。クローゼットほどしかない独房に閉じ込められているわけではないけれど、誰かがドアをノックするたびに、私の心の安らぎは奪われます。ここにプライバシーは存在しません」

    「目を閉じた私は、玄関のドアを開けます。ドライブに出かけ、思い切り笑います。それから、再び目を開け、チャンスが与えられるのを祈ります。過去、現在、未来のことを考えます。どれだけ望んでも変えられない過去。希望と願いにすがって生きる現在。そして知るすべもない未来のことを。できるだけいつも、私は目を閉じています」

    「20年から無期」の判決を受けたエリザベスは1989年、22歳のときに収監された。2019年に彼女は、刑期を30年つとめたあと、仮釈放された。現在は52歳だ。

    「私のように何度も仮釈放を申請してきた人たちは、みんな希望を失い、暗闇の中にいます。いつか私も希望を失うのだろうか? 光が見えなくなる日が来るのだろうか? そうなるのがいちばん怖いです」

    「私の夢は、愛情を込めてつくった料理を人々に食べてもらうこと。社会に恩を返し、人間として成長し続けるつもりです」

    グロリアは、「20年から無期」の判決を受け、2000年に35歳で収監された。現在は53歳だ。

    「私は家庭内暴力の被害者です。お嬢さまとして育てられたんですが、シンデレラになってしまいました。女性として、母としての私の人生は、35歳のときに終わりました」

    「痛いほど感じているのは、家族には家族の生活があり、そこにはもう私の居場所がないこと。それでも、いまでも私は普通の人間です。まだ囚人のメンタリティにはなっていません。それでも、こんなふうに扱われています。自由の身になるまで、これがずっと続くんです」

    ヘイディは「15年から無期」の判決を受け、1993年に26歳で収監された。そして2019年、刑期を26年つとめたあと、仮釈放された。現在は52歳だ。

    「杖なしでも動き回れたころは、働くことができました。床をきれいにする仕事です。仕上げ材をはがし、バフをかけ、床を磨く仕事です」

    「でも、体を悪くしてからは、何もしないで、部屋でじっとしています。税金の無駄づかいです。これまでに6回、仮釈放の申請を却下されてきました。私が犯した罪の性質や、吸ってはいけない場所での喫煙などで受けた懲罰のせいです」

    「私たちはここに、まだ若いころに来ました。私は26歳でした。そして私たちは、老女としてここを出て、また赤ん坊に戻っていくんです」

    ジェニファーは「19年から無期」の判決を受け、2014年に17歳で収監された。現在は21歳だ。

    「何か書くべきときや、誰からから書くように言われるとき、いつも言葉が出てこない。言うべきことが何も浮かんでこないんです」

    「私はネガティブすぎるんでしょうか? 楽観的すぎるんでしょうか? 深く考えすぎ? たくさん考えすぎ? たくさんの目が私に向けられているような気がするんだけど、実際には、私の肩越しに覗き込んで来る人は誰もいない」

    「刑務所に入れられて5年になるけど、いまでもそんなふうに感じています。みんなが、私が何かやらかすのを待っているみたいな。でも、私は怖い。たぶんこれが、私に言えるいちばん正直な言葉。私は怖いんです」

    キャットは、「仮釈放なしの終身刑」という判決を受け、2009年に34歳で収監された。現在は43歳だ。

    「『仮釈放なしの終身刑』という判決を受けた者に対する社会の目は厳しいです。それが女性の場合は、なおさらです。でも、人は変われます。私が過去に下した選択は、いまの私を定義するものではありません」

    「『烙印』を押されはしましたが、私はそれ以上の存在です。更生は、私の内部にあります。更生とは、変わりたいという願望であり、自分を変える力なのです。変わること、成長すること、もっと良い自分になること。それが私の選択です。メンタル的にも感情的にも、肉体的にも」

    「この旅が私に与えてくれるのは、過去を乗り越える力、数字やデータが語る以上の人物になるための力なのです」

    リアは「21年から無期」という判決を受け、1997年に23歳で収監された。そして2019年、刑期を21年つとめたあと、仮釈放された。現在は44歳だ。

    「どれだけ望んでも、自分の過去を変えることはできません。でも私は、その過去に、自分を変えさせることにしました」

    「いまの私は、状況はそのままでは変わらないが、もっと良い行動をして、もっと良い自分になろうと努力する中で、自分とともに始まることを知りました。いまの私は、正しい選択ができるようになりました。暴力に訴えることなく、状況に対処するのもうまくなりました。責任感があり、自己中心的でなく、思いやりがあり、謙虚で成熟した立派な女性に生まれ変わりました」

    「傷つけてしまった人たち、与えてしまった被害のことを、私は片時も忘れません」

    パトリスは「25年から無期」の判決を受け、1998年に16歳で収監された。現在は36歳だ。

    「人生のセカンドチャンスを求めたからといって、自分が犯した罪を忘れてしまったわけではありません。私たちはかつて、問題の当事者でした」

    「私たちが傷つけてしまった人たちの心を癒すには、私たちがその問題の解決に参加し、会話に参加しなければならないのです」

    「州は、私たちを罰することで責任を取ってきました。今度は私たちに、起きた苦しみに対する責任を負っていることを示させてほしいのです」

    サヒアは「20年から無期」の判決を受け、2011年に16歳で収監された。現在は23歳だ。

    「この若さで刑務所に入れられたので、最初は、私の人生は終わったと思っていました。けれども時間が経つにつれて、神が私のために特別な計画と目的を用意してくれたと思うようになりました。トンネルの出口には光が見えています。いつかきっと自由になれます」

    ステイシーは「30年から無期」の判決を受け、2004年に30歳で収監された。現在は45歳だ。

    「ぼーっとした状態で目覚めるとき、自分の家に帰ってきたんだと思うんです。そんな時間を過ごしたあとは、心地よさと胸の痛みの両方を感じます」

    テイラーは「22年4カ月から無期」の判決を受け、2006年に24歳で収監された。現在は36歳だ。

    「犯した罪で私を判断してほしくありません。ひとつの事件で その人を定義するべきではありません。ほとんどの場合、囚人は犯した罪で判断されてしまいます。けれども、罪と人間性は同じではありません。過去は私たちを定義しないのです」

    「私たちの中には、ライフスタイルの選択を誤った人もいます。崩壊した家庭で育った人もいます。家庭内暴力の被害にあった人もいます。薬物中毒や精神障害に苦しんでいる人もいます」

    「ほとんどの場合、私たちに必要だったのは、介入してくれる人、絶望的なまでに必要としていた助けを与えてくれる人なのです。収監や必要以上に長い刑期が、必ずしも解決策になるとはかぎりません。

    「私たちには改善する資質があります。私たちは、セカンドチャンスを与えられるに値する存在なのです」


    この記事は英語から翻訳・編集しました。翻訳:ガリレオ、編集:BuzzFeed Japan