音楽史に最も大きな影響を与えた23枚の写真と、その写真家の物語

    ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、ビートルズ、ボブ・ディラン、マイルス・デイビス… 偉大なアーティストたちの姿を収めた写真家の作品は、ライブだけではなく、当時の情勢や移りゆくカルチャーも切り取っていた。


    ジム・マーシャルほど、歴史に残る人生とキャリアを持つ写真家はいないことだろう。

    マーシャルの写真は、20世紀の最も影響力のあるアーティストたちを撮影するだけでなく、アーティストと彼らを記録するフォトジャーナリストとの関係に、これまでになかった親密さを確立したのだ。

    ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、ビートルズ、ボブ・ディランなどのアーティストが写った、音楽史を最も象徴する写真のいくつかは、マーシャルのカメラのレンズを通して撮影されたものだ。

    これらの圧倒的な存在感のミュージシャンたちを普通の人間として捉える能力と、なぜか適切なタイミングで適切な場所にいてしまう、写真家としての不思議な嗅覚によって、マーシャルは当時の最も人気のある音楽写真家としての地位を確立した。

    伝説的なミュージシャンのマイルス・デイビスでも、近所の子供たちが通りでスティックボールで遊んでいるだけの場面でも、マーシャルは被写体の人間らしさを捉えることができたのだ。

    マーシャルは2010年に74歳で亡くなり、数百万枚の写真とネガの全ての記録は、長年のパーソナルアシスタントであるアメリア・デイビスに委ねられた。

    今年、マーシャルの人生と本についての新しいドキュメンタリーのJim Marshall: Show Me the Pictureが公開された。このドキュメンタリーでは、20世紀で最も影響力のある文化的イベントを撮影していく、マーシャルの様子を記録している。

    今回、アメリア・デイビスがマーシャルが残した遺産についてBuzzFeed Newsに語った。マーシャルの最も象徴的な写真も共有してくれた。

    ジム・マーシャルのキャリアはどこから始まり、またどのようにして、彼はこれほど多くの影響力のあるミュージシャンたちに接触できるようになったのですか?

    アメリア・デイビス:ジムは、1959年に最初のライカのカメラを購入しました。当時のサンフランシスコでは、ノースビーチはビート・ジェネレーションがジャズを聴くための人気のスポットだったのです。

    ジムはあちこちを歩き回って写真を撮り始め、そしてマイルス・デイビスやジョン・コルトレーンのような、ジャズ界の巨匠の写真を撮ることができました。その後、ジムは1962年にニューヨークに移り、たくさんのストリートフォトを撮影し始めましたが、ジョン・コルトレーンとの関係を通じて、ニューヨークのジャズ界の大御所にも顔が知られるようになっていったのです。

    1964年の終わりにジムがサンフランシスコに戻ったとき、ロックンロールのカウンターカルチャー運動がヘイト・アシュベリーで本格的になっており、ジムはこれらのすべてを捉えることができました。

    ジムは、自分の周りで起こっているこれらの歴史の断片を記録することに本当に情熱を傾けており、こうすることが将来の世代に記録を残すことになると考えていたのです。

    それが、ジムがこの時代の多くの音楽写真家の中でひときわ目立っている理由でしょう。普通の多くの写真家は、バンドを撮影するためだけにその場所に来ているのです。

    つまり、ジミ・ヘンドリックスがパンハンドルで無料コンサートを開催したら、写真家はコンサート中に撮影を行うのですが、コンサートが終わったら、普通の写真家はその場を離れてしまうのです。しかしジムは、コンサートが終わっても写真を撮影し続けるのです。

    ジムは観衆やミュージシャンを追い、近くの通りや近隣の場所など、どんな所にもついていってしまうのです。

    ジムの性格について少し話してもらえますか?どうしてジムは、有名なアーティストたちとこれほどまで仲が良かったのでしょうか?

    アメリア・デイビス:間違いなく、ジムは両極端な人物だったと思います。ジムは人にものすごく好かれるか、またはものすごく嫌われるかのどちらかで、その「中間」というものがありませんでした。

    そしてジム本人も、周囲の人間に対して全く同じように、つまり好きな人でなければ嫌いな人、という感じだったのです。

    多くの人は、「もしあなたがジムに好かれていたら、ジムは自分の妻を見捨ててでも、迫ってくるトラックからあなたを守ってくれるだろう。しかしあなたがジムに嫌われていたら、あなたに向かってくるトラックを運転しているのはジム本人だ」とよく言っていました。

    写真に関しては、ジムは真剣に取り組み、プロそのものという感じでした。ジムは写真撮影は完全に独学だったのですが、非常にセンスがあったので、露出計やその他のカメラの機材の使い方で悩むということは無かったようです。

    ジムは写真を撮る場面になれば、どこにカメラを向けたらよいかを把握し、すぐに写真を撮影してしまうのです。

    実際にジムの写真を見ると、その場面を盗撮しているような印象ではなく、あたかも自分もその場面に居合わせているかのような印象を持つかと思います。

    それがジムの魔法です。だからこそ、これらのミュージシャン、政治家、有名人、さらには一般の人たちでさえ、ジムの周りでは大きな安心感を感じたのです。

    ミュージシャンたちは、ジムが自分たちの素晴らしい写真を撮ることを知っていました。それはステージ上の圧倒的な存在感のヒーローとしての姿だけではなく、コンサートが終わった後の、静かな瞬間も含めてです。

    ジムは、ミュージシャンたちの人間らしい側面も描写することができたのです。なので、ミュージシャンたちはジムを受け入れ、そして信頼しました。そしてジムも、彼らの信頼を決して裏切りませんでした。

    つまり、写真家としてミュージシャンを近くで撮影できてしまうと、盗撮のような写真が勝手に出回ってしまったりすることにつながりかねません。しかしジムはこうした写真を公開することは絶対に無かったため、そのためミュージシャンたちは、ジムは自分たちの信頼を決して裏切らないことを知っていたのです。

    ジムが残した記録の規模はどのくらいですか?

    アメリア・デイビス:ジムは50年以上撮影を続けていたので、記録の規模は相当なものになります。音楽に関連する写真だけでなく、公民権運動、アメリカの貧困、抗議運動に関する写真もあります。

    35mmの白黒の写真だけでも100万枚以上あります。これには、カラー画像や中判写真は含まれていません。

    時々私は、自分が発掘中の考古学者のように思える時があります。毎日、新しい写真を発見しています。そして、時々思うのです。「ジム、なんでこの写真を見せてくれなかったの?」と。

    ジムの写真を見た人たちに、どのようなことを考えてほしいですか?

    アメリア・デイビス:現在の私たちは、これらの歴史的および重要な瞬間のすべてを50年経った後に振り返る時点にいますが、これらの出来事の多くは、今でも非常に重要です。

    そのため、これらの写真を公開して多くの人に見てもらい、インスピレーションを感じてもらうことが非常に大切なのです。

    多くの人が、ジムが捉えたこれらの驚くべき瞬間から歴史を振り返り、そして自分の周りの世界を記録し、写真を通して自分の物語を語ることによって、違いを生むためのインスピレーションを感じてほしいです。

    音楽、政治に対する抗議、テーマが何であるかは関係ありません。目の前の写真からインスピレーションを受け、物語を語ってほしいのです。写真は、そのような強力な感情を伝えることができる強力な媒体です。特に今の時代だからこそ、写真はとても重要だと思います。

    この記事は英語から翻訳・編集しました。